平成21年10月24日 天候曇り
九州職員旅行3日目となる。前夜は由布院温泉秀峰館に全員集合し、夕食、および宴会後、2次会のカラオケに10時半までつきあって11時にはもう部屋でぐっすりと眠りについていた。明日は民芸村駐車場に12時15分集合なので、由布岳往復5時間プラス移動時間を考えると、今回登ることはないだろうと、職員誰もが、また私自身も思っていた。ところが・・・
夜中にパッと目が覚めて窓の外を見ると、由布岳の山影が暗く見える。あたかも「良い景色を見せてあげるから登っておいでよ」と私を誘っているかのように見える。時計を見ると時間は未明の3時、4時間ほどぐっすり眠ったことになる。星が出ていればこの時間に昇っているオリオン座を撮影するところなのだが、あいにく空はどんより曇り空で、星はひとつも見えない。一旦はベッドに戻って横になるが全く寝付けない。4時、もう一度窓の外を見て由布岳を見上げる。携帯電話で天気予報をチェックすると、曇りだが降水確率は20%だ。よし、行こう。ザックに荷物を詰め、余計な荷物はサブザックに入れてフロントに預け、添乗員の人に渡してバスに積んでもらうようにお願いした。タクシーを呼んでもらい、由布岳登山口に向う。

眼前に迫る由布岳東峰と西峰 由布岳の樹林帯を抜けたあたりから。

眼下の由布院の町と九重連山
到着したのは朝5時。まだ真っ暗でさすがにこの時間に登っている人はいなかった。どっちに山があるのかも全く見えないが、草原の中を数本の踏み跡が同じ方向に延びていた。ヘッドライト点灯して歩いて行くと、10分ほどでベンチやトイレのある分岐部に到着した。案内板で道を確認し、合野越からマタエに向うコースを進む。ところどころ石のゴロゴロした道ではあるが、全体的に歩きやすくて整備された道が続き、暗い中を初めて歩いたのだが迷うことなく歩くことができた。合野越を通過して6時を過ぎてもうすぐ樹林帯を抜けるあたりでヘッドライトをはずしていると、後ろから超特急の地元の登山者があっさりと私を追い抜いていった。日が昇るとたくさん人が詰めかけるので、早く登ったほうが良いとアドバイスを受けた。

マタエから見上げる西峰。左手に鎖場があるが、これを越えるとさらに厳しい鎖場がある。

こちらは東峰。急登だが普通に登れそう。
樹林帯を抜け、ススキ野原が広がるあたりでようやく双耳峰の山頂が間近に見えてきた。しだいに雲がまわりの山を覆い始めているが、前日登った九重山や阿蘇山の一部がまだ見えていた。ジグザグにつけられた良い道が続くが、マタエの直下あたりから傾斜の強い岩の多い道になる。そして7時10分、東峰と西峰のコルの部分、マタエに到着した。ひと息入れて山を見上げると、西峰には鎖がついているのが見える。東峰は見上げる限りでは急登ながら普通に登れそうだ。ここは標高の高い西峰に登ることにする。

由布岳西峰山頂

西峰から見る東峰。山一面がミヤマキリシマツツジにおおわれている。

山頂から見下げる中腹の紅葉と由布院の街
見えていた鎖は一部だけで、その先にはカニの横ばいのような10mほどの鎖場もあった。7時40分、山頂到着。その頃には由布岳にも雲が巻き始め、先ほどまで見えていた九重山は見えなくなってしまっていた。隣の東峰を見ると、斜面一帯が全てミヤマキリシマツツジの群落になっているようで、由布院の町から見ても花のシーズンには山がピンク色に見えるというのもうなずける。登って来る人の声が聞こえ始め、見下げるとマタエから7~8人のグループが東峰目指して登っているところだった。下山を始めると、西峰にも2人の単独登山者が登って来た。

中腹の紅葉と由布院

合野越から見る飯盛ヶ城と西登山道を示す看板
8時20分、マタエから下り始める。続々と登山者が登って来る。15人ほどのツアー客と思われるグループともすれ違った。小走りに下り、9時、合野越に到着した。順当に登山口に下りれば、タクシーを呼んで10時までにはホテルに到着できそうだが・・・。朝乗ってきたタクシーの運転手が、最近は西登山口はほとんど歩く人がいなくなって、今は道が無くなっているかもしれないと言っていたのを思い出す。そう言われるとついつい・・・行ってみたくなってしまう。合野越の分岐にはしっかりとした西登山口の表示板が立っている。時間はまだあるし、思い切って行ってみることにした。

西登山道上部から見上げる紅葉の由布岳

笹原をかき分けて道を進む。
少し進むと由布岳の絶好の展望台、おわんをひっくり返したような形の飯盛ヶ城の登山口があり、数人が登っている姿が見えた。右に曲がって石のゴロゴロした広い道を下って行くと、道は左右に分かれているが、看板はない。左に行くとこんもりとした笹山の尾根、真直ぐ行くと右下に林道が走っているのが見える。看板がないのだから真直ぐだろう、ということで林道まで下りてみると、水の汲める小川を横切り、その先に西登山道の道標があった。そこから先は笹薮の細い踏み跡になり、腰の高さほどある笹をストックでかき分けて道を確認しながら進む。途中で道を間違え、沢筋に下りそうになってしまったが、振り返って道を探すと、岩に黄色いペンキの矢印がついていた。

西登山道の笹原から見上げる由布岳。格好良い。

こんな恰好の良い岩もある。この日はこの道で一人も出会うことはなかった。
眼下に見える由布院の町を目指してひたすら歩くが、振り返って見る由布岳の姿が格好良い。紅葉もいちばん良い時期なのだが、天気が悪くて写真に撮っても鮮やかな色彩が出せないのが残念だ。笹原の中に巨岩が点々と立つこのルートは、由布岳撮影の前景には事欠かない。歩く人は少ないが、由布岳の眺望を楽しむには絶好のルートだと感じた。

林道を下りると由布岳登山口に行く大きな道に出た。ここにも西登山口を示す看板はなく、どうやらこの林道を行くのではないらしい。
さらに進むと林道に抜けた。林道からこのルートを示す看板は無く、どうやら間違った道を下りたようだ。確か、地図の道では町のはずれに抜けるはずだと思っていたのだが、その先の下り口がわからず、林道をそのまま下りて行くと、朝タクシーで送ってもらった道の途中に出た。ここでタクシーを呼び、ホテルに到着したのはちょうど10時だった。
改めて地図を見直してみると、西登山口はもっと北側を通っていたようだ。牧草地のような刈り払われた草地があったので、その横あたりを抜けてゆくのだろう。人気の高い由布岳はたくさんの登山者でごったがえしているが、このような静かなルートもあることを知った。私にしては少しばかりハイピッチの登山だったが、このルートを歩くことで山の素晴らしさを改めて知ることができた。やはり今日は山に呼ばれていたのだろう。
九州職員旅行3日目となる。前夜は由布院温泉秀峰館に全員集合し、夕食、および宴会後、2次会のカラオケに10時半までつきあって11時にはもう部屋でぐっすりと眠りについていた。明日は民芸村駐車場に12時15分集合なので、由布岳往復5時間プラス移動時間を考えると、今回登ることはないだろうと、職員誰もが、また私自身も思っていた。ところが・・・
夜中にパッと目が覚めて窓の外を見ると、由布岳の山影が暗く見える。あたかも「良い景色を見せてあげるから登っておいでよ」と私を誘っているかのように見える。時計を見ると時間は未明の3時、4時間ほどぐっすり眠ったことになる。星が出ていればこの時間に昇っているオリオン座を撮影するところなのだが、あいにく空はどんより曇り空で、星はひとつも見えない。一旦はベッドに戻って横になるが全く寝付けない。4時、もう一度窓の外を見て由布岳を見上げる。携帯電話で天気予報をチェックすると、曇りだが降水確率は20%だ。よし、行こう。ザックに荷物を詰め、余計な荷物はサブザックに入れてフロントに預け、添乗員の人に渡してバスに積んでもらうようにお願いした。タクシーを呼んでもらい、由布岳登山口に向う。

眼前に迫る由布岳東峰と西峰 由布岳の樹林帯を抜けたあたりから。

眼下の由布院の町と九重連山
到着したのは朝5時。まだ真っ暗でさすがにこの時間に登っている人はいなかった。どっちに山があるのかも全く見えないが、草原の中を数本の踏み跡が同じ方向に延びていた。ヘッドライト点灯して歩いて行くと、10分ほどでベンチやトイレのある分岐部に到着した。案内板で道を確認し、合野越からマタエに向うコースを進む。ところどころ石のゴロゴロした道ではあるが、全体的に歩きやすくて整備された道が続き、暗い中を初めて歩いたのだが迷うことなく歩くことができた。合野越を通過して6時を過ぎてもうすぐ樹林帯を抜けるあたりでヘッドライトをはずしていると、後ろから超特急の地元の登山者があっさりと私を追い抜いていった。日が昇るとたくさん人が詰めかけるので、早く登ったほうが良いとアドバイスを受けた。

マタエから見上げる西峰。左手に鎖場があるが、これを越えるとさらに厳しい鎖場がある。

こちらは東峰。急登だが普通に登れそう。
樹林帯を抜け、ススキ野原が広がるあたりでようやく双耳峰の山頂が間近に見えてきた。しだいに雲がまわりの山を覆い始めているが、前日登った九重山や阿蘇山の一部がまだ見えていた。ジグザグにつけられた良い道が続くが、マタエの直下あたりから傾斜の強い岩の多い道になる。そして7時10分、東峰と西峰のコルの部分、マタエに到着した。ひと息入れて山を見上げると、西峰には鎖がついているのが見える。東峰は見上げる限りでは急登ながら普通に登れそうだ。ここは標高の高い西峰に登ることにする。

由布岳西峰山頂

西峰から見る東峰。山一面がミヤマキリシマツツジにおおわれている。

山頂から見下げる中腹の紅葉と由布院の街
見えていた鎖は一部だけで、その先にはカニの横ばいのような10mほどの鎖場もあった。7時40分、山頂到着。その頃には由布岳にも雲が巻き始め、先ほどまで見えていた九重山は見えなくなってしまっていた。隣の東峰を見ると、斜面一帯が全てミヤマキリシマツツジの群落になっているようで、由布院の町から見ても花のシーズンには山がピンク色に見えるというのもうなずける。登って来る人の声が聞こえ始め、見下げるとマタエから7~8人のグループが東峰目指して登っているところだった。下山を始めると、西峰にも2人の単独登山者が登って来た。

中腹の紅葉と由布院

合野越から見る飯盛ヶ城と西登山道を示す看板
8時20分、マタエから下り始める。続々と登山者が登って来る。15人ほどのツアー客と思われるグループともすれ違った。小走りに下り、9時、合野越に到着した。順当に登山口に下りれば、タクシーを呼んで10時までにはホテルに到着できそうだが・・・。朝乗ってきたタクシーの運転手が、最近は西登山口はほとんど歩く人がいなくなって、今は道が無くなっているかもしれないと言っていたのを思い出す。そう言われるとついつい・・・行ってみたくなってしまう。合野越の分岐にはしっかりとした西登山口の表示板が立っている。時間はまだあるし、思い切って行ってみることにした。

西登山道上部から見上げる紅葉の由布岳

笹原をかき分けて道を進む。
少し進むと由布岳の絶好の展望台、おわんをひっくり返したような形の飯盛ヶ城の登山口があり、数人が登っている姿が見えた。右に曲がって石のゴロゴロした広い道を下って行くと、道は左右に分かれているが、看板はない。左に行くとこんもりとした笹山の尾根、真直ぐ行くと右下に林道が走っているのが見える。看板がないのだから真直ぐだろう、ということで林道まで下りてみると、水の汲める小川を横切り、その先に西登山道の道標があった。そこから先は笹薮の細い踏み跡になり、腰の高さほどある笹をストックでかき分けて道を確認しながら進む。途中で道を間違え、沢筋に下りそうになってしまったが、振り返って道を探すと、岩に黄色いペンキの矢印がついていた。

西登山道の笹原から見上げる由布岳。格好良い。

こんな恰好の良い岩もある。この日はこの道で一人も出会うことはなかった。
眼下に見える由布院の町を目指してひたすら歩くが、振り返って見る由布岳の姿が格好良い。紅葉もいちばん良い時期なのだが、天気が悪くて写真に撮っても鮮やかな色彩が出せないのが残念だ。笹原の中に巨岩が点々と立つこのルートは、由布岳撮影の前景には事欠かない。歩く人は少ないが、由布岳の眺望を楽しむには絶好のルートだと感じた。

林道を下りると由布岳登山口に行く大きな道に出た。ここにも西登山口を示す看板はなく、どうやらこの林道を行くのではないらしい。
さらに進むと林道に抜けた。林道からこのルートを示す看板は無く、どうやら間違った道を下りたようだ。確か、地図の道では町のはずれに抜けるはずだと思っていたのだが、その先の下り口がわからず、林道をそのまま下りて行くと、朝タクシーで送ってもらった道の途中に出た。ここでタクシーを呼び、ホテルに到着したのはちょうど10時だった。
改めて地図を見直してみると、西登山口はもっと北側を通っていたようだ。牧草地のような刈り払われた草地があったので、その横あたりを抜けてゆくのだろう。人気の高い由布岳はたくさんの登山者でごったがえしているが、このような静かなルートもあることを知った。私にしては少しばかりハイピッチの登山だったが、このルートを歩くことで山の素晴らしさを改めて知ることができた。やはり今日は山に呼ばれていたのだろう。