山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

丹沢の夕暮れと三日月 菰釣山 

2010年09月15日 | 丹沢・道志山系
 平成22年9月11日

 この日は夕暮れ時に金星と三日月が西の空で接近する日だ。富士か、南アルプスか?だいたいの画角はパソコンで見てあったが、最終的にはお昼ごろのライブカメラを見て、山中湖側の富士山は中腹から上に雲がかかっていたので止め、金ヶ岳山頂にテント泊で南アルプスに沈む三日月と金星、さらに未明に八ヶ岳に沈む夏の大三角形を撮影することに決め、明野の金ヶ岳登山口に向った。夕方6時までに山頂に到着すれば良いのでかなりゆっくりのスタートとなる。午後1時半、明野の東大宇宙線研究所手前あたりから富士山を見ると・・・先ほどのライブカメラとは全く違い、雲が飛び山頂がすっきりと姿を現しているではないか。車を止めてしばし考え、ここまで来て行き先変更、道志の奥にある菰釣山に行くことにする。これこそ地元の利、山の様子を見て行き先を変更できる。

    菰釣山登山口。水場がある。


    菰釣山避難小屋。水場・トイレは無いが、きれいで立派な小屋。

 とはいえ、もう時間は午後2時近い。道志の登山口までは1時間半はかかるだろうから、登り始めは4時近くになってしまう。山頂までは1時間半くらいだから夕暮れにはなんとか間に合う時間だ。韮崎から高速に乗り、都留で下りて峠を越えて道志へ、そして林道をつきあたりまで行くが、この林道はかなりの悪路。なんとか予定通り3時半に到着した。林道付きあたりには4人ほどの中高年グループがテントを張っていた。山から下りてきて水の汲めるこの場所で一夜を明かすようだ。挨拶して今晩下山してくることを告げて山頂に向う。通行止めになっている林道を15分ほど歩くと水場のある登山道入り口に到着する。夜に下山予定なのでたいした水もいらないのだが、念のため1リットル汲んで行く。時間は午後4時、ここから菰釣山まで1時間25分と書かれている。5時半到着として、日没の少し前ごろ、ちょうど良い時間だ。少しばかり早歩きで登ったが、案の定急斜面にかかったところで失速、計3度の休憩を交えて山頂には5時20分に到着した。

    中腹には雲がかかり、富士山見えるのだろうか?と心配になる。


    菰釣山山頂。日没前になんとか到着できた。富士山も見えている。


    真っ赤に焼けた夕焼け空、思いもよらぬ景色になった。


    夕焼けの空

 もうすぐ西に日が沈むところだった。富士山は見えているが、まずいことに空は曇り空で月や星が見えるような空ではない。あまり焼けてもいないし、今日はこのまま面白くない景色で終わってしまうのでは・・?と、この時は思った。しかし・・・山頂でパンを食べながら休憩していると、空がしだいに焼けてゆく。富士山頂の残照が消えて数分後、空を被う雲が真っ赤に焼けた。ほんの10分くらいの時間だったが、久しぶりに見る凄い夕焼け空にめぐり会えた。こちらに来て正解だった。

    雲間に見え始めた月


    雲間に輝く三日月


    雲間に輝く三日月と金星


    雲に覆われてしまうが、うっすらと月が写る。

 夕焼け空が次第に暗い夕闇に変わって行く。今日の月は細い三日月、だが、光量は十分にあるはずだ。丁度良い具合に雲の切れ間が富士山頂側に移動してきたので、絶対に出る、と信じながらシャッターを切り続けていると、まず細い雲の切れ間に金星が見えた。その数分後、待っていた月が雲間から姿を現した。薄雲があったために鮮明な三日月とはならなかったが、ほんのり残る夕焼け雲の間にはっきりと三日月を捉えることができた。月を見ることができたのはほんの1分ほど、あとは暗い雲の中に月は隠れてしまった。7時20分まで粘って、月が完全に沈んだところで本日は終了。

    丹沢の夕暮れ富士  バルブ撮影、夏の暑さを現すため赤系統の色を強調。


    丹沢の夕暮れ富士  バルブ撮影、フィルムカメラのような緑色を強調。飛行機、邪魔です。

 ヘッドライトを点けて木の根っこにつまずかないように気をつけながら下山する。避難小屋の中を覗いてみたが、本日の宿泊者はいなかった。途中3カ所ほど道が若干こわれているところがあり、ここで道を見失わないように気をつけるが、難なく1時間ほどで下山できた。テント泊のパーティーがまだ宴会中で、今日は凄い景色だったとちょっと自慢げに話して家路に向かう。
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Crescent moon 雲海に昇る月 鳳凰山(後編)

2010年09月13日 | 南アルプス
 平成22年9月4-5日

 青木鉱泉から中道ルートで薬師岳まで7時間もかかった。薬師岳小屋に宿泊料金は払ったものの、夕食をいただいただけで結局用意していただいた寝床には全く横たわることなく、ザックを背負って薬師岳から観音岳に向う。それもそのはず、おそらくはこの夏シーズン最高と思われる星空になり、とても寝ていられる状況ではなかったからだ。白根三山と天の川中心部分の位置を見ながら観音岳を目指し、8時ごろ山頂に到着した。さそり座はもう半分以上沈んでしまっているが、農鳥岳の上あたりに大きな天の川の帯がかかる。上を見上げれば夏の大三角形、そしてカシオペア座、北斗七星。東にはひときわ明るい木星が昇る。満天の星空を見上げながら、翌日の下山の心配があるので山頂ケルン横でツエルトとシュラフカバーを被り、夜11時、一旦寝る。

    Crescent moon 雲海に昇る月  午後2時過ぎ、オリオン座の横に二十六夜の月が昇る。

 とてもぐっすりと眠れるような環境ではないのだが、少しは眠ることができ、目が覚めたのは午前1時過ぎ。オリオン座が昇り始めていた。眠いのでもうひと寝入りして2時過ぎ、まだ眠い体を引きずるように起き上がる。眼下に雲海が広がり、そのおかげで明る過ぎる甲府盆地の灯りが遮られ、オリオン座と冬の大三角形がはっきりと見える。二十六夜の月が静かに雲海を照らしながら昇っていた。富士山が雲海の上に頭を出している。凄い景色が目の前に広がっていた。

    雲海に昇る月と冬の大三角形  レンズの上半分に吐息をかけて月の光を拡散させて撮影。


    富士に昇るオリオン座の光跡  15分間バルブ撮影。


    富士に昇るオリオン座  こちらの画像の方がデジタルカメラの特性が発揮できる。

 ここからはもうひたすらシャッターを切った。30秒シャッター開放、記録に30秒かかるので、1枚の撮影に最低1分はかかる。画像の構図、明るさをモニターで確認してまたシャッターを切る。朝まで山頂の岩の上や、一段下のところを行ったり来たりの繰り返しだ。できれば、17mmの画角で雲海を水平に捉えたかったのだが、APS-Cサイズのセンサーでは入りきらず、15mm fisheye での撮影となる。想定していたよりも遠い位置に月が昇っていた。また、オリオン座の位置も予想よりは富士山から遠かった。しかし、それを考慮しても余るほどの凄い景色だ。もし小屋が近かったなら、寝ている人たちをたたき起こしてでも見せたい景色だった。

    雲海に昇る薄明の二十六夜月  17mmでようやくこの画角に収まる。


    夜明けの雲海と富士


    朝焼けの雲海に浮かぶ


    雲海上の日の出

 夜明けが近付くとともに空が青らみ、水平線がオレンジ色に染まる。薄明の澄んだ青い空に吸い込まれるように星が消えて行く。足元がしっかり見えるようになった頃、山頂の岩から下りる際、見事に踏み外して転倒、カメラを思い切り岩にぶつけてしまった。ボディとレンズのフレームに傷ができたが、シャッターは普通に切れる。と思いきや、そうではなかった。サブモニターに表示されたIso感度や絞り、シャッタースピードがダイヤルを回しても変えられなくなってしまった。困った。朝だというのにIso 640のまま変えられない。しかし、ファインダーの中を覗いてみると、ダイヤル操作で数値が動いており、どうやら壊れたのはサブモニターだけで撮影には支障なさそうだ。日の出の貴重な時間、この転倒で15分ほど撮影中止となってしまった。肝心の自分自身は?膝と肘に擦り傷を負った程度で、カット判を貼っただけで事無きを得た。

    朝日射す地蔵岳と甲斐駒ケ岳


    白根三山の夜明け

 すっかり陽が昇ったところで三脚を担いだまま地蔵岳の方向に移動する。眼下の雲海は朝もそのままだ。地蔵岳や甲斐駒ケ岳、そして白根三山に朝日が射し込み、ほんのり赤く染まる。地蔵と観音のコルまで行ったところで朝食をとる。さて、下山。ドンドコ沢の急下りを黙々と下るが、この下りもまた登り以上にきつい。7時半に鳳凰小屋を出発したが、途中で疲れと睡魔に襲われてヘロヘロ状態となり、ついでに道を間違えて20分ほど御座石鉱泉側のルートに入ってしまうというおまけも付き(40分ほど時間をロス)、12時、やっと青木鉱泉に到着した。

    真夏の北岳


    雲海に浮かぶ八ヶ岳

 思いもよらぬ星空とめぐり会えた今回の鳳凰山。この山は何度登っても裏切られたことがない。今回も山の神様に感謝だ。しかし、自分の体力はどうかというと・・・ただ歩くことに慣れただけなのか、寝不足が応えたのか、もう動きたくないというくらいへとへとに疲れた。しかし、筋肉痛は翌日軽くあっただけだったので、5年前に比べると進歩・・・とみて良いのだろう。
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山梨日日新聞 記事

2010年09月10日 | 番外編
 山日新聞が記事に取り上げてくれたおかげで、一般の方からも注目を浴びるようになっています。今度こそ、標柱が無事であって欲しいと思います。

   
    9月9日 記事



    9月10日 記事
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Crescent moon 雲海に昇る月 鳳凰山(前編)

2010年09月09日 | 南アルプス
 平成22年9月4-5日

 ジャズバイオリニストの寺井尚子という人の『Jealousy』というアルバムの中にcrescent moonという曲がある。細い三日月が静かに空に昇るイメージの曲だ。この曲のイメージに合わせた風景を撮りたかったのだが、なにせこの猛暑日の続く天候、空には入道雲がかかり、午後から夕方にかけてはいつ雷をくらってもおかしくない天候、そして空や山が全く見えないのだ。昨年もそうだったが、6月以降、まともな星空は全く撮影できていない。そして久しぶりに訪れた週末のチャンス、空が晴れてくれれば未明2時半ごろ、東の空からオリオン座に引きずられるように二十六夜の月が昇ってくるはずだ。久しぶりの鳳凰山、甲府盆地に昇ってくるcrescent moonを狙う。
 青木鉱泉からの入山は決めていたが、ドンドコ沢を登るか、中道を行くかは車を運転しながら決める。思えば5年前の初心者の頃に初めて中道コースを登って、とんでもなく辛い思いをした鳳凰山、下山して4~5日間筋肉痛に悩まされた。果たして少しは体力がついたのだろうか?5年間の成長を試すべく、中道ルートで登りドンドコ沢を下ることにした。山上に水場はないので、4リットル近い水をザックに背負い込み、9時10分、青木鉱泉を出発。途中で薬師岳小屋に宿泊の連絡をとろうとしたが電波が悪くつながらず、いざという時はツエルトとシュラフカバーで寝る覚悟で行く。中腹の林道との交叉点に11時、御座石という大岩のところに午後2時到着。毎度の事ながらコースタイムに及ばない遅いペースだ。御座石の少し下で薬師岳小屋の従業員とすれ違い、宿泊場所を聞かれて予約していないことを告げると、連絡を入れておいてくれるということだった。午後4時、薬師岳山頂到着。甲府盆地は見えるものの、山には雲が巻いて富士山も白根三山も見えなかった。夜の撮影場所を確認すべく、観音岳側に進んで富士山や北岳の方向、そして足場を確認し、4時半に薬師小屋に入った。連絡を入れておいてくれたおかげで、名前を告げると小屋番の女性はすぐにわかってくれた。

    中道コース上部にある御座石。ここから薬師岳まで1.5時間。


    ようやく見えた薬師岳山頂。このあたりから一気に眺望が開ける。

 5時半、夕食となる。向かいに座った若い女性の方は朝一番のバスで5時夜叉神峠から歩き始め、9時45分には薬師岳小屋に到着したという。また、横に座ったやや高齢の男性は前日夜叉神峠小屋に宿泊し、朝9時に薬師岳小屋到着したという。2人とも1日で鳳凰山縦走可能なペースだ。そういえば、夜叉神峠コースは冬期に何度も歩いているが、夏場は一度も歩いたことがないことに気付く。今度試しに歩いてみなければ。しかし、私の足ではやはり6~7時間かかるのではないだろうか。

    北岳の上に輝く金星  しだいに空が晴れ、山や星が見え始める。

 夕暮れの頃に薬師岳に登ってみると、北岳が雲に巻かれながらも姿を見せ始めていた。その上に沈みかけた明るい金星が輝く。7時過ぎまで景色を楽しみながら撮影していたところで電池切れとなり、一旦小屋に戻る。砂払山側の広場で数人の人たちが星空を眺めていたので、仲間に入れてもらって一緒に空を眺める。空が暗くなるにつれて霞が晴れ、一面の凄い星空になった。そして南西の空に寝そべったさそり座が、さらに空を横切る白い帯、天の川がはっきりと見えるようになってきた。思いもよらない星空に出迎えられ、未明2時まで小屋で寝ようと目論んでいたのだが、そうはさせてくれないようだ。寝るか、行くか、少しばかり迷ったが、こんな好条件の空はめったにお目にかかれない。乾燥室に干しておいた服やタオルをザックに詰め込み、山上で一夜を明かすことにして出発する。(小屋で用意してもらった寝床は結局一度も使うことはなかった。)

    薬師岳の岩峰に昇る木星と雲海上の富士山


    白根三山と天の川  観音岳山頂から見るとこの位置に収まる。

 薬師岳の稜線に登ると、空はすっかり晴れ、白根三山が姿を現していた。その南側に天の川の中心部分が昇っている。画角的に良い位置を探しつつ、観音岳を目指して三脚を担いだままどんどん進む。いつもならば眩しいほどの甲府盆地の灯りが広がっているのだが、この日は眼下一面に雲海が広がり、甲府盆地はその下だ。おかげで町明かりが遮られて凄い星空が楽しめた。雲海の上に富士山も顔を出している。迷うことも、転ぶことも無く観音岳山頂に到着。心地良い穏やかな風が吹く最高の夜だ。山上にいるのはもちろん私一人だけだ。木星が、白鳥座が、夏の大三角形が、そして北側にはカシオペア座と北斗七星が輝く。久しぶりに見る夏の天の川の美しさにはため息が出るほどだ。

    雲海の富士に輝く木星  レンズに吐息を吹きかけ、光を拡散させて撮影。


    薬師岳の上に立つ夜富士  これは長時間バルブ撮影。

 眠るのは惜しい夜だったが・・・少しは寝ておかないと明日の下山にこたえる。10時半、ツエルトとシュラフカバーを被り、観音岳山頂ケルンの横に横たわらせてもらい、星空を見上げながら仮眠する。(後編に続く)



   (おまけの1枚)雲海に昇る月と冬の大三角形  後編にご期待ください。
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完成!茅ヶ岳twin tower 平成22年9月1日

2010年09月02日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成22年9月1日

 世間(といっても山日新聞をとっている山梨県内だけだが)を騒がせている山梨百名山、かつ日本二百名山のひとつである茅ヶ岳山頂の標柱。8月20日、21日に捨てられていた初代の標柱を発見してひとまず山頂に立て直し、さらに鋸で切られた新しいほうの標柱上部も見つけて山頂に隠してきた。つなぎ合わせるには土木関係の技術者が必須だが、ボランティアで協力いただいている望月君はあいにく土・日曜日は都合が悪い。9月1日の水曜日、無理矢理時間をあけて、午前中から2人で茅ヶ岳に向かった。

    作戦会議。あれをここに入れてああやって・・・


    いよいよ接合作業


    「そんな小さな金槌じゃだめだ」と石を拾ってきて打ち付ける。

 10時20分、林道から歩き始めて約2時間で山頂に到着。先客が一人、と思いきや、その方こそ茅ヶ岳の番人、末木さんだった。アウトドアショップエルクで今回標柱再建に行くことを聞いて、手伝いに来てくれたのだ。3人であれやこれやと相談しながら標柱再建作業が始まる。前回はあっけなく引き抜かれてしまったので、今回は接合部に更なる工夫を凝らせ、接着剤が無くても抜けないような細工をして新しいほうの標柱をつなげた。さらにもう1本、古いほうの初代標柱は朽ちている下の部分を鋸で切り落とし、添え木のようにして新しい標柱の横にスクリュー釘6本で固定した。約2時間の作業でかなり頑丈な茅ヶ岳twin tower標柱が完成した。まずまずの出来映えだ、と自己満足する。

    今度は古い標柱をスクリュー釘で固定する。


    茅ヶ岳twin tower 完成!


    記念撮影

 しかし、何故に犯人はここまでこの標柱を嫌うのか?犯人を捕まえてやろうなどとは全く思わないが、どのような理由があるのかは聞いてみたいものだ。おそらく、多くの人がそう思っているのではないだろうか。引き続き標柱管理を行って行きたいと思っている。不審な者の目撃情報、標柱の変化、不都合な事などありましたら、ご連絡いただきたい。


    途中に咲いていた花。鋸岳に登った時も見かけたが、未だに名前わからず。


    ビランジ満開。吸密に来たウラギンヒョウモン(たぶん。裏側確認できず。)
コメント (8)
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