山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

初夏の鳳凰山薬師岳(3日目) 令和3年6月20日

2021年06月24日 | 山に咲く花
 前夜は保護柵設置のために薬師岳小屋に集まった山仲間とともに夕食をとり、山・花談義で盛り上がった。翌朝は天気が回復してくれそうなので、8時半には就眠して予定通り未明3時に目を覚ます。外に出てみると霧が出ていて空はあまり見えない。しかし、夜明けの頃には回復してくると確信して薬師岳に登る。


    未明の薬師岳山頂。雲が多くて富士山は隠れてしまっているが、空には土星が輝いている。


    雲海の上に白根三山が浮かんでいるが、山頂は雲隠れしている。


    朝焼けの薬師岳の空


    朝焼けの雲が流れて行く。


    日の出前のうろこ雲


    日の出


    そして現れたブロッケン現象。


    少しだけ山も姿を見せてくれた。


    やがて富士山も雲の上に姿を現す。


    薬師岳岩峰と富士山

 2日間天候が悪かったが、保護柵設置作業を行ってきたご褒美であろうか、早朝から良い景色を眺めることが出来た。薬師岳小屋に戻って朝6時に朝食となる。そして今度は薬師岳小屋周辺の保護柵設置作業を行う。


    総勢約10名で行った保護柵設置作業。だんだん作業に慣れてきてハイピッチで設置作業は進む。


    完成した保護柵


    もう1ヶ所


    食害から守りたかったのはこの植物。もう何年も花が咲いていないらしい。

 昼食を食べてから下山の予定だったが8時半には作業を終えてしまった。北岳が姿を現したことだし、もう一度砂払山周辺の植物の散策に行ってみる。


    ミヤマコウボウと白根三山


    たぶん間違いないと思うのだが確信は持てず。


    これは何だろうか?イネ科なのかカヤツリグサ科なのか?根鞘を見るとカヤツリグサ科のように見える。


    先端部は雄花、下は雌花のように見えるが雌花の先端に雄花が付いているようにも見える。結実してから確認しないと正体は分からなそうである。


    新緑のダケカンバと北岳

 小屋の前のベンチで軽食をとって、10時に下山を開始する。元気があれば観音岳・地蔵岳を越えてドンドコ沢を下りたかったが、足の疲れが残っていてあまり歩ける気がしない。ドンドコ沢のルートは荒れているとも聞いたので、登って来た中道をそのまま下山することにする。


    お世話になった薬師岳小屋


    薬師岳山頂と観音岳


    見上げる薬師岳岩峰

 足に疲れを残さないようにゆっくりと下山し、午後3時に青木鉱泉に到着した。それでも翌日は筋肉痛があり、3日間くらい右足の膝関節痛が続いた。ずいぶん弱くなったものだと思う。

 今回は保護柵設置と柵内の植物調査が主な目的だったが、山上に生育するイネ科やカヤツリグサ科の植物を下見しておくのも目的のひとつであった。予想していた通りに、見ても分からないものばかりで今後の課題である。時間と体力が許すならば、今年の8月下旬か9月初めの頃に鳳凰山を再訪できればと思う。中道ルートは辛いので夜叉神峠から登ったほうが楽かも知れないが、また車を回収に戻ることを考えるとそれもまた辛そうに思える。



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初夏の鳳凰山薬師岳(2日目) 令和3年6月19日

2021年06月23日 | 高山に咲く花
 薬師岳小屋は感染対策が徹底しており、部屋は敷居を立てて個室になっており床や壁には透明なビニールシートが張られている。宿泊客の人数も通常の半分以下に制限しており、これでは儲からないのではないかと心配になってしまう。ゆっくりと寝て朝食は6時に準備していただいた。予想はしていたが筋肉痛を起こしており、足だけでなく重い荷物を背負ったため背中も痛い。痛み止めのロキソニンを1錠飲んで7時前に小屋を出発し、南御室小屋に向かう。


    朝から小雨。カッパを着て出発する。


    コイワカガミはまだ蕾のものが多いが、気象条件が厳しい場所に咲くため花は傷んでいるものが多い。


    クモマナズナ。シロウマナズナが無いかと探してみたが見つからず。


    ヒモカズラというシダの仲間。結構レアもの。


    リンネソウはまだ蕾も見えない。


    南御室小屋に到着。

 8時半に南御室小屋に到着し、小屋の中で休ませてもらう。他の仲間たちは夜叉神峠を早朝に出発し、10時ごろには南御室小屋に到着するらしい。どれだけにのハイピッチで登ってくるのだろうか?その前に小屋周辺の植物を散策する。


    南御室小屋前の草地。ここには様々な高山植物が生えるが食害を受けてバイケイソウがだいぶ増えてしまっている。


    草地を上から見下ろす。


    草地の中のギョウジャニンニク群落。食料目的で採取されてしまい、現在では山梨県で残っている場所が少ない。


    まだ蕾のギョウジャニンニクの花


    テント場の草地にはヒメスゲがたくさん生えていた。


    もう1種類たくさん生えていたのがこれ。普通にみればただの雑草。


    これはイネ科の草なのか?これから調べて行きたいと思う。

 メンバーは予定通りの10時に小屋に到着した。足の速いつわものばかりである。小雨の中で作業を行い、手際良く進んでお昼には作業を終えた。


    本日の目的はこの保護柵の設置である。

 昨年の8月に韮崎市の依頼で鳳凰山の植生調査が行われ、その際に私も同行したため今回の作業にも協力することとなった。分からない植物も多々あるのだが、柵内に生育する植物の調査にも今回は協力させていただいた。作業後、南御室小屋で準備していただいた餃子スープをご馳走になりながら、小屋の中でゆっくり休みながら昼食となる。そしてまた、本日の宿泊地である薬師岳小屋に戻る。明日は薬師岳小屋周辺の保護柵設置の予定である。天候は回復してくれそうである。




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初夏の鳳凰山薬師岳(1日目) 令和3年6月18日

2021年06月23日 | 高山に咲く花
 訳あって鳳凰山に行くこととなった。合流予定の他メンバーに先駆けて1日早い6月18日に薬師岳小屋に泊めていただき、あわやくば星空の写真を撮ろうという作戦に出る。花を見ながらのゆっくり登山ではあるが、久しぶりに登る青木鉱泉からの中道登山道は急登のうえに距離が長く、悪戦苦闘して薬師岳山頂にたどり着いた。


    林道脇に咲いていたウツギの仲間。白や薄紅の花が混ざっており、これはニシキウツギか?


    他のウツギを探しながら登ったのだが目ぼしいものは見つからず。これはコゴメウツギだろう。


    ミヤマベニシダ


    よほど食べ物が無いのか、食害に遭っていた。


    オシダも食べられていた。


    アスヒカズラ


    こちらはマンネンスギ。いずれもあまり数は無かった。


    ホソバテンナンショウと思われるが仏炎苞の筋が半透明に透けて見え、別物かも知れない。


    まだ蕾のコフタバラン


    こちらもまだ蕾のキソチドリ


    イチヨウランは葉を数枚確認できたのみで、花や花芽は見つからず。


    オサバグサはこの一株しか見つからなかった。


    キバナノコマノツメは結構咲いていた。


    もうすぐ薬師岳山頂に抜け出る。疲れて足が上がらない。


    やっと見えた薬師岳山頂の岩峰


    ずっと曇り空と途中は霧の中だったが、なんとか雨に降られずに薬師岳に到着。

 6時間くらいで登りつけるだろうと思っていたのだが予定時間を遥かにオーバーして8時間かかってやっと薬師岳山頂に到着した。山頂周辺の植物を散策しながら薬師岳小屋に行く。さらに夕食までまだ時間があったので砂払山の周辺も散策してみる。


    岩の隙間に咲いていたクモマナズナ。シロウマナズナとの違いは葉に切れ込みがあること。


    ハイマツの下にひっそり咲いていたヒメイチゲ。


    コイワカガミは風に吹きさらされるためか、花が傷んでいた。


    確信は無いがこれはミヤマコウボウと思われる。


    穂の拡大。個体数はあまり多くなかった。


    こちらはミヤマハルガヤではないかと思うが、全く自信無し。


    叢生してたくさん生えていた。


    小屋の前に生えていたヒメスゲ。甘利山で多く見かけるが、標高2700mの高地にも普通に生えていた。


    こちらはコハリスゲではないかと思う。中腹の登山道脇にも結構生えていた。


    夕食前のひととき、白根三山が姿を見せてくれた。

 この日の薬師岳小屋の宿泊客は私一人だけだった。天候が良くないうえにまだシーズンではないので登山客は少ないようである。ゆったりと過ごさせていただいた。まだ高山植物はあまり咲いていないが、イネ科やカヤツリグサ科の植物はそれなりに穂を出して楽しませてくれている。しかし、勉強不足なことと結実してからでないと確定出来ないこともあって、まだ分からないものばかりである。正体が分かるまでには数年かかるかも知れない。

 夜になると小雨が降りだした。明日の天気予報は終日雨のようである。星空はあきらめて、明日の作業に備えてゆっくりと寝ることにする。

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オオビランジ(ナデシコ科)

2021年06月17日 | ナデシコ科
 山地帯~亜高山帯の岩場や崖地に生育多年草。茎の高さ20 ~ 60㎝。岩場や崖に下垂する。葉は披針形で先が尾状に伸びる。全体に毛がないか、わずかにある。花は濃紅色~淡紅色と変異が多い。花期 8 ~ 9 月。八ケ岳、奥秩父山系、南アルプス、富士山など広い範囲に分布しており、個体数は比較的多い。茎の上部や萼に毛が無いものをオオビランジ、毛のあるものをビランジとする説もあるが、同じ場所に生育している個体でも両者が混在していることがあり、山梨県レッドデータブックではいずれもオオビランジとして扱っている。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 2017年環境省カテゴリー 準絶滅危惧(NT)



    オオビランジ 平成29年9月 日向山で撮影


    同上 萼や花茎にはほとんど毛が無い。


    岩壁に生育するオオビランジ 令和1年9月 尾白川渓谷で撮影


    同上


    ビランジのタイプのもの 令和1年8月 八ヶ岳で撮影


    萼や花茎に毛が生えている。


    同じ場所に生えていたもの。こちらは毛が無い。


⇒山梨県の絶滅危惧のナデシコ科およびサクラソウ科植物一覧

⇒山梨県の絶滅危惧の植物 ~科別分類~

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サンショウバラ(バラ科)

2021年06月17日 | 渓谷
 夏緑広葉樹林帯に生育する落葉小高木。幹は太く、枝には扁平な刺を生じ、樹高は 1 ~ 6m。葉は互生し有柄、葉身は長さ10 ~ 25㎝で小葉が 9 ~ 19 枚の羽状複葉、各小葉は長楕円形。花は径 5 ~ 6㎝で小枝の先端に 1 個つき、花弁は淡紅色で倒卵形。果実は扁球形で刺がある。花期は 6 月。フォッサマグナ要素の植物で、富士山を中心とした地域に分布している。個体数は比較的多い。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 2017年環境省カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU)


    サンショウバラ 令和3年6月 御坂山系で撮影


    同上


    淡黄色のサンショウバラの花


    結実したサンショウバラ 平成26年10月 富士山麓で撮影


    同上 茎だけでなく実にも棘がある。


⇒山梨県の絶滅危惧のバラ科植物一覧

⇒山梨県の絶滅危惧の植物 ~科別分類~

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ウメウツギ(アジサイ科)

2021年06月17日 | その他の絶滅危惧種
 山地帯の岩場に生育する落葉小低木で株立ち状になる。若い枝や葉には硬い星状毛がある。葉は対生し、卵状長楕円形で先が尖り、ふちに細鋸歯がある。葉腋から白い花を1 個下向きにつける。花期は 5 ~ 6 月。石灰岩地に多いとされるが、本県では古い安山岩地に多い。個体数は少ない。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 2017年環境省カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU)


    ウメウツギ 平成27年5月 十二ヶ岳で撮影。葉腋から1個の白花を下向きに咲かせる。


    平成23年6月 十二ヶ岳で撮影。


    同上


    葉は対生し、卵状長楕円形で先が尖り、ふちに細鋸歯がある。


⇒その他の山梨県の絶滅危惧の植物

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サツキ(ツツジ科)

2021年06月17日 | ツツジ科
川岸の岩場などに生育する半常緑低木。高さ50 ~ 90㎝。葉は披針形、裏面脈状に褐色の剛毛がある。花は新芽が伸び出してから咲く。花色は朱紅色で、多くの園芸種がある。花期は 5 ~ 6 月。日本の分布は関東以西で、山梨県では南部町、および南アルプスに生育地があるが個体数は少ない。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧ⅠA 類(CR) 2017年環境省カテゴリーなし

    サツキ 令和3年6月 南部町で撮影

    同上

    朱紅色のサツキの花

    葉は披針形でツツジに比べると小さい。

    対岸の岩壁に咲くサツキ




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フッキソウ(ツゲ科)

2021年06月16日 | その他の絶滅危惧種
 山地の樹林下に生育する常緑小低木である。茎は地上を這い、先は斜上して茎の先に穂状に花を付ける。雄花は 分布花序の上部に多数つけ、雌花はその下に数個つく。花期は 3 ~ 5 月。山梨県では富士山麓方面に集中して生育している。

 2018年山梨県カテゴリー 準絶滅危惧(NT) 2017年環境省カテゴリーなし


    フッキソウ 令和3年4月 忍野村で撮影


    同上


    上部に多数付いているのは雄花


    雌花は下方に数個付いているが目立たない。


⇒その他の山梨県の絶滅危惧の植物

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ツメレンゲ(ベンケイソウ科)

2021年06月16日 | その他の絶滅危惧種
 日当たりのよい岩上、河川の石積みの土手、また古い屋根の上に生える多年草。葉は密生しロゼットをつくる。葉は多肉質で披針形で、先端が刺状に尖る。秋になると花茎を伸ばし、高さ8 ~ 30㎝になる。花序は穂状で白色の花を密につける。花期は 10 ~11 月。山梨県では富士川や笛吹川流域、大月市の山中などに生育しており、個体数は比較的多い。クロツバメシジミの食草であり、この花の生育地ではしばしば見かけられる。


    ツメレンゲ 令和2年11月 笛吹市笛吹川流域で撮影。このb所の個体は移植されて増殖したものらしい。


    同上 披針形の刺状の葉をロゼット状に密に付ける。


    咲き始めたばかりのツメレンゲの花


    令和1年11月 大月市で撮影


    同上 この場所のツメレンゲは鮮やかな赤色をしている。


    花も赤みを帯びている。
    

⇒その他の山梨県の絶滅危惧の植物

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ヤマブキソウ(ケシ科)

2021年06月16日 | その他の絶滅危惧種
 山地の林床に生育する多年草である。傷つけると橙黄色の汁液を出す。縮れた毛を散生し、草丈は30 ~ 40㎝。葉は互生し有柄、葉身は小葉が 5 ~ 7 枚の羽状複葉。花は茎の上部に 1 ~ 2 個つける。花弁は黄色で 4 枚、長さ2 ~ 2.5㎝。果実は 3 ~ 5㎝の線形。花期は 4 ~ 6 月。山梨県での生育地は限られているが生育場所では群生が見られる。甘利山の個体は台風で流出したと思われたが、復活して生育が確認された。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 2017年環境省カテゴリー なし


    ヤマブキソウ 平成30年5月 甘利山で撮影


    同上 花弁は4枚で鮮やかな黄色。


    果実は線形である。


    令和3年5月 甘利山で撮影。前年は台風で流出したと思われ、生育が確認出来なかったが復活した。


    天候が悪く花は開いてくれなかった。


⇒その他の山梨県の絶滅危惧の植物

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シラン(ラン科)

2021年06月16日 | ラン科
 暖地の河川の岩石地の斜面に生育する多年草である。偽球はやや扁平な円形。葉は数枚で長楕円〜長披針形。花は 4 〜 5 月頃咲き、紅紫色、時として白花を見ることもある。唇弁の縁は内曲して先は 3 浅裂し、内面に 5 個の隆起線がある。日本の分布は本州中南部~琉球。広範囲に園芸種が植えられていてしばしば目撃するが、山梨県では自生のものは少ない。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧ⅠA 類(CR) 2017年環境省カテゴリー 準絶滅危惧(NT)


    シラン 令和3年5月 南部町で撮影


    同上


    山梨県での生育地は極限られている。


    時として白花を見ることがある。


 ➡山梨県の絶滅危惧のラン科植物一覧に戻る

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ヒラギシスゲ(カヤツリグサ科)

2021年06月16日 | カヤツリグサ科
 高山の湿地や渓流畔に生育する多年草である。根茎は短く、密に叢生し、ときに短い匐枝を出す。頂小穂は雄性または雌雄性で側小穂は3~5個付き雌性であるが時に基部に雄花が付くことがある。雌鱗片は黒紫褐色で果胞より短く幅も狭く、先端部は尖る。果胞は卵形で長さ2.5~3㎜、先は急に短い嘴となる。柱頭は3岐である。山梨県では北岳を中心とした渓谷沿いで生育が確認されているが、まだ精査中の段階なので情報不足となっている。八ケ岳・奥秩父山系での生育の記録もある。

 2018年山梨県カテゴリー情報不足(DD) 2017年環境省カテゴリーなし


    ヒラギシスゲ 令和3年6月 八ケ岳川俣川で撮影


    同上 先端部が雄性、側小穂は雌性である。


    雌小穂。鱗片は黒紫褐色で果胞より短く先が尖る。果胞には筋が入り、無毛である。


    渓流に垂れ下がるように生えるヒラギシスゲ


    花期のヒラギシスゲ


    先端部に黄色い雌しべ、下部には白い雄しべが出ている。この時期のヒラギシスゲは真っ黒に見える。

 今回見てきた個体は上流部から流れ着いて生育したものと考えており、さらに上流部には本体の群生があるのではないかと思われる。


⇒山梨県の絶滅危惧のカヤツリグサ科植物一覧

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スルガスゲ(カヤツリグサ科)

2021年06月15日 | カヤツリグサ科
 山地ブナ帯の樹林内急斜面や岩場に生育する多年草である。茎の高さ15 ~ 20㎝。葉は果期にも有花茎より著しく低い位置に出て、常緑で深緑色。根茎は短く叢生し、匐枝は伸ばさない。全体にヒメカンスゲに似るが、鱗片は鋭頭で、凹頭とならない。果胞は無毛で数本の脈があり、長い嘴がある。静岡県との県境の安部峠に生育すると書には書かれているが、他に西沢渓谷での生育が確認されている。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧ⅠB 類(EN) 2017年環境省カテゴリー絶滅危惧ⅠB 類(EN)


    花期のスルガスゲ 令和3年5月 西沢渓谷で撮影


    同上 


    同上 葉は深緑色で低い位置に出る。


    先端部の雄小穂は赤紫色。その下の雌小穂はやや先端寄りに付く。


    果期のスルガスゲ 令和3年6月 西沢渓谷で撮影


    同上 既に穂が傷んでいるものが多かった。


    雌小穂の鱗片は先端が尖る。果胞には数本の脈があり嘴は長い。


⇒山梨県の絶滅危惧のカヤツリグサ科植物一覧

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アカンスゲ(カヤツリグサ科)

2021年06月15日 | カヤツリグサ科
 亜高山帯の湿地や高層湿原に稀に生える多年草である。葉は柔らかく線状で細く、幅 1 ~ 2㎜。有花茎は高さ20 ~ 50㎝になる。小穂は雌雄性で倒卵形、長さ3 ~ 5㎜、3~4個が離れてつく。北海道、岩手県、栃木県、長野県、山梨県に隔離的に分布しており、いずれの場所も個体数は少ない。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧ⅠB 類(EN) 2017年環境省カテゴリー絶滅危惧ⅠB 類(EN)


    アカンスゲ 令和3年5月 山梨市で撮影


    同上 小穂の頂部が雌花、その下が雄花になっている。


    結実した頃のアカンスゲ 令和3年6月 同じ場所で撮影


    アカンスゲの穂


    叢生するアカンスゲ


    小穂は穂の先端部寄りに3~4個がやや離れて付く。


⇒山梨県の絶滅危惧のカヤツリグサ科植物一覧

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フトイ(カヤツリグサ科)

2021年06月15日 | カヤツリグサ科
 池や沼地の水辺に生育する多年草である。茎は円柱形で太く、高さ100 ~ 200㎝。地下茎は太くて横に這い、全体としてはまばらに花茎を立てて大きな群落を作る。花序は茎頂に付き、長短不揃いの枝に小穂をつける。小穂は楕円形、長さ8㎜ほどで、果時には褐色になる。全国的には少なくないが、本県では生育地が富士五湖周辺に限られている。

 2018年山梨県カテゴリー 絶滅危惧ⅠB 類(EN) 2017年環境省カテゴリーなし


    フトイ 令和3年6月 山中湖で撮影


    同上 茎は太く、高さは大きいものでは2mになる。


    花は茎の頂部に付き、長短不揃いの枝に小穂を付ける。


    フトイの花序


⇒山梨県の絶滅危惧のカヤツリグサ科植物一覧

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