この彗星の情報を得たのは昨年12月のことだ。毎年購入するアストロガイド2013年版に記事が書かれていた。その時の予想では-1等星から-3等星くらいの明るさになる予測だったが、その後光度が上がらず最終的には2等星止まりとなってしまった。情報を得た当初から山梨で最初にこの彗星の写真を撮ってやろう、できるならば新聞に載せてやろうと思っていた。
南半球側からやって来るこのパンスターズ彗星は3月10日の近日点(太陽に一番近いところ)を通過した頃からようやく日本で観察可能な高度に昇って来る。とはいっても、西の低空5~10度なので条件が良くないと観察は難しく、月明かりの影響を受けず最も観察し易いのは13日から20日ごろまでと予想していた。
パンスターズ彗星の軌道(国立天文台ホームページから)
夕方のパンスターズ彗星の位置(同上)
3月13日頃にはおそらくたくさんの画像が出回っているだろうから、最初に狙ったのは近日点通過前日の3月9日、標高2,595mの金峰山山頂からの撮影を試みた。かなり太陽に近い位置を飛ぶが、計算上では日没後30分間はこの彗星を撮影するチャンスがあるはずだ。軌道はほぼ計算できたが、問題なのは彗星の大きさと明るさだ。それがわからないとどの程度の長さのレンズを使えば良いのかがわからない。結果は惨敗。17-55mmレンズを最大ズームの55mmにして撮り続けたが全く写ってくれなかった。今にして思えば、ズームが足りなかったこと、画像を明るく撮り過ぎたこと(+2/3EVで撮影)したことなどが反省点としてあげられるが、おそらくは撮影可能な条件だっただろうと思っている。
金峰山から見る日没後の夕空
55mmレンズで撮影し続けた夕暮れの空。甲斐駒ケ岳の右、中央アルプスの左端あたりに現れたはず。もっとズームをかけて狙っていれば撮れただろうと思っている。
次は3月11日、茅ヶ岳へ。ここは標高1,700mほどなので、金峰山よりも900mも低い。それでも、甲府盆地から見上げるよりも遥かに見通しは良いし、空気も澄む。天候が良かったので絶対に写ると信じてシャッターを切っていたのだが、いちばん肝心な時間の15分前に下から雲が湧き上がり、それっきり景色は見えなくなってしまった。しかし、撮って来た画像を念入りに見てみると、暮れたばかりの空にうっすらと彗星が写っていた。思ったよりも小さい、それと、思ったよりも高い位置にいる。この画像を見て、次は気象条件さえ良ければ絶対に撮影出来ると確信した。
茅ヶ岳から見る夕暮れの甲斐駒ケ岳。この空にうっすらとパンスターズ彗星が写っていた。
初めて撮影したパンスターズ彗星
前日の夕方も天候が良かったので、茅ヶ岳に登っていたならば撮影できた可能性が強い。しかし、先日の金峰山で強風に煽られてほとんど眠れず疲労困憊、とても登る気にはなれなかった。
そして3月12日は帯那山へ。あらかじめ軌道をしっかりと計算しておき、100mm程度のズームレンズで鳳凰山と軌道が入る構図でひたすらシャッターを切る。双眼鏡片手に探すが、光学系の暗い普通の双眼鏡では見つけることができない。空が暗くなり、頭上に冬の大三角形が見えるようになってきた頃、カメラのレンズが小さな光を捉えた。カメラのモニター上で拡大してみると、間違い無し、尾を引いたパンスターズ彗星だ。あとはレンズのズームを上げて追いかけるだけだ。肉眼では見えなかったが、カメラのファインダーを通してこの彗星をはっきりと見ることができた。この時撮影した1カットが2日後の山梨日日新聞に掲載された。
鳳凰山地蔵岳とパンスターズ彗星
南アルプスを舞うパンスターズ彗星
同上(トリ-ミング)
3月14日、山岳会の仲間と再び帯那山へ。この時肉眼で初めてオレンジ色に光る小さな点を見ることができた。
雲上のパンスターズ彗星
同上(トリ-ミング)
3月16日、白根三山に沈むパンスターズ彗星を狙って三ツ峠へ。位置的には隣の本社ヶ丸のほうが良かったのだが、時間的に間に合わずこちらに登る。低空には霞と雲が出たが、それを通して彗星はしっかりと輝いた。
白根三山を舞うパンスターズ彗星
農鳥岳に沈むパンスターズ彗星
富士山とこの彗星のコラボレーションを撮影するため、箱根の山はずっと狙っていた。そして3月19日、金時山へ。霞がかかり、富士山の裏側には雲が出て撮影条件は今までで最悪だったが、その中でも彗星は舞い降りた。
富士の上に現れたパンスターズ彗星
富士に舞い降りるパンスターズ彗星
その後甲府盆地の中にある職場の屋上から2度撮影を行っているが、盆地の中からだと霞みと町明かりに邪魔されて良くは写らなかった。
これらの映像をまとめて作製したのが「夕空を舞うパンスターズ彗星」のビデオだ。職場で試写会をやったが、プロジェクターの解像度が悪く富士に舞い降りて行くパンスターズ彗星はほとんど見えず、再編集を行った。3月30日の「山と花と星の奏でる上映会」で披露するが、会場に来られない方のために、先行して披露する。曲は加古隆の「黄昏のワルツ」、思わず涙が流れそうなノスタルジックな曲とともにパンスターズ彗星をお楽しみいただきたい。
夕空を舞うパンスターズ彗星
南半球側からやって来るこのパンスターズ彗星は3月10日の近日点(太陽に一番近いところ)を通過した頃からようやく日本で観察可能な高度に昇って来る。とはいっても、西の低空5~10度なので条件が良くないと観察は難しく、月明かりの影響を受けず最も観察し易いのは13日から20日ごろまでと予想していた。
パンスターズ彗星の軌道(国立天文台ホームページから)
夕方のパンスターズ彗星の位置(同上)
3月13日頃にはおそらくたくさんの画像が出回っているだろうから、最初に狙ったのは近日点通過前日の3月9日、標高2,595mの金峰山山頂からの撮影を試みた。かなり太陽に近い位置を飛ぶが、計算上では日没後30分間はこの彗星を撮影するチャンスがあるはずだ。軌道はほぼ計算できたが、問題なのは彗星の大きさと明るさだ。それがわからないとどの程度の長さのレンズを使えば良いのかがわからない。結果は惨敗。17-55mmレンズを最大ズームの55mmにして撮り続けたが全く写ってくれなかった。今にして思えば、ズームが足りなかったこと、画像を明るく撮り過ぎたこと(+2/3EVで撮影)したことなどが反省点としてあげられるが、おそらくは撮影可能な条件だっただろうと思っている。
金峰山から見る日没後の夕空
55mmレンズで撮影し続けた夕暮れの空。甲斐駒ケ岳の右、中央アルプスの左端あたりに現れたはず。もっとズームをかけて狙っていれば撮れただろうと思っている。
次は3月11日、茅ヶ岳へ。ここは標高1,700mほどなので、金峰山よりも900mも低い。それでも、甲府盆地から見上げるよりも遥かに見通しは良いし、空気も澄む。天候が良かったので絶対に写ると信じてシャッターを切っていたのだが、いちばん肝心な時間の15分前に下から雲が湧き上がり、それっきり景色は見えなくなってしまった。しかし、撮って来た画像を念入りに見てみると、暮れたばかりの空にうっすらと彗星が写っていた。思ったよりも小さい、それと、思ったよりも高い位置にいる。この画像を見て、次は気象条件さえ良ければ絶対に撮影出来ると確信した。
茅ヶ岳から見る夕暮れの甲斐駒ケ岳。この空にうっすらとパンスターズ彗星が写っていた。
初めて撮影したパンスターズ彗星
前日の夕方も天候が良かったので、茅ヶ岳に登っていたならば撮影できた可能性が強い。しかし、先日の金峰山で強風に煽られてほとんど眠れず疲労困憊、とても登る気にはなれなかった。
そして3月12日は帯那山へ。あらかじめ軌道をしっかりと計算しておき、100mm程度のズームレンズで鳳凰山と軌道が入る構図でひたすらシャッターを切る。双眼鏡片手に探すが、光学系の暗い普通の双眼鏡では見つけることができない。空が暗くなり、頭上に冬の大三角形が見えるようになってきた頃、カメラのレンズが小さな光を捉えた。カメラのモニター上で拡大してみると、間違い無し、尾を引いたパンスターズ彗星だ。あとはレンズのズームを上げて追いかけるだけだ。肉眼では見えなかったが、カメラのファインダーを通してこの彗星をはっきりと見ることができた。この時撮影した1カットが2日後の山梨日日新聞に掲載された。
鳳凰山地蔵岳とパンスターズ彗星
南アルプスを舞うパンスターズ彗星
同上(トリ-ミング)
3月14日、山岳会の仲間と再び帯那山へ。この時肉眼で初めてオレンジ色に光る小さな点を見ることができた。
雲上のパンスターズ彗星
同上(トリ-ミング)
3月16日、白根三山に沈むパンスターズ彗星を狙って三ツ峠へ。位置的には隣の本社ヶ丸のほうが良かったのだが、時間的に間に合わずこちらに登る。低空には霞と雲が出たが、それを通して彗星はしっかりと輝いた。
白根三山を舞うパンスターズ彗星
農鳥岳に沈むパンスターズ彗星
富士山とこの彗星のコラボレーションを撮影するため、箱根の山はずっと狙っていた。そして3月19日、金時山へ。霞がかかり、富士山の裏側には雲が出て撮影条件は今までで最悪だったが、その中でも彗星は舞い降りた。
富士の上に現れたパンスターズ彗星
富士に舞い降りるパンスターズ彗星
その後甲府盆地の中にある職場の屋上から2度撮影を行っているが、盆地の中からだと霞みと町明かりに邪魔されて良くは写らなかった。
これらの映像をまとめて作製したのが「夕空を舞うパンスターズ彗星」のビデオだ。職場で試写会をやったが、プロジェクターの解像度が悪く富士に舞い降りて行くパンスターズ彗星はほとんど見えず、再編集を行った。3月30日の「山と花と星の奏でる上映会」で披露するが、会場に来られない方のために、先行して披露する。曲は加古隆の「黄昏のワルツ」、思わず涙が流れそうなノスタルジックな曲とともにパンスターズ彗星をお楽しみいただきたい。
夕空を舞うパンスターズ彗星