山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

遥か北の大地へ  平成29年6月

2017年06月30日 | 圏外編
 遥か北の大地を遠征してきました。飛行機の故障で出発が1日遅れ、悪天候で山頂までは行けず・・・それでもあまり見られない花と北の島の自然環境を楽しんできました。


    ハクサンチドリ


    コウリンタンポポ


    チシマフウロ


    カラフトハナシノブ


    ボタンキンバイ


    ムラサキツリバナ(クロツリバナ)


    カラフトサイコ


    レーニン像。時差の関係もありますが、日没は午後8時半過ぎ。

 詳細はそのうち。





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トウゴクサバノオ?いや、これは・・・ 芦川スズランの森  平成29年6月18日

2017年06月21日 | 番外編
 先日トウゴクサバノオが咲いていたという情報をいただき、花は終わっているだろうがサバノオの由来となった種が付いているだろうと期待して訪れてみた。詳細な場所までは聞いていないがおそらくはあのあたりにあるはず。三ツ峠では清掃に参加せずに(泊り組の山行に参加して戻ってきた時には当日組の清掃はもう終わっていた)早目の下山となったので、立ち寄る時間は十分にあった。


    芦川スズランの森。スズランは終わりもう訪れる人も居ない。


    ベニバナイチヤクソウももう終わりである。


    もうすぐ咲きそうなクモキリソウ属の花。しかし何故にこんな場所を好んで咲くのか?


    ウマノアシガタ


    クサタチバナは真っ盛り。

 目的地に到着した。正規の道から外れて林の中に入ってみると、それらしき葉が群落を成している。しかし花はもう盛期を過ぎて見つからない。あたりを探してみると、咲き残った花がちらほらと残っている。最初に見つけた花は大豆の大きさほどしか無く、これがトウゴクサバノオかと思ったが、それにしては葉っぱがツルシロカネソウにそっくりだ。他の場所を探すと今度は大き目の花が咲いていた。これはどう見ても・・・


    それらしき葉の群生地があった。この時は情報を信じてトウゴクサバノオだと思っていたが・・・


    違和感のあるこの葉っぱ。トウゴクサバノオにしては大きいような??


    大豆大の小さな花が咲き残っていた。花の大きさからやっぱりトウゴクサバノオ、と思ったが・・・


    近くには大き目の花が咲いていた。


    これはどうみても・・・・・


    ツルシロカネソウだろう。

 自宅に帰ってからネットで画像を調べながら撮影してきた写真を検討したが、やはりこれはツルシロカネソウだ。探していたトウゴクサバノオでは無かったのは残念ではあるが、山の上では食害と環境の変化で激減しているツルシロカネソウがこの場所では元気に群落を形成してくれているのは嬉しいことである。これでも山梨県絶滅危惧Ⅱ類の花である。来年はいちばん良い時期に再訪してみたい。


    たぶん、普通のマムシグサ。
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三ツ峠の富士山と花たち  平成29年6月18日

2017年06月20日 | 山梨百名山
 6月17日の勉強会終了後、三ツ峠山荘ご主人の中村さんを交えて花談義があった。その中には花にたいへん詳しく保護活動も熱心にされている著名な方も含まれていた。私自身がこれからやろうとしていることの先駆者のような方々である。最も印象的だったのは植物を保護の名のもとに自分の売名行為や利益のために利用してはならないということだ。私自身、そのようなつもりで記事を書いているわけでは無いのだが、記事をネット上に掲載すること自体がそのような行為になってしまっているのかも知れない。ネット上に記事を書くことの難しさを感じさせられた。談義は深夜10時ごろまで熱心に行われ、翌日のこともあるのでお開きとなった。

 その後部屋に行って参加メンバーと談義し、寝たのは11時半ごろだった。翌朝はあまり天候が良く無さそうだったが、目覚まし時計を3時半にセットする。目が覚めたのは3時15分、外を見ると雲海が広がっている。4時に起き出して外に出ると、空は曇っているものの富士山が雲海の上に浮かんでいた。朝食は7時ごろと聞いていたので、その前に富士山の撮影と花を見て回るためにカメラと三脚を担いで山頂に向かう。


    雲海に浮かんだ富士山。。今回はEosM2に11‐22㎜の新調したレンズを装着して撮影したが、水平照準が装備されていないためにずれている。


    山頂直下から見る富士山。


    三ツ峠山山頂に到着した頃には雲が湧き始め、富士山は隠されてしまった。


    わずかな雲の切れ間から見る富士山。前景のミツバツツジはもう終わっている。


    ヤマツツジと富士山。今度は富士山が姿を現さず。


    三ツ峠山頂。標柱が新しくなったが、標高が記されていない。

 花を観察しながら別ルートで三ツ峠山荘に戻る。


    シロバナフウリンツツジが満開。


    ムラサキツリガネツツジは散り始め。


    アオチドリ。1本しか見つからない。


    数を減らしているノビネチドリは柵で囲われた。


    そしてこの花。昨年は1株だったのに今年は2株咲いた。


    しかも元気いっぱい、色鮮やかだ。この花にとっての三ツ峠の環境の良さを物語っている。


    そしてこちらの花も元気に咲いていた。


    アマドコロと雲海

 三ツ峠山荘に戻るともうすぐ食事になりそうだったが、折角富士山が姿を現してきたので、展望台に行ってみることにする。


    アヤメと富士山


    新緑のカラマツと富士山


    展望台から見る富士山

 展望台から戻ると、ちょうど食事が始まったばかりだった。朝食にしてはボリュームたっぷりのおかずに美味しい御飯、山に登ったのにきっと体重が増えて下山することになるのだろう。

 この日は山岳連盟のメンバーが9時ごろに清掃登山にやって来る予定だったので、そちらのメンバーに入れてもらって清掃活動を行う予定だった。草刈り鎌も持参してきた。しかし、宿泊組のメンバーは既に前日清掃活動を行っておりこの日はあまり人が行かない尾根を途中まで下りてみると言っている。どうするか迷ったが、宿泊組に同行して尾根を歩いてみることにした。尾根の途中にはイワカガミの群落があったが花は終わっていた。


    あまり人が入らない尾根にはイワカガミの群落があった。花は既に終わっていた。


    咲き残っていたイワカガミ


    ツルシロカネソウ


    途中の岩に咲いていた白いラン

 人が入らない尾根ではあるが鹿はだいぶ入り込んでいるようで、ショウマ類の葉がだいぶ食害に遭っていた。カモシカが住んでいてニホンジカは比較的少ないと言われている三ツ峠であるが、少なからず鹿の食害はあるようだ。やはり花を保護するためには保護柵かメッシュの囲いが必要であろう。人の手を加えることに賛否あるかも知れないが、花数が増えていることから推察すると花たちにとってこの環境が快適であることは間違いない。

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自然保護委員会レインジャー活動のため三ツ峠へ 勉強会その2  平成29年6月17日

2017年06月20日 | 番外編
 平成29年6月17日から18日にかけて三ツ峠山荘に宿泊して自然保護委員会主催の山岳レインジャー活動(清掃登山)および勉強会が開催され、講演させていただいた。テーマは以下の2点である。

 1.山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状
 2.稀少植物保護への取り組み

 テーマ1については前述した通りで、テーマ2の「稀少植物保護への取り組み」について述べる。

 山岳連盟のレインジャー活動とは、登山者の保護や救助が目的ではなく、稀少植物の調査と保護のための登山者の指導が目的である。そのためには植物の知識が必要であり、現地での観察会だけでなく研修会も開催されている。山岳レインジャー活動の植物調査は定経路(同じルートの植物を毎年調査する)と探索路(ルートの指定無く指定された山域を調査する)の2種類があり、山梨県山岳連盟に所属していてレインジャー活動に協力していただける山岳会に振り分けられる。今年は合計で50数回の出動が予定されている。主に1泊2日で調査に行く高所山岳地帯が主体であるが、近年は日帰りでの中・低山のレインジャー活動や自然保護委員会主催の勉強会も多く開催されるようになった。しかし、今のところはまだ調査が主体で保護活動まではなかなか手が回らないのが現状である。

 しかし、調査と観察を行っている間に無くなってしまう植物も多々あるわけである。山岳レインジャー活動で調査したものは報告書を記載して自然保護委員会でとりまとめたうえ、山梨県緑自然課に届けられる。その調査書を元に山梨県の行政の判断で保護に乗り出すかどうかが検討されるわけであるが、予算や時間等の都合でなかなか出来ないでいるのが現状である。しかし、危機的な状況にあり優先順位の高い植物については直接山岳連盟から働きかけて早急な対処が行われることがある。そのひとつがホザキツキヌキソウである。この花は昨年6月に自然保護グループの観察会が行われた後、富士川町や南アルプス市に山岳連盟から直接依頼してその年の秋には保護柵で囲われることとなった。しかしそのような事例は稀であり、現状では行政にお願いしてもなかなか動いてくれないことが多い。

 そこで今年から始動したのが、私的に行う保護作戦、保護ネット張りである。ブログ上では既に掲載済みであるが、4月から4つの山に小さな範囲ではあるが保護ネットを設置した。その効果はいかなるものかを今回の講演で発表させていただいた。以下の3つの作戦について今回述べさせていただいた。

 1.茅ヶ岳オキナグサ保護作戦
 2.湯村山キラキラキンラン保護作戦
 3.秘密の花咲じじい作戦


 ①茅ヶ岳オキナグサ保護作戦

 茅ヶ岳のザレ地に限局的に咲くキンポウゲ科オキナグサ(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)は、平成24年ごろから花芽のみ食害に遭っているのが観察されていたが、平成26年の山梨県を見舞った記録的な大雪の後2年間は食害は観察されなかった。しかし昨年(平成28年)の4月下旬に訪れてみると、花芽どころか新芽の葉までが食べられており、とうとう一株も花を咲かせることなく終わってしまった。秋に再訪してみると、とりあえずは葉だけは出たようだ。3年間このような状況が続くと消滅してしまう可能性が高い。そこで今年、食害から守るために保護柵の設置を行った。


    茅ヶ岳のオキナグサ 平成27年4月撮影


    記録的な豪雪に見舞われた翌年の平成27年は食害に遭わずかなりの数の花が咲いてくれた。


    ところが昨年(平成28年)4月に訪れてみると、葉が少し出ているだけで花芽は全く見当たらない。


    良く見てみると、葉の根元から食べられていた。


    今年(平成29年)4月、保護ネットを自主的に設置する。


    地盤が固くポールの固定が悪いため、後日金属杭を持って行き固定し直した。5月連休中に作業を終えた。

 さて、保護柵の効果はどうだったであろうか?例年ならば花の満開を迎えている5月連休までネット張り作業がかかってしまったが、今年は花期が2週間ほど遅れてくれたおかげで花はまだ咲いていなかった。5月中旬、柵の効果を確認に訪問してみる。


    今年(平成29年)5月中旬に訪問。咲いている。葉の食害も全く受けていない。


    空に向かって嬉しそうに咲いている茅ヶ岳のオキナグサ。


    花数はだいぶ減ってしまっているが、ひとまずは咲かせることが出来た。保護ネットによる囲い込み作戦はひとまず成功である。

 茅ヶ岳オキナグサ保護作戦はひとまず成功した。しかし課題はたくさんあり、だいぶ減ってしまったこの花を復活させることが出来るのか、ネットの強度にはかなりの問題があり、雪の積もる冬の間に倒れてしまう可能性が高い。来年も修復に訪れる必要がある。


 ②湯村山キラキラキンラン保護作戦

 湯村山は甲府市の市街地からほど近い位置にあり、道が整備されていて地元の老人たちをはじめ、ハイキングやトレランの人たちもたくさん集う入り易い山である。それゆえにキンランをはじめとする種々の植物の盗掘や花摘みが後を絶たない。先日見た花がもう無くなっているというのは日常茶飯事で、特にキンラン、ギンランは目に見えて数を減らしている。保護のために今年5月、囲い込み作戦を展開した。


    湯村山のラン科キンラン(山梨県絶滅危惧ⅠB類)。


    湯村山には他にも稀少植物が咲く。ラン科エビネ(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)


    ラン科ギンラン(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)。いずれも盗掘と食害で近年著しく数を減らしている。


    本年(平成29年)5月、自主的に保護柵を設置する。これは棒の長さ1.5mの高いほうの保護柵。


    こちらは棒の長さ1mの低いほうの保護柵。

 高いほうの保護柵を2ヶ所、低いほうの保護柵4ヶ所設置し、合計8本のキンランを囲い込んだ。さて、その効果はどうだろうか?設置後1週間過ぎに見に行ってみる。


    高いほうの保護柵の中。囲い込んだキンランは無事で、もうすぐ花が散りそうである。


    一方、低いほうの保護柵は花が無くなっている。花が散ったのでは無さそうだ。


    囲われていない他のキンランを見てみると、同じようなことが起きていた。


    株の根元あたりを見てみると、花が摘まれて散乱している。盗掘を恐れて誰かが花を摘んだらしい。

 低い保護柵は人の手が容易に届いてしまうため、盗掘を恐れた誰かが保護のために花芽を摘んだらしい。株を持ち去られないためにはこの方法もひとつの手段かも知れないが、種を付けることなく花が終えてしまい世代交代が出来ないため、長い目で見ると花数を減らすことになってしまう。このようなことをしなくても良いような保護の方法を今後考えなければならない。隠して保護するのではなく、オープンな自然公園のようにするのもひとつの手段かと考えている。


 ③秘密の花咲かじじい作戦

 既に何度か記事をブログ上に書いているので、もはや秘密では無くなってしまっている。2年ほど前から始動した作戦である。
 ある写真家の先生からアツモリソウが咲く場所があるとの情報をいただき、平成24年6月、3株咲いているのを確認した。しかしその翌年から葉は出るものの花を咲かせなくなってしまい、さらにその翌年は弱弱しい葉を出すだけで全く花を咲かせる元気が無くなってしまった。そんな折、三ツ峠の清掃登山に参加する機会があり、あの保護地の中に咲くアツモリソウの元気なこと、それ以上にその素晴らしい環境に感動した。そしてこの花咲かじじい作戦が始動した。周辺のテンニンソウを取り除き木の枝を取り払って日当たりを良くしてやり、さらにはラン菌の活性を高めるような天然の肥料も散布した。平成27年の春には葉が出ているのを確認したがその年の秋には無くなってしまい、とうとう昨年(平成28年)には葉すら姿を見せなくなってしまった。花咲かじじい作戦は失敗したかと思ったのだが、手入れしていた場所を良く見ると鹿の食害により折角出てきた植物の葉が大部分食べられていたのである。植生再生のためにいろいろやって来たことは鹿の餌を増やしたに過ぎなかったということだった。そして今年の4月、まだ下草が生え出す前に保護柵の設置を行った。


    平成24年6月に見たアツモリソウ。今にして思えば、テンニンソウなどの共生しにくい植物に囲まれていて、悪条件の中に咲いていたと思う。


    おそらく保護されていない環境下で見ることが出来た最後の花と思われる。


    これも今にして思うことだが、花の色が薄く元気が無い。この時点で既に救助信号を発していたのだろう。


    その翌年の平成25年6月、3株の葉が出たが花は咲かせなかった。


    平成27年6月、弱弱しい葉を一株出したのみで、秋にはこの葉は無くなってしまっていた。


    平成28年6月、手入れしたにもかかわらず、とうとう葉すら出なくなってしまった。


    良く見てみると、鹿の食害でシュロソウの葉がほとんど食べられている。


    平成29年4月、まだ下草が生え出す前に保護柵を設置した。


    平成29年6月再訪してみる。保護柵の中は青々と草が茂っている。

 さて、今年(平成29年)4月に設置した保護柵の効果はどうなのだろうか?6月、期待と不安が入り混じりながら再訪してみると・・・!


    保護柵の中。食害は全く受けていない。そして良く見てみると・・・


    まだ弱弱しく、花を咲かせるのはずっと先になりそうだが、葉は出てくれた。

 昨年は食害に遭ったか、あるいは葉を出すだけの元気が無かったのかも知れない。しかし今年はなんとか葉だけでも出してくれた。とにかく嬉しかった。花咲かじじい作戦続行である。


 以上が今回三ツ峠山荘で行われた勉強会の要旨である。


 まとめ

 ・局所的な保護ネットは根本的な植生の回復は困難であろうが、短期間の保護には有効な手段である。
 ・行政が動くのを待っている間に稀少植物はどんどん減少してしまう。やれる範囲で保護すべきだと思う。これは保護ネットだけでなく、踏まれないように石や木で囲ってあげることも含めて、大切な保護活動だと考えている。
 ・山岳レインジャー活動も調査・観察から保護も考える時期に来ていると思う。これは自分自身を含めての戒めである。


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自然保護委員会レインジャー活動および勉強会のため三ツ峠へ 勉強会その1  平成29年6月17日

2017年06月19日 | 番外編
 この季節の恒例となっている山梨県山岳連盟レインジャー活動の一環として三ツ峠の清掃登山、および勉強会が開催された。今回の勉強会では発表の機会が与えられ、約30分間話すことになった。パワーポイントで作成したスライドを準備してトレーニングと称して自分のパソコンを三ツ峠まで担ぎ上げたが、登りながらこの荷物を持って来たことにちょっと後悔した。いつものことではあるが、1時間半の行程で既にヘロヘロである。

 食事を終えて夕方6時45分から勉強会となった。山梨県山岳連盟の参加者は9名であったが、その他にこの日東京から来られた勤労者山岳会の方たちが20名ほど宿泊されていて、それらの方たちもお誘いしての勉強会となる。内容は以下の2点である。

 1.山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状
 2.稀少植物保護への取り組み

 2つのテーマで質疑応答を交えつつ、約70枚のスライドを上映した。まずはテーマ1の「山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状」について発表した要旨を書きたいと思う。勉強会の際は山名も述べたがブログ上での記事では植物保護のため伏せさせていただく。

 ①ラン科ウチョウラン



    御坂山塊のウチョウラン


    人の近付けない急峻な岩場の草地の中に生育している。

 山梨県山岳連盟では自生地を把握し、山岳レインジャー活動の調査に毎年出かけている。御坂山塊の岩場のごく一部に生育しているが、周辺を探索してみたところ人が近付けない岩場の数ヶ所で存在が確認された。鹿の食害には縁の無い場所なので、盗掘や岩の崩落が無ければこのまま生き続けてくれると思われる。個体数はほぼ横ばいか、若干増えているようにも見える。


 ②ラン科ホテイラン


    南アルプス某山のホテイラン


    他の場所のものに比べて背が高くやや大型


    個体数がきわめて少なく、いつ絶滅してもおかしくない状況にある。

 八ヶ岳の長野県側で見ることが出来るが、山梨県側では出会ったことが無い。山梨県では南アルプスのごく限られた場所でひっそりと生育しており、山岳レインジャー活動で毎年調査されているが、年々個体数が減少している。今回提示した画像は調査区域外にある山に咲く個体であるが、花数はせいぜい10株くらい、葉の数をカウントしても30個体ほどしか見つからない。個体数を維持して行くには50株くらい必要と言われており、この場所は将来的には絶滅してしまうのではないかと危惧している。個体数が減少している原因は鹿の食害により下草が無くなり、山肌が乾燥してしまったことが最大の原因と考えている。保護柵で囲うこともひとつの策かも知れないが、急峻な斜面で囲うのは難しい場所である。


 ③ラン科トラキチラン


    富士山山麓に咲くトラキチラン


    葉緑素を持たない腐生植物

 富士山山麓の某山にはかつて大きな群落があったらしいが、私がこの花を見に出かけた3年前にはもはやそのような群落は見かけられなくなってしまっていた。山梨県ではこの場所を含めて4ヶ所の自生地の報告を受けているが、いずれの場所も個体数が少なく年々数を減らしている。直接の食害や盗掘では無く、山肌の乾燥化による環境の変化が大きく関与していると思われる。


 ④ラン科フガクスズムシソウ


    富士山山麓のフガクスズムシソウ


    高い木の上に生育する着生植物


    白花の個体

 富士山の山麓を走る林道をドライブしてみると、大部分がツガの樹林帯の中を走っているのに気付くだろう。その林を良く見てみると、木々が整然と列を成して立っているのに気付くかも知れない。1合目・2合目あたりのツガの樹林帯は、実は大部分が植林帯なのである。その植林帯の中に残された雑木林の中にこの着生植物は生育している。木の上で生活するため、水分の確保には空気湿度が重要で、霧が発生し易く湿度の高い森を好み、苔が多く着生している大きな木に生育している。高い木の上に居るので動物の食害とはほぼ無関係であるが、手が届くような低いところでは盗掘によるものなのか、ほとんど見かけることが無い。


 ⑤リンドウ科ホソバツルリンドウ


    甲州アルプスで遭遇したホソバツルリンドウ


    ススキの葉に巻き付いていた


    目立たない花なので、人に気付かれずひっそりと咲いている 

 細いツルで巻き付いた先に華奢な花を咲かせるリンドウだが、その花は見れば見るほど味わい深い。甲州アルプスの山系で数ヶ所自生地があり、山中湖界隈の山でも数株存在が確認されたが私が見たのはこの1ヶ所のみである。生育するにはラン科植物と同様に根正菌が関与しており、移植も種を採取して別の場所に播いて増やすのも難しい植物である。草むらの中に地味にひっそりと咲いているのであまり人目に触れないが、間違って草刈りが行われてしまうといつ無くなってもおかしくない環境にある。


 ⑥ユリ科カイコバイモ


    静岡県との県境に咲くカイコバイモ


    南部町の某山に咲くカイコバイモ


    写真の中に7個体写っている。おそらくはこの花の最大の自生地であろう。

 静岡県との県境の山に咲く個体は静岡県で天然記念物に指定されており、パトロールも頻回に行われていて手厚く保護されている。山梨県では無防備な状態であるが、自生地自体が山梨県には少ない。偶然山梨県の某山岳会が南部町にある山岳地帯のバリアンスルートを歩いている際にこの花を探してきた。調査に行ってみると、開花しているもので50個体以上、若葉も含めると300個体を越えるであろう大きな自生地が確認された。人の行かない山の奥なので、斜面の崩落さえ無ければこのまま咲き続けてくれると思われる。


 ⑦ユリ科スルガジョウロウホトトギス、別名カイジョウロウホトトギス


    山梨県県南部の谷の奥深くで生き残っていてくれた黄色いホトトギス


    本名はスルガジョウロウホトトギスであるが、山梨県に咲くということでカイジョウロウホトトギスの別名を持つ


    人の近付かない奥深い谷に咲く美しい花

 ジョウロウホトトギスは日本ではサガミ、キイ、トサ、スルガの4種類が知られており、スルガジョウロウホトトギスが最も個体数が少ないと言われている。いずれも天然記念物に指定されている貴重な花である。スルガジョウロウホトトギスは富士川から西の領域には生育していないと言われていたのだが、昭和50年代に山梨県の県南部の富士川より西の山域でこの花が発見され、神奈川県の新聞に掲載された。そのことがきっかけとなり、山梨県にあったこの花は徹底的に盗掘され、もはや絶滅したのではないかと思われていた。静岡県のスルガジョウロウホトトギスは天然記念物に指定されているので移動も売買も禁止されているが、山梨県では指定が無いためにカイジョウロウホトトギスと名前を変えて売買されているのが非常に腹立たしかった。そしてこの花の調査に乗り出したのが平成27年である。ヤマヒルが多く生育する山域の谷を何本も登り詰め、ようやくこの花に出会うことが出来た。まず人が入ることが無い奥深い谷の中で、しかも手の届かない高い場所に居るこの花、さらにその谷はヤマヒルに守られた要塞になっている。個体数も維持して行くには十分な数があり、このままそっとしておいてやれば咲き続けてくれるのではないかと考えている。


 ⑧スイカズラ科ホザキツキヌキソウ


    南アルプス某山で奇跡的に生き残ってくれたホザキツキヌキソウ


    5月に黄緑色の花を咲かせた


    8月、白い実が成った


    ホザキツキヌキソウの実


    9月、種が付いたが、その中身は・・・

 日本では南アルプスの某山にだけ生育する貴重な植物である。元々個体数が非常に少なかったうえに盗掘の被害が相次ぎ、さらに鹿の食害にも遭ってほとんど見かけることが無くなってしまった植物である。この大きな株は奇跡的に生き残ってくれた貴重なものである。昨年はこの植物を探すために4月から7月までの休日のほとんどを費やしたが、とうとう発見することは出来なかった。奇跡的に残ったこの株は根元がひとつになっているように見え、おそらくは株分けによって増えてきたものであろう。同じ遺伝子を持った株が受粉したとしても、自家受粉したことになるために種を実らせる確率はきわめて低く、たとえ実ったとしても発芽する可能性もきわめて低い。昨年必死に別株を探したのは、他家受粉させて種を採取して株数を増やしてやりたいという目論見があったのだが、失敗してしまった。9月に実った種を採取してみると、案の定異様に軽い。部分的に破損していた種を割ってみると、思った通り中身が入っていなかった。株分けで増えたこの花、いつしか遺伝子が劣化して絶えてしまうのではないかとたいへん危惧している。ちなみにこの株は山梨県山岳連盟からの強い働きかけもあって昨年の秋には保護柵で囲われ、人も動物も近付けないように手厚く保護されている。


    平成28年秋に保護柵で囲われて手厚く保護されているホザキツキヌキソウ


 その他にも数種類の花のスライドと現状をお話しさせていただいた。これが前半の発表だったのだが、熱心な討論があったりしてこれだけで持ち時間の30分となってしまった。もうひとつのテーマ「稀少植物保護への取り組み」のほうが私としては重要な話だったのだが・・・早口で発表することとなる。(その2に続く)
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スズランの森に咲く花たち  平成29年6月11日

2017年06月14日 | 花・花・花
 自然保護グループの植物観察会の後にスズランの森を訪れてみた。スズランはもう終盤であるがなんとか見ることが出来たが、そのほかにも様々な花が咲いていて楽しむことが出来た。しかも、自然保護グループメンバーの知り合いの方で、この界隈の草花にたいへん詳しい方が偶然訪れており、その方に案内していただいてなかなか見つけられない花も見せていただいた。


    芦川スズランの森。白樺の新緑が美しい。


    クサタチバナ。これから大繁殖するかも知れないが、この森は鹿の対策がしっかりと出来ている。


    スズラン。もうそろそろ終焉。


    大株のササバギンラン。ササバギンランはあちらこちらに咲いていた。


    ベニバナイチヤクソウ


    スズランとベニバナイチヤクソウのコラボレーション


    グンナイフウロ。色が濃いのでタカネか?


    案内していただいたおおかげで見られたサカネラン。草むらの中で見つけにくいところに咲いていた。


    こちらも知らないと見つけられないだろう。クモキリソウ属の花。

 そのほかにもいろいろな情報をいただくことが出来た。山梨県ではまだ見ていない鯖の尾が来年にはお目にかかれるかも知れない。また、尾根筋にある峠のスズラン峠とは、このスズランの森に咲くものと同じスズランを差しているのではなくて、かつては峠にたくさんあったエゾスズラン(アオスズラン)のことなのだそうだ。今ではほとんど見かけたことが無いが、ずいぶん前に稜線上でそれらしき植物を1株だけ見かけたことがあった。花が咲いていなかったのでそのまま不明なままに終わってしまっていたが、あれはひょっとしたらエゾスズランだったのかも知れない。あまり気をつけて歩いたことはなかったが、これからはその気で探しながら歩いてみることにしよう。
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御坂山系某山の植物観察会および鹿食害調査勉強会  平成29年6月11日(日)

2017年06月12日 | 番外編
 山名を隠してもこの記事を読まれている方のほとんどはこれがどこの山かはわかっていることと思う。ここ数年間で著しく変貌を遂げているこの山の植生の変化と、それに対してどのように対応して行けばよいのか、まだ全くの手探り状態である。今年2ヶ所の保護柵を設置したものの、その程度でこの山に咲く貴重な植物の保護が出来るとは到底思っていない。しかし、現状がどうなっていてこれから起こりそうな変化は何なのかを周知しておくことはこれから先の保護活動を行って行くうえで必要不可欠なことだと考える。今回は山梨県山岳連盟自然保護グループ主催で、私の提案による観察会と勉強会が開催された。
 以下は今回の勉強会で配布した資料である。


    ~食害による植生の変化とカモメランへの影響について考える~
       山梨県山岳連盟 自然保護グループ

 かつては山頂付近に豊かなお花畑が広がっていた御坂山系某山であるが、鹿の食害によりカイフウロやタムラソウ、ユキザサなどの多くの植物が激減し、鹿の好まないヤブレガサやマルバタケブキなどが増殖する森に変わりつつある。その結果山肌の乾燥化を招き、ここ数年でカモメランは減少の一途をたどっている。



   平成24年8月19日撮影。山頂付近は豊かな草地が広がっていた。



   平成24年8月19日撮影。カイフウロやシュロソウ、レンゲショウマなどが咲いていた。


    平成28年6月撮影。全ての森がこうではないが、鹿の好まないヤブレガサが大繁殖している。


    この山に咲くカモメラン


    踏み荒らしが目立つため昨年保護ロープを設置した。


    通常のカモメラン。全体的にピンク色をしている。


    この山固有のカモメラン。上部の萼片が白、唇弁に濃い紫色の斑点が入る。

 今年はカモメラン保護のために自主的に2ヶ所保護柵設置を行った。鹿の食害と人の踏み荒らしからはある程度保護できるかも知れない。しかし、根本的にはもっと広範囲に保護柵を設置し、鹿の食害による山肌の乾燥化を防ぎ植生の回復を待たなければ、この稀少なランを含めた植物の保護は困難であろうと考えている。部分的な保護柵は一時凌ぎの効果しか期待できないだろう。 (資料:自然保護グループ ヨッシー作成)



 広い駐車場のあるこの山の麓に集合する。私を含めて18名という多くの参加者が集まってくれた。資料を配布し、今回の観察会の趣旨について説明する。そして出発。


    参加者のほとんどは山岳レインジャーの方々だった。


    昨年の画像を見直すと奇妙なマムシグサが写っていたので今年も出会えるだろうと思っていた。ユモトマムシグサ。こちらの山にもあった。


    カモメラン自生地に到着。花のすぐ左脇は鹿の食害を受けた植物の茎。ショウマ類か?


    上弁が若干ピンク色がかっているが、この山に見られる唇弁に濃い紫色の斑が入るタイプ。


    柵で囲った場所。昨年は1株しか咲かなかったが今年は3株咲いてくれた。昨年は踏み跡が目立ったが、今年はなんとか保護できている。


    ここは固有タイプがほとんど。70㎜望遠だと少し距離が足りない。


    誰かが木で隠してくれたらしいが、その木の下敷きになってしまっていたカモメラン。このようなことをしなくても良いようにしてやりたい。


    結構咲いているように見えるが、花数は激減している。


    先日ロープを張り直したが効果が無いようで、また新たな踏み跡が出来ている。柵を設置することに決める。


    唇弁の濃いものも混在している。

 途中のショウマ類はさらに葉の数を減らしており、あっても小さな葉が多くて花を咲かせるには不安なものが多かった。咲く前に鹿に食われる危険性もある。そして、さらに勢いを増して増殖しているのがヤブレガサである。あの大きな葉の下に入ってしまった植物は、日光を浴びることが出来なくなりやがては衰退して行く運命にあるのだろう。実際にヤブレガサの下にあったカモメランの群落が今年は葉も出ずに激減していた。

 山頂付近で昼食をとり下山する。この山の植生変化を見ていただくにはバリアンスルートが最適である。なにせそこの尾根に生えているのはヤブレガサばかり、ショウマもあるにはあるが、元気が無く、さらに山肌も乾燥している。そのような山の変化を見せながら、沢筋に下りてみた。


    沢筋はまだましかも知れない。ツルネコノメソウ群落。


    テバコモミジガサとゴミを回収して歩いてくれた参加者。


    コンロンソウ?


    この山では久しぶりに見かけるラショウモンカズラ。数株だが咲き残っていた。

 バリアンス尾根を下りて周回し、駐車場に戻る予定だったが、日没にはまだ時間があるので近くの休憩所がある森の中を散策して解散となった。

 今回のこの山の現状は参加者の皆さんは十分に理解していただけたことと思う。今のところ考えられる最善の策は山頂付近を広範囲に保護柵で囲んで必要ならばヤブレガサやテンニンソウなどの草を除去して植生の回復を待つことであろう。山肌の乾燥化はラン菌の活性を低下させてしまい、カモメランが減少する最大の原因になっているのではないかと考えている。個人の力や山岳連盟で広範囲に保護柵設置を行うことは困難であり、行政の力を借りるしか無いであろう。しかし、それを待っている間にも花たちはどんどん衰退して行くわけで、今私たちに出来ることと言えば狭い範囲でも良いので柵で囲ってあげることくらいだろう。今年は2ヶ所しか囲えなかったが、来年はみんなで囲いに来ましょうということで話がまとまった。少しずつではあるが、観察から保護の方向に向かって転換出来てきたように思う。


    参加者の皆様、ご苦労様でした。来年は柵を設置に来ましょう。
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Strawberry Moon? そんなものが見えるのか?その2 大平山  平成29年6月9日

2017年06月12日 | 番外編
 前日の夕暮れを狙って端足峠に登ったが天候不良で富士山も月も全く姿を現さず、夕暮れのストロベリームーンは不発に終わった。

 下山後夕食をとってから山中湖に向かう。チャンスはもう一度、明朝にやって来る。大平山から平尾山にかけての稜線上で富士山のほぼ真ん中あたりに月が沈むはずである。時間的には石割山が良いのだが、残念ながら富士山頂から若干右に月が外れてしまう。大平山だと日の出の15分前、平尾山だと10分前くらいに富士山山頂に月が沈む計算だが、今回は山中湖の眺望が良い平尾山を撮影地に選択した。山中湖長池の駐車場に車を止め車中泊する。月が富士山に沈むのが4時5分ごろ、大平山まで1時間半と計算して、未明2時に出発しないと間に合わない。時刻は既に午後10時、あまり寝ている時間は無い。目覚まし時計を1時半にセットしてとにかく寝る。


    未明2時の山中湖長池から見る月と富士山。霞んでいるが月も富士山も見える。

 予定通りに午前1時半に起き出して車の外に出る。月が明るく照らしているが富士山はかなりぼんやりとしている。撮影してみると一応姿を現しているようだ。あまり条件は良く無さそうに見えるが、登ってみないとわからない。午後2時出発する。休憩無しに黙々と歩き、尾根道の直登ルートを登って1時間15分ほどで大平山山頂に到着した。先客が既に2名、三脚をセットしてスタンバイしていた。そのうちの1人は裏側の林道を車で山頂まで登って来ていた。悪路ではあるが、RV車ならば登れる道である。しかしちょっと反則なのでは?という気もしないではない。


    山中湖は雲海に覆われていた。綺麗な月が富士山に傾いていた。


    雲海の山中湖と月


    富士山頂に傾く月


    もうすぐ山頂に沈むが、ストロベリーになるのか??


    富士山頂に月がさしかかる。


    これは普通のパール富士。期待していた(いや、無理だろうと思っていた)ストロベリームーンにはならず。


    露出を変えてみたがやはり赤くはならず。

 やはり、ストロベリームーンにはならなかった。よほどの条件が良い時でなければ赤い月は見られなそうだが、標高2,500mを越える高所から目線の下に見下ろす月もオレンジ色から赤い月に見える時があり、おそらくはそれと同じような現象なのではないだろうか。

 カメラマンは総勢6~7人になっていた。月が見えなくなっても、まだ誰も帰ろうとする者は居ない。これから朝日が富士山を照らすようになり、紅富士が期待できるからである。


    アースシャドウの富士山


    山頂が染まり出した。


    真っ赤というわけでは無いが、この季節にしてはかなり色付いたほうだろう。


    梅雨の合間の紅富士


    朝日に染まる富士山


    山中湖を覆った夜明けの雲海


    日の出


    富士山の裾野まで朝日が差し込んだところで撤収。

 時間はまだ朝の5時である。ちょっと眠い、どころではなくてこのまま横になればそのまま眠れそうなくらいに眠いが、折角の好天なので石割山まで歩いてみることにする。


    振り返って見る大平山と富士山。大平山山頂に止まっている車が見える。


    平尾山から見る富士山


    朝露のアヤメと富士山。フラッシュ調整発光。


    石割山山頂


    石割山から見る朝富士

 7時石割山山頂に到着した。その頃には山中湖を覆っていた霧はすっかり消えていた。梅雨時にしてはきわめて珍しい、真っ青な青空の中に富士山が立っていた。

 石割山山頂で朝食をとって下山する。来たルートを戻るのも良いが、折角なので歩いたことが無いルートを歩いてみることにする。東海自然歩道はいつも石割神社に短絡するルートを歩いており、その先の平野まで至るルートはまだ歩いたことが無い。さらに、湖畔を走るサイクリングロードもどうなっているのか、ロケハンの意味もあって一度歩いてみたいと思っていた。平尾山の分岐点まで下りて平野に至る東海自然歩道を下山する。


    平野に至る東海自然歩道、良い道が林の中を走っている。


    ユモトマムシグサか?と思ったが、葉の数と分岐の仕方が違う。普通のマムシグサと思われる。


    平野湖畔から見るダブル富士山。この場所は入り江になっていて、ダブルダイヤモンド富士を撮るにも良さそうな場所だ。


    サイクリングロードから見る富士山。長池の駐車場までもう少し?ではなくてかなりあった。いちばん疲れたアスファルトの道歩き。

 大平山から平尾山・石割山を縦走し、湖畔を歩いて1周したことになる。アスファルトの道は固くて足首と膝に堪える。筋肉痛では無くて軽度ではあるが関節痛になった。

 長池の駐車場には10時に到着した。助手席の椅子を倒してちょっと横になると、そのまま1時間ほど爆睡してしまった。11時に目が覚めたがまだ眠いのでもう1時間寝て、上九の湯でひと風呂浴びてから帰宅となった。それなりに綺麗なパール富士の撮影に成功したのだが、見たかったのは赤い月だっただけに折角のパール富士だったのにあまり感動できなかった。贅沢というものだろうか?


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Strawberry Moon? そんなものが見えるのか?その1 端足峠  平成29年6月9日

2017年06月10日 | 番外編
 今宵昇って来る月齢14.3の満月は地球から最も遠い位置に月が位置する今年最少の満月である。かつ、夏至に近いこの季節は太陽の位置が高く、月の位置は南側の低い位置から昇って来るために太陽と月の位置が1年のうちで最も遠くなり、厚い空気の層に光が吸収されて赤色だけ残り、ストロベリームーンなる赤色の月が昇って来るらしい。本当なのか?富士山頂に現れる良さそうな位置をカシミール3Dで計算してみると、端足峠の南側、雨ヶ岳に登り始めるあたりの笹薮の中が時間的にもベストポジションになりそうだ。雲行きと天気予報の雲画像、そして本栖湖ライブカメラをチェックしていたが、午後から少しずつ雲が切れて時々富士山が見えるようになってきた。雲画像から見ても良さそうに見えたので、根原を午後5時に出発して端足峠を目指した。しかし、登り始めの頃には黒い雲が空一面を覆い出し、難しそうな感じがする。


    A沢貯水池あたりから見る端足峠。いちばん低いところが目的地だが、どうにも雲行きが怪しい。


    竜ヶ岳は既に雲に覆われてしまっている。


    端足峠に至る樹林帯の中は霧が巻いて真っ暗。


    端足峠到着。小雨が舞っていた。


    月が姿を現すまでまだ1時間弱あるが、これでは見える可能性はほぼ無し。

 端足峠に到着するが完全に霧の中で小雨が舞っていた。天気予報を見ると夜には晴れそうだが夕方から夜半にかけては標高が高いところほど雷雲の発生する可能性が高いとの予報である。これでは月を見ることは不可能だろう。すぐに下山開始する。下から見たほうがまだ可能性は高そうだ。A沢貯水池付近まで急いで下る。


    A沢貯水池付近。富士山は全く見えず。


    この場所だと7時半ごろ富士山の左角あたりから月が出るはずだが・・・?


    竜ヶ岳も相変わらず雲だらけ。

 7時半まで待ったが何も見えないまま撤退となる。残念。

 しかしまだチャンスはある。明日の朝もう一度ストロベリーパール富士のチャンスがあるのだ。そのまま山中湖の湖畔に移動して車中泊し、明朝に備える。未明2時には出発しないと間に合わないので、あまり寝ている時間は無い。


    山中湖長池から。雲が少し晴れて富士山が少しずつ姿を現してきた。


    ストロベリームーン、のわけが無い。時間は既に午後10時。

その2に続きます。


    ストロベリームーンになったかな???
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失われた草その後 花咲じじい作戦ネット張りの成果は?  平成29年6月初旬

2017年06月07日 | 番外編
 一昨年は春に葉を確認した貴重な草だが、秋には鹿に食べられたらしく消失してしまった。草をむしったり日当たりを良くしたり天然肥料を撒いたりと世話をしたつもりだったが、昨年はとうとうその葉すら姿を現すことは無くなってしまい、この「花咲じじい作戦」は赤信号が灯ってしまった。そして今年の4月、鹿の食害から保護するために登山者に場所がわかってしまうのを覚悟のうえで保護ネットを設置するに至った。果たして、その成果はどうだろうか?そろそろ葉が出る頃だ。


    かつては10株以上あった登山道途中のスズムシソウは激減してしまい、風前の灯である。


    それでも今年は1株だけ開花してくれた。


    ヤマウツボは少し数が少ない。


    この山のクワガタソウは大柄で元気が良い。


    現地に到着。このテンニンソウがはびこる斜面の傍らに保護柵が設置されている。


    保護ネットは破損無く立っている。


    昨年は徹底的に食われたシュロソウの葉が今年は全く食害を受けていない。保護ネットは機能している。


    トンボソウか何かわからないラン科らしき葉は数を増やしている。


    そして目を凝らして草むらの中を探すと・・・出ている。失われた草の葉。

 保護ネットの成果があったようで、昨年はお目にかかれなかったあの咲かなくなった貴重な植物の葉が今年は出てくれた。完全に失われたわけではなく、やはり食害によって食べられてしまっていたようだ。とにかく残っていてくれて良かった。花を咲かせるにはまだ遠い道のりだろうが、ひとまずは「花咲じじい作戦」の成果があったようだ。思わずガッツポーズが出てしまった。テンニンソウが生えていたので、柵の一部を解除して取り除き、周辺のテンニンソウも一部除去して撤退した。嬉しい1日になった。
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咲き始めた鷗のラン  平成29年6月5日

2017年06月07日 | 番外編
 先日保護ネットを設置したカモメが咲く場所だが、タイムアウトになってしまい作業が不完全なままに終わってしまっている。そろそろ咲いている頃だろうから、多くの登山者がやって来る前に作業を終えておきたい。午後から現地に向かう。しかし歩き始めたのが午後4時近く、この日は体調がきわめて悪い。気温が低くて寒いくらいなのに汗がダラダラと流れ出るうえに足に力が入らない。おそらくは血糖値コントロール不良による軽い低血糖症状だろう。休憩をこまめに取りつつ、水分を十分に補給しながら花の咲く場所まで登る。


    おそらくはカントウマムシグサと思われる。広義のマムシグサ。


    オオヤマサギソウの葉と思われる。この場所で見つけたのは初めて。


    花の咲く場所に到着すると、数株が咲き始めていた。葉の数をカウントするとこの場所は70~80株くらいあり、昨年と変わらないか若干増えているように見える。


    こちらが昨年ロープで囲った場所。花とロープの位置が近過ぎるため、設置し直す。


    花に近過ぎると花を踏まなくとも地面が踏み固められて花が衰退することになる。30㎝ほど離して設置し直した。


    さらにこの真ん中に出来てしまった踏み跡には新たな踏み込んだ痕跡があり、こちらもポールの数を増やして木で囲う。


    あと数日で咲きそうだ。


    ここは先日囲い込みが完了している場所。


    この場所は上が白で唇弁に濃い紫色の斑点が出るこの山独特のカモメが咲く場所である。昨年は1株だけだったが今年は3株開花した。


    ズーム。その気で見ないと見逃してしまう。


    こちらが通常のカモメ。唇弁の斑点が薄く、全体的にピンク色。

 さて、未完成の保護ネットの場所に行き、木の根元に隠しておいた作業道具を取りに行った。ところが、誰かゴミの置き忘れと思ったのか、それとも使えそうな道具だったので持ち去ったか、デポしておいた作業道具が無くなっていた。周辺を探したがやはり見つからず、誰かに持ち去られてしまったようだ。登っては来たが作業が行えず、無念の撤退となってしまった。

 週末には山岳連盟自然保護グループ主催の観察会兼鹿の食害調査がこの山で行われ、講師を仰せつかっている。参加者に理解していただきたいのはここ10年間で起こって来たこの山の植生の変化と、それがこのカモメのランにどのような影響を及ぼしているか、そして保護して行くためにやらなければならないことは何なのか、ということである。保護ロープや部分的な保護ネットくらいでは気休めにしかならないことを訴えたいと思っている。これから参加者に配布する資料作りをしなければならない。
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春の櫛形山を花見周回(後編)  平成29年6月4日

2017年06月07日 | 花・花・花
 池の茶屋を起点とする櫛形山山頂からアヤメ平の周回コースは現在北側のもみじ谷を回るコースがメインコースになっている。今回回るのはそちらではなくて、南側を回る管理歩道コースである。ここ数年は恒例のように歩いている櫛形山だが、こちらの管理歩道コースを歩くのは初めてである。あまり人が入らないルートではあるが、保護柵の外にあるコースなので食害を受けてあまり花は無いだろうと予想していた。ところが、歩いてみないとわからないもので、以外にも花の宝庫だった。

 午後4時5分、管理歩道の分岐に到着。道標には池の茶屋まで90分、GPSのルートでは100分と書かれている。日没前に楽勝で池の茶屋に戻れる時間であるが、折角の初めて歩くコースを急ぎ足で歩くのはもったいない。花を探しながらゆっくりと、じっくりと歩いてみることにする。



    ほこら小屋の上にある管理歩道分岐。池の茶屋まで90分だが、花を探しながらじっくりと歩く。


    水平歩道と思っていたら、以外にも最初は結構登る。


    足元にはシロバナノヘビイチゴがたくさん。


    今度はミツバツチグリ。あまり歩かれている様子は無い。


    予想通り、残っているのはマルバタケブキの群落。


    さらにバイケイソウの森。


    そしてクサタチバナ群落。いずれも鹿の食べないものばかり。やっぱりな~、とため息が出た。


    富士山の見える草地で一休み。

 管理歩道前半のルートは予想通りに鹿の食害を受けてもはや鹿の食べない植物ばかりが残る末期的な森になっていた。予想はしていたのだが実際に自分の目で見ると、やはり残念に思う。富士山の見える草地に腰を下ろして休憩していると、足元にホソバノアマナが咲いていた。こんな荒れたところでも咲いてくれるんだと少しばかり心が和んだが、この草地から池の茶屋にかけてのルートは想定外に様々な花が生き残っていた。


    休憩した草地の足元に咲いていたホソバノアマナ。


    レンプクソウ


    ヨゴレネコノメソウ


    ツルネコノメソウ


    下の黄緑色はヨゴレネコノメ(葯が暗紫色)だろうが、上の白っぽいのは葉と葉茎の様子からハナネコノメと思われる。


    ミヤマスミレが随所にたくさん咲いていた。


    ミヤマスミレ


    池の茶屋の保護柵内でも見かけたコセリバオウレンと思われる花の群落


    ツバメオモト


    ユリワサビ


    コミヤマカタバミ


    葉の辺縁の鋸歯が目立たないが、これは森の中で見たものと同じユモトマムシグサ。


    こちらはいつも見ているものに近い。ホソバテンナンショウ、あるいはカントウマムシグサと思われる。テンナンショウ類ももう少し詳しく勉強しなければならない。


    こんなところに・・・


    アオチドリ


    ミヤマハタザオ


    ナツトウダイ    


    サルオガゼ


    ヒョウタンボク。おそらく保護柵で囲われていたものと同じ、スルガヒョウタンボクと思われる。


    こんな美しいカラマツの森も残っている。

 前半の管理歩道では残念な光景が広がっていてがっかりしたが、後半の歩道沿いには想定を遥かに上回る様々な花が咲いていてたいへん楽しむことが出来た。予定時間の2時間を過ぎ、時間は6時半を過ぎてしまった。もう少し時間の余裕があれば、もっと面白い花に出会えたかも知れない。保護柵の外はもう見るべきものが無いと思っていた櫛形山だが、この管理歩道を歩いてみて、まだまだ捨てたものでは無いと思った。植生豊かな山だっただけに、探索すればもっといろいろなものに出会えるかも知れない。


    6時40分駐車場に到着。残っていたのは私の車だけ。


    気になっていたこの草は昨年山梨県山岳連盟の強い働きかけもあって保護柵で囲われて手厚く保護されています。
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春の櫛形山を花見周回(前編)  平成29年6月4日

2017年06月06日 | 山梨百名山
 もうすぐ梅雨を迎える季節なので、春と呼ぶには遅いが、山の上はまだ春を迎えたばかりで花はまだ一部しか咲き始めていない。昨日黒戸尾根の五合目小屋跡地で見たミヤマハタザオが気になっていた。あれは私が山に登るきっかけを作ったクモマツマキチョウの食草である。10数年前に櫛形山のアヤメ平で一度その美しい蝶に出会ってからは、何度も訪れている櫛形山であるがその蝶を見かけたことが無い。植物は根が残っていれば花が咲かずとも何年かして復活することはある。しかし虫はそうは行かず、1年ごとに生まれ変わるので一度絶えてしまったものが復活することはまず期待できない。しかし、植生が復活してきたアヤメ平や裸山ならば、ひょっとしたらまた飛んでいるのではないか?そんな淡い期待を抱いて、櫛形山を訪れてみたくなった。

 前日累積標高差1,600m、往復距離約16㎞を歩いたので、きっと足が痛いだろう、と思ったが意外とそうでもない。しかし、歩けばきっと足が上がらないだろう、と思ったがそうでもない。若干の足の疲れは残っているが、むしろ前日よりも快適に歩ける・・・気がする。池の茶屋から櫛形山の山頂に至るやや急な斜面を登るが、自分でも驚くほどに足が進む。これならば大丈夫そうだ。三角点手前から櫛形山の藪の中に踏み込んで植生の様子を見ながら、まずは櫛形山山頂を目指す。(写真が超多量なので、前編と後編に分けます。)


    登山道の入り口からいきなりこんな花が咲いている。


    ホソバノアマナ。山梨県では絶滅危惧種Ⅱ類に入っている。


    保護柵の中は緑が豊かである。花は終わっているがこれはコセリバオウレンではないだろうか?


    イワセントウソウ


    ズダヤクシュ


    ツバメオモト。どれも元気いっぱいという感じで咲いている。


    櫛形山三角点への登りではシロバナノヘビイチゴがたくさん。


    振り返って見る荒川・赤石・聖岳


    途中の休憩ベンチから見る白根三山。夜に星の撮影に来るにも良さそうな場所だ。


    北岳はどこから見ても格好良い。


    大きなダケカンバが出迎えてくれる。


    ルートを外れて樹林帯の中に入る。シダの生える森。


    圧巻のトリカブト群落。これだけ生えていると花の時期に再訪してみたくなる。


    お決まりのマルバタケブキ群落。これらは鹿が食べない植物ばかり。


    正規ルートに戻る。山頂付近のコメツガ大木。


    櫛形山山頂に到着。

 当初は保護柵の中と周辺だけ観察して帰る予定だったので、自宅を出たのが9時過ぎ、池の茶屋から歩き始めたのが11時20分だったので、櫛形山山頂で既に時間は午後1時20分である。山頂の看板には裸山まで50分、アヤメ平まで1時間20分と書かれている。あまりゆっくりも歩いていられなそうだ。足は問題無さそうなので少しピッチを上げて歩き、40分で裸山山頂に到着、昼食を軽くとった後、裸山裏側のバリアンスルートを下って西側(モミジ谷側)の入り口からアヤメ平に入った。アヤメ平のゲートには2時半に到着した。


    バラボタン平。ここも鹿の食害でマルバタケブキの森になってしまっている。


    スイカズラ科アオバヒョウタンボク(スルガヒョウタンボク)。鹿の好物で、保護のため柵で囲われている。山梨県絶滅危惧種ⅠB類。


    裸山。まだ春早く、花は咲いていない。茶色い穂は昨年のアヤメ。


    裸山山頂と白根三山。ここで10分ほど休憩して昼食。


    鳳凰山と早川尾根に挟まれた甲斐駒ケ岳がエベレストのような三角錐を描いて格好良く見える。


    裸山のミヤマハタザオ。花が咲くこの季節にクモマツマキチョウが飛ぶはずだが、全く姿は見えず。


    裸山裏側のバリアンスルートを下ってアヤメ平に向かう。途中のタカネフタバランは小さな花穂が出たばかり。


    ミヤマスミレの群落があった。


    ミヤマスミレ。若干時期を過ぎている。


    アヤメ平到着。まだ春早く、花はほとんど咲いていない。

 アヤメ平に到着した。ミヤマハタザオがちらほらと咲いているが、お目当ての蝶が飛んでいる様子は無い。たまに飛んでいるのはモンキチョウだった。やはり櫛形山のクモマツマキチョウは絶滅したと考えたほうが良さそうだ。どこからかまた飛来して住み着いてくれるのを期待するしかないのだろう。

 花はまだほとんど咲いていないがスミレならば咲いているはず、と見渡すが、咲いているのはタチツボスミレくらいだ。しかし、先に進むと紫色鮮やかな大きなスミレが目についた。期待していたサクラスミレだ。しかも想定していた以上にたくさん咲いている。


    タンポポがあった。萼片は開いておらず、二ホンタンポポだ。


    居ました。期待していたサクラスミレ。距離が遠い、望遠レンズを持ってくるんだった。


    足元にも咲いていた。


    ゴージャスなサクラスミレを満喫。


    ミツバツチグリがたくさん咲いている。ミヤマハタザオはちらほら咲いているが蝶はモンキチョウくらいだった。

 アヤメ平の避難小屋前で小休止する。時刻は3時15分だ。周回して池の茶屋に戻るには十分な時間だ。しかし、今回は以前から歩いてみたいと思っていたルートがあった。あまり人が歩くことが無い櫛形山南側を回る巡視歩道である。コースタイムでは1時間半で歩けるようだが、花を探しながら2時間かけて歩いてみたい。逆算すると4時半までに管理歩道の入り口に到着すれば良いことになる。そこまでの移動時間は1時間くらいだろう。ピッチを上げて管理歩道入り口に移動する。


    林の中ではもうすぐ咲きそうなマイヅルソウのお花畑


    いつもと葉の形が違うテンナンショウ。何これ??


    別の場所でも見かけた。ネットで調べてみるとこれはどうやらユモトマムシグサらしい。葉が5枚で辺縁が荒い鋸歯、花が葉よりも上に出る。


    樹林帯の中を急ぎ足で進む。


    4時5分、管理歩道の分岐に到着。道標ではここから池の茶屋まで90分、時間的には楽勝で日没までに到着できる・・・はずだ。

 ここから先は今までに歩いたことが無い櫛形山の道だ。どうなっているのか?あまり歩かれている様子が無いので荒れているのでは??といろいろ考えつつ、初めて歩く道に進む(後編に続く)。

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クモイコザクラに出会いに黒戸尾根を行く  平成29年6月3日

2017年06月05日 | 南アルプス
 この季節の旬の花、クモイコザクラをどこかの山に見に行こうと算段していた。候補はいくつかあり、簡単に行くならば八ヶ岳の地獄谷か、尾白川の上流、ちょっと歩く気ならば鞍掛山が有名で、数は少ないながら乾徳山にもある(今は絶えているかも知れない)。そんな時、1週間ほど前に黒戸尾根にもクモイコザクラが咲いているという情報を花仲間からいただいた。そして6月2日の午後、決定的な方から電話をいただいた。その方とは、今年から甲斐駒ケ岳7丈小屋の小屋番をしている世界的に有名なクライマーの花谷泰広君だ。途中の岩にたくさん咲いて見ごろを迎えているからいかがですかという連絡だった。その場所までは単純に標高差で1,500mくらいあるロングルートだ。しかしその場所に咲くことは今まで知らなかったし、初めて見る場所なので是非とも見てみたくなった。朝4時半に起床して竹宇駒ケ岳神社を6時ごろに出発する。


    いざ、出陣!本日は花探しと撮影時間を含めて12時間の予定。


    途中の林から見上げる残雪の甲斐駒ケ岳。う~ん、遠い。(山頂まで行くわけではないが・・・)


    笹の平付近の笹薮の道


    古い信仰の道だけあって、随所に石仏や石碑が立っている。


    高度を上げるとやがて苔生したツガの森に変わる。


    この尾根で有名な難所のひとつ、刃渡り。鎖があるので普通に通過できるのだが、滑落事故は強風で体ごと吹き飛ばされて起こるらしい。


    刃渡りのミツバツツジと鳳凰山


    刃渡りの岩の斜面にはコイワカガミがたくさん咲いていた。


    岩場に咲くコイワカガミ。怖いのでさっと撮って撤退。


    刃渡りを過ぎると今度は階段と急なハシゴの急登になる。


    4合目の刃利天狗

 刃利天狗に到着したのが11時10分、ここまではコースタイムより若干遅い程度の私としてはきわめて快調なペースだった。さて、この山の植物が面白いのはこの刃利天狗界隈から黒戸山にかけての苔生した樹林帯の中である。小さな植物が多いだけに、苔の斜面を目を凝らしながらゆっくりと進む。


    タケシマラン。普通にある。


    イチヨウランも葉は見かけるが花が咲いていたのはこの一株しか見つからなかった。


    ニョキニョキと花芽を出しているイチヨウラン。


    バイカオウレン。もうほとんど終わっていた。


    圧巻なのがマイヅルソウ、ではなくてそれに混じって出ている小ぶりな葉。これは全てコイチヨウランの葉。


    コイチヨウランの前年の花帆


    葉の紋様が美しい。標高2,000mを越えるこの高度だと、ヒメミヤマウズラになるのだろう。


    山梨県では初めて見る花。


    葉が2回3出複葉(と言うらしい)なので、セリバオウレンと思われる。下に出ているシダのような葉はオサバグサ。

 12時半、情報をいただいた現地に到着する。岩を覗き込むと点々と咲いている。花数をカウントしてみると40輪くらいある。さらに裏側の岩を覗いてみると、そちらにも20輪くらい咲いている。花を付けていない株も含めると100株は軽くあるだろう。個体数を維持して行くには十分な数である。


    5合目小屋跡


    その脇にはミヤマハタザオがたくさん。


    足元にはヒメイチゲ。


    見上げる甲斐駒ケ岳。右に見える尖ったピークを越えれば七丈小屋はすぐそこ。真ん中あたりまで登って根性を無くして撤退した。


    そして、居ました、クモイコザクラ。この株はもう花が散り始めている。


    こちらは少し痛んでいるがちょうど見頃。


    可愛らしい花。


    上から見下ろすとこんな急な岩壁に張り付くように咲いている。


    まだ蕾の株もちらほら。


    石碑とクモイコザクラ。黒戸尾根らしい風景。


    サルオガゼと蕾のコイワカガミとクモイコザクラ


    見上げる岩場に咲くクモイコザクラ

 もう少し撮りたかったのだが、風が吹き始めて花が激しく首を振り、全く撮れなくなってしまう。さらに続々と登山者がやって来て、登りのハシゴを撮影のために占拠するのは難しい状況となってしまう。昼食を含めて1時間半ほどこの可愛らしい花を楽しませてもらい、午後2時から下山を始める。急ぐと明日以降の行動に支障が出るので、ピッチをあげずにゆっくりと下りる。ちょうど刃渡りを渡っているところで情報を提供していただいた花谷君がトレランスタイルで登って来た。この日は七丈小屋にヘリの荷揚げをやったそうで、下で積む荷物の確認が花谷君の担当で、4回飛ばしたヘリの荷揚げを見届けて午後から登って来たそうだ。慣れれば黒戸尾根も楽だと言っていたが、私にはそんなことは絶対にあり得ない。ヘロヘロになりつつ、午後6時半に竹宇駒ケ岳神社に到着した。予定通りの12時間だった。

 昨年の8月にもこの黒戸尾根を下っているが、上部の高山植物も素晴らしいがそれ以上に黒戸山界隈の森が素晴らしかった。なんといっても圧巻のコイチヨウランの数である。そして今回は見つけることが出来なかったが、ミヤマフタバランという珍しい植物も確認している。夏か秋に再訪できればと思う。次は七丈小屋にお世話になることにしよう。
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甲斐駒ケ岳黒戸尾根のクモイコザクラ 

2017年06月04日 | 番外編
 情報をいただき、あの長い尾根を中腹までですが登って見てきました。


    見上げる甲斐駒ケ岳


    黒戸尾根のクモイコザクラ


    石碑とクモイコザクラ


    崖に咲くクモイコザクラ

 詳細は後日。
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