山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

山の神様への捧げもの、そして神様からの贈り物 金峰山(後編)

2010年03月25日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成22年3月21-22日

 前日強風を押して金峰山山頂に到着したのは午後4時半。テントを設営して星空を待つが、雲が巻き小雪舞う天候となり、8時半には眠りについた。目が覚めたのは11時半、肩のあたりが寒くて目が覚めた。気温を見ると、テントの中で-10℃(あまりあてにならない温度計だが・・・)、思ったよりも冷え込んだ。テントの換気窓から外を見ると相変わらずの真っ白な空模様で、星はひとつも見えない。シュラフとシュラフカバーの紐を締めなおして首周りをしっかりと閉じ、また寝る。
 次に目が覚めたのは午前1時45分。目覚ましをかけたわけではないのだが、今までの経験からしても睡眠薬を使った時はたいてい4~5時間で目が覚めるのだ。再び換気窓から外を見ると・・・今度は星が見えている。良く見ると昇ってきているのはさそり座だ。ちょうど縦位置に頭を持ち上げ、もうすぐ尻尾まで昇って来るところだった。富士山は・・・何となく霞んでいる。天の川を撮るにはまだ1時間ほど時間が早い。まずはバーナーを焚いて暖をとり、撮影に備えて持ってきた全ての服を着込む。外はまだ風が強く、体感温度は-15℃以下になるが、意を決してテントの外に飛び出し、空を見上げる。満天の星空、とまでは行かず、若干霞がかかっているようで天の川はすっきりとは見えてくれなかった。

    富士山の東側に昇ってきたさそり座  低~中空の霞が邪魔になる。


    こちらは八ヶ岳。双子座と火星が沈んでゆくところだったが、山頂には雲がかかり、スキー場の明りが明るすぎて絵にならない。オレンジ色の明りがキッツメドウズ、緑色が富士見パノラマスキー場。


    五丈岩の上に沈む春の大三角形  どれだかわかりますか?今は三角形のすぐ下に土星が輝いている。


    山頂側に昇ってきたはくちょう座と夏の大三角形  この季節、一晩で冬、春、夏の三つの大三角形を見ることができる。ただし、睡眠時間が・・・

 山頂側に行ってみると、ちょうど春の大三角形が五丈岩の上に沈みかけているところだった。寒さと強風に耐えながら、五丈岩と山頂のあたりをうろうろと三脚とカメラを担いで歩き回る。南東側に昇って来たさそり座はやがて富士山頂を越えて南に傾き出す。それに伴って天の川の最大部分がはっきりと見えるようになり、さらに夜明けが近付くとともに空気が冷え、低空をおおっていた霞が沈んで富士山がはっきりと確認できるようになってきた。昨年は見ることができなかったさそり座と富士山の上を流れる天の川の情景、今年は見ることができた。そして、薄明の空が真っ青に映るほんの10分ほどの時間帯、まさに見たかった五丈岩に傾くさそり座、そして真っ青な空を流れ行く天の川、まさに見たかった情景が目の前に広がった。強風に耐えて前日登って来た甲斐があった。神様への捧げ物のお返しにこの素晴らしい景色を贈ってくれたのだ。山の神様に深く感謝した。

    富士山上を流れる天の川  しだいに空気が澄み、天の川と富士山がはっきりと見えるようになってきた。


    薄明の空に流れる天の川  見たかった情景はまさにこれ。山の神様の贈り物。


    五丈岩と甲府盆地の夜景


    夜明けの五丈岩と富士山


    夜明けの富士山


    朝日射す五丈岩と南アルプス


    同上、富士山

 そしてやがて日が昇る。すっきりと晴れた空、風はまだ強いが今日は良い天気だ。すっかり満足してテントに戻り、残っていたパンを1個食べてテントを撤収する。時間はまだ7時半だが、さっさと下山にとりかかる。それは急いで下りるのではなく、稜線からの眺望を存分に楽しみつつ、朝の斜光線のうちに写真を撮りたかったからだ。三脚を出したりしまったり、存分に朝の景色を楽しんでから下山した。

    南アルプスの眺望  五丈岩南側、テントの前からの風景。


    八ヶ岳とミズガキ山の眺望


    金峰山の雪屁と南アルプス

 ほとんど直線的に山の斜面を下りることができるので、雪道の下りは楽だ。しかし、注意すべきはアイスバーンだ。大日岩から下の大日小屋に至るまでの林の中は、ほとんどがカチンカチンに凍りついたアイスバーンになっていた。アイゼンを思い切り蹴りこみながら、木の枝や根につかまりつつ慎重に下る。9時半ごろに大日小屋あたりを通過したが、その時間には金峰山目指して登って行く人たちとたくさんすれ違った。この日はきっと登った人たちはその眺望に歓喜したことだろう。富士見平で車の中で飲む水を汲みに水場に立ち寄ったが、その際にアイスバーンで見事にスリップ、仰向けに倒れる。さらに水を汲んで振り返って歩き出すときにまたしてもすってんころりん。こんなところまで下りてきてから転ぶとは・・・山の神様のたわむれか?苦笑いしながらザックを再び背負い、下山。11時10分、駐車場に到着した。
 何度登ってもその眺望の良さに圧倒される冬の金峰山。特に今回はようやく見ることができた天の川とさそり座に大満足した。強風下のテント泊はやや危険ではあるが、このような天候の時こそが星空撮影のチャンスでもあるのだ。今回も無事に山行を終えることができ、また素晴らしい風景を見せてくれた山の神様に感謝するばかりだ。
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山の神様への捧げもの、そして神様からの贈り物 金峰山(前編)

2010年03月23日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成22年3月21-22日

 毎年冬の恒例になりつつある金峰山。奥秩父随一といわれるこの山からの眺望は何度登っても飽きることがない。そしてその山頂に位置する五丈岩の圧倒される威容さ、長く山岳信仰の山として聳え、今でも山伏たちが修行に訪れるのも十分にうなずける。昨年4月、この山の山頂にテントを張った。狙ったのは五丈岩に傾くさそり座、そしてその尻尾のところにある天の川が富士山の上に流れ行く情景だ。しかし、この時は低空に大きな霞と雲が出て、とうとう富士山は姿を現さなかった。1年越しの思いを胸に、再び金峰山に登る。
 3月21日は強風吹き荒れる悪天候、前日の天気予報でも再三にわたって強風・突風に注意との予報が流れていた。普通ならばこんな時に標高2,600m近くある山などには登らないもの、しかもその強風吹く山頂にテントを張ろうなどと誰が思うだろうか。しかし、写真家としての経験と勘だろうか、このような荒れた天候の後は空の霞が飛んで凄い星空になることがしばしばだ。山の神様が呼んでいる、天気予報を見ながらそんな気がしてならなかった。午後からは天候回復し、翌日は晴れるとの予報であり、遅めの10時過ぎに瑞牆山荘の駐車場から歩き始めた。空にはゴーゴーという風の音が響き渡る。1時間で富士見平小屋到着、いつもなら連休となれば数張りは張られているテントが、この日は一張もない。さらに1時間で大日岩小屋、ここにも宿泊客やテントの様子はない。誰も歩いていないのかと思いきや、2~3人の新しい足跡が雪の上に残されており、入山者がいることは確実だ。

    大日岩  3月だというのにここに雪が無い。

 大日岩手前の樹林帯から登山道はアイスバーンとなり、6本歯アイゼンを装着。最も酷いのは大日岩小屋から大日岩に登りつくまでの樹林帯の中だ。ツルツルのアイスバーン、しかも急斜面、アイゼンを思い切り蹴りこみながら登る。大日岩を過ぎた樹林帯の中で、下山してくる2人連れと出会う。強風のため山頂までは行かなかったらしく、千代の吹上から先は吹き飛ばされそうな風が吹いているという。さらに進むと、もう2人とすれ違い、さらに千代の吹上まであと少しというところで単独の若者と出会った。装備からしてテント泊、おそらくは金峰山荘泊りだろう。山上の様子を聞くと、朝は本当に立っていられないくらいの強風だったが、しだいに風が止んできて普通に歩けるようになってきたという。念のためピッケルを装備してきたが、どうやら使わずに済みそうだ。

    千代の吹上から見上げる金峰山  風はなんとかなりそうだ。


    岩峰の彼方の富士山  空が晴れ、うれしいことに富士山が見えるようになってきた。明日への期待が膨らむ。

 途中で昼食をとり大休憩したこともあるが、千代の吹上には午後2時40分に到着した。確かに風は強いが、普通に歩くことができ、また三脚を立てることもできる。しかし、岩の先まで行くと谷から吹き上げてくる風は強烈、目が開けていられない。うれしいことに、朝はどんより雲がかかっていた空はしだいに晴れてきて、富士山が見えるようになってきた。思わず微笑がこぼれる。千代の吹上から五丈岩までの稜線は金峰山の中で最も眺望の楽しめる場所だ。なんとか凌げそうな風だったので、ここからは三脚を担ぎながら、撮影を楽しみつつ歩く。

    雪の向こうの富士山


    眼前に近づく五丈岩  今年は雪が少なく、ハイマツが大きく露出しているばかりか、ハイマツの中の夏道までが露出していた。

 山頂の五丈岩に到着したのは4時半。もちろんこの時間にはもう誰もいない。テントはこの岩の裏側に張ることを最初から決めていたので、そちらに移動する。そこには祠が祭られている。今回は特別な捧げものを持ってきていた。それは、私のブログファンの女性から頂いたドライフルーツ。写真を数枚送ってあげたところ、お礼にドライフルーツの詰め合わせセットをいただいた。甘い良い香りのするこの贈り物、香りだけ楽しんで山頂まで食べずに持ってきたのだ。そして真っ先に神様の祭られる祠にこの贈り物を捧げた。そしてテントを張るのだが、強風に煽られて何度となくテントがひっくり返ってしまう。大き目の石に固定紐を縛り付けてなんとか固定して寝られる状態になった。さらに、真黒な雲が迫ってきたかと思ったら今度は小雪が舞い出す。山の神様は捧げものが気に入らないのか?そして鳥居のある五丈岩山頂側に戻ってみると・・・鳥居の向うの岩にもうひとつ祠があった。こちらにも捧げものを捧げる。ただし、いちじくは1個しか持って来ていなかったので、神様と半分ずつ。いつも私を守ってくれる山の神様に感謝を捧げ、そしてこの贈り物をくださった方の健康と幸せを願いつつ、祈りを捧げる。

    甲府盆地側から見上げる五丈岩  この岩の根元に祠があり、その手前にテントを張れるスペースがある。


    山の神様への捧げもの  香りの良いドライフルーツの頂き物。


    五丈岩と富士山。明朝はこの位置からさそり座と天の川を狙う。この後、山頂には小雪が舞い始める。

 一旦テントに戻って食事をとって休憩する。すっかり夜が暮れた7時頃、オリオン座と冬の大三角形が南中しているのがテントの換気窓から見える。見たかったカノープスは低空の霞と雲に隠れて見ることができない。富士山も同様だ。外に出てみると細い月が西の空に傾いていた。五丈岩を入れつつ月とオリオン座の撮影を試みるが、まだ位置が高くて17mmレンズの視野では入りきらない。オリオン座の上部が切れてしまうのだ。あと15分か20分待てばちょうど良い位置に来そうだ。寒い山頂の雪の中でじっと待つが・・・雲が湧いてその後月が姿を現すことはなかった。

    月光照らす五丈岩  五丈岩の上のオリオン座は上部が切れてしまっている。もう少し待てば画角の中に入ってくるのだが・・・


    五丈岩の上に輝くおおいぬ座のシリウス  雲が多くなり、そのまま回復せず。本日はここまでであきらめる。

 8時、テントに戻り、寝る準備をする。再び小雪が舞い始め、あたりは真っ白になり、甲府盆地の明りすら見えなくなってしまう。明日の朝は果たして星は見えるのだろうか?しかし・・・きっと出る、良い景色が見られる、そんな確信めいたものを抱きつつ、8時半には眠りについた。(後編に続く。)
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桜色舞うころ 春の甲府盆地散策

2010年03月20日 | 番外編
 平成22年3月17日

 「桜色舞うころ 私はひとり
 押えきれぬ胸に 立ち尽くしてた」

 中島美嘉の曲「桜色舞うころ」の一説である。

 春めいた甲府盆地にはちらほらと桜が咲き始めた。年をとって山歩きができなくなってから撮影しようと封じ込めていた桜の写真だったが、最近少しばかり考えが変わってきた。それは昨年12月から始めたスライド上映会と音楽会だ。かつては山の上に行って良い情景を撮影して帰ってくるというのが私のスタイルだったが、音楽会と上映会を組み合わせることによって、今度はこの曲に合わせてこういうイメージの写真を撮ろうというように変わってきた。かつては邪魔でしょうがなかった森の木々も「となりのトトロ」の曲に合わせて「妖精の住む森」のイメージを撮影するようになり、森の中の写真も全く違和感無く撮れるようになってきた。音楽会がきっかけとなり、大きな変貌を遂げつつある。今回の桜や花の映像もそのような変貌の一環である。が、撮影しながら何か違和感を感じてしまうのは、まだ未熟な証拠なのだろう。
 3月に入ってから気持ちを入れ換え、体重を落として血糖値を下げるため、暇さえあれば甲府の町を歩くという日々を送っている。おかげで4kgの減量に成功、さらに目標はあと3kgの減量である。いつもはカメラは持ち歩かないのだが、暖かい春の陽射しが差し込む今日この頃、桜がちらほらと咲き始めていたので、愛用の1.8kgの三脚とCanon Eos40Dをぶら下げて、散歩に出かけた。目指すは酒折、山梨学院大学近くにある山梨トヨペット。車の点検と修理のため午前中に出した車を歩いて取りに行こうというのだ。普通に歩けば6kmくらいの行程だが、愛宕山中腹から能成寺、東光寺、善光寺、さらに不老園を回って行こうと思っているので、8kmくらいの行程になるだろうか。散歩にはちょうど良い。

    愛宕町の神社近くに咲いていたすみれ。前日撮影。


    同上近くの畑にに咲いていた白い花。名前は知らないが栽培種だろう。

 前日の昼休みにも愛宕町あたりを散策しており、すみれや見たことのない花が咲いていて、春の気分を満喫。おかげで昼食をとる時間が無くなってしまい、コンビニでパンを買って歩きながら食べて職場に戻ることになってしまった。本日は午前の業務を終え、特別なことがなければ午後は何もない・・・はずだった(後述)。

    桜の花(ソメイヨシノ)がほころびかけた武田通り(甲府駅の近く)


    愛宕町中腹のしだれ桜はまだつぼみ。向こうに見える山は鳳凰山。


    愛宕町中腹のこぶしは満開、梅の花はもうそろそろ終わりだ。


    愛宕山東側のぶどう畑。斜面には赤紫色の花が一面に咲く(花の名前は知らない)。

 愛宕町から愛宕山中腹をぐるりと回りこんで東側のブドウ畑に回りこむ。ブドウの葉はまだ出ていないが、畑の斜面には紫色の小さな花が一面に咲いている。ブドウ畑の中の道を通って降りてゆくと、そこには甲府五山(といっても山ではなくお寺)のひとつ、能成寺が立っている。その横に細い道がありそこには天然記念物の大サカキの神木が立っている。以前甲府五山周遊した際にもここを歩いている。能成寺に立ち寄ると、庭には満開のこぶしの花が真っ白に見事に咲いていた。

    稲荷神社の天然記念物大サカキ


    能成寺のこぶしは満開。この大きな木に鈴なりに花が咲いている様は見事。

 さらに東光寺側に歩いて行くと、左手にピンクの桜がほころんでいるお寺があった。帰命院というお寺で、立ち寄るのは初めてだ。しだれ桜が八部咲きのちょうど見頃の時だった。あまり撮ったことのないない桜の木、フラッシュを焚いたりPLフィルターをかけたりといろいろやってみるが、まだ何となくしっくりとこない。未熟な証拠、もっと勉強せねば。

    帰命院  しだれ桜とこぶしが見ごろだった。


    帰命院のしだれ桜とこぶし  手前の桜に日が入らないため、フラッシュ同調で撮影。


    見ごろのしだれ桜  向こうに小さく見えるのが善光寺。


    帰命院境内のしだれ桜  大きくて見事な木。空とのコントラスト強調のためPL filter使用して撮影。

 さらに東光寺に立ち寄り、善光寺に到着したところで時間は2時半、昼食がまだだったのでさすがに腹が減った。善光寺でソフトクリームとおやきを食べて酒折駅方面に向って歩いているところで電話が鳴った。職場からの緊急呼び出し。タクシーを拾うにもこのあたりはあまり走ってこない。急いで山梨トヨペットまで行き、修理の状況説明などすべて省略して、お金だけ払って急いで職場に戻った。着いた時には・・・もう既に処置を終えた後だった。本来は私がやるべき仕事、変わりにやってくれた人たちにただただ感謝するばかりだ。

    東光寺の鐘と本堂


    庭園のかりんの木は葉が出始めたばかり。もう少し左に振って右手の竿を避けたかったが、太陽があってもろにフレアが出てしまう。


    善光寺の桜  あまり大きな木ではないが、ローアングルにすると巨木のように見える。

 「桜色舞うころ 私はひとり
 あなたへの思いを かみしめたまま」

 5月、いよいよ職場から飛び出して、某レストランを借りてスライド上映会&音楽会を計画している。正式に決まり次第ブログ上でも報告するので、興味のある方、是非ご来場いただきたい。
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天の川流れる八ヶ岳北横岳(後編)

2010年03月19日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成22年3月14日

 前日は雲と強風吹き荒れる荒れた天候だった八ヶ岳だったが、夜が更けるとともに空には満天の星が広がった。目覚ましを未明3時15分にセットしたが、2時半に目が覚めた。風の音がするが、前日に比べるとかなり穏やかになっている。同室の人たちに迷惑にならないように、そっと布団をたたんでザックを持ち、談話室に下りた。まずは朝食。シュラフとテントは下ろしてきたが、食料はそのまま持ってきてしまったため、約6食分の食料がザックの中に入っていた。いつものラーメンと、コンビニで買ってきたサラダをラーメンの中に入れて煮込んで食べる。アイゼン、スパッツ装着し、3時20分、いざ出陣。

    樹氷の森を流れる天の川


    さそり座と天の川
 穏やかとはいえないが、風はだいぶ収まっており、風が吹いたおかげで霞が飛んできれいな星空が広がっていた。樹氷の情景を入れつつ、かつ南八ヶ岳が見える場所を探しながら山頂目指して歩く。さそり座がちょうど頭を西の方角に傾け始めたところで、その尻尾のところに天の川最大部分が雲のように白く延びている。その帯を追いかけてゆくと、白鳥座と夏の大三角形が北東の空高く昇っているのが見える。毛無山に次いで、今回も願いに叶った良い星空を見ることができた。夜明けが近付くとともに深い青色に写る空、そして二十八夜の細い月が夜明けのオレンジ色の空に昇り、日の出を迎える。山上には私ともう1人、ヒュッテで写真談義にふけった名古屋から来られた常連の方。カメラ技術も経験も私よりも遥かに上で、このような方から写真の話を聞くとまた新しい写真のイメージが湧いてくる。まだカメラを持って5年に満たない私にはこのような出会いが本当に大切なのだ。

    樹氷の森に昇るはくちょう座と天の川


    天の川流れる八ヶ岳  15mm diagonal fisheye


    樹氷の彼方の夜明け


    樹氷の森の夜明け  二十八夜の細い月が昇る。フラッシュ同調。


    樹氷の森の日の出


    朝日射す樹氷の森  左が南アルプス、右が中央アルプス。


    嵐去りて  左が八ヶ岳、右が南アルプス。 PL filter使用

 天の川流れる八ヶ岳の空と朝の樹氷の情景を十分に楽しんだ後、ヒュッテに戻り談話室に立ち寄る。ご主人さんが温まってゆくようにと暖かく迎えてくれた。十分に暖をとった後、今度は三ツ岳に寄ってみることにした。ご主人さんの写真の中に、三ツ岳にある剣の先のような尖った格好の良い岩の写真が納められていた。これは是非見に行かなくてはならない。7時20分、小屋を出発、前日三ツ岳方向へのトレースがあるのを確認していたのでそのトレースに沿って進む。途中で前夜の強風のためトレースが不明になってしまっている場所があったが、見渡すと木の枝にテープがあり、そちらに進むと再び明瞭なトレースに出くわした。三つ岳直下の鎖場をよじ登ると、その上に道標あり、さらにその先にあの格好の良い岩があった。途中で何度か三脚を立てて撮影しながら来たが、それでも1時間とかからずにこの岩に到着した。

    三つ岳山頂付近の岩氷と蓼科山  強風でエビのシッポはだいぶ吹き飛んでしまっている。


    三つ岳から見る縞枯山と坪庭。山は左が八ヶ岳、右が南アルプス。


    三つ岳の岩と浅間山


    同上、角度を変えて。たぶんこの角度なら岩の真上に北極星が・・・

 さて、この先どうするか?雨池山を越えて雨池峠まで行けるのだが、小屋の常連さんたちの情報によると、冬季はこの先を歩いている人が少なく、道が不明瞭、かつラッセル覚悟で臨まなければならないという。下を見ると、下りはかなりの急傾斜、登り帰すのは辛そうだ。下りたら先に進むしかない。さらに遠くを見やると、緑色のテントが張ってあるのが見えた。おそらくそこが雨池峠、坪庭のいちばん端のところだ。天気が良くこれだけ眺望が良ければ、さほど迷うことはないだろう。その先に行ってみることにした。

    雨池山山頂から見る三つ岳

 ここから先は情報どおり全くトレースは無かった。急な斜面をズルズルと半滑りしながら下り、一旦緩い登りになってそしてまた急下りだ。下りきったところが雨池山の取り付きになっており、今度は緩くて長い登り、しかも膝あたりまでのラッセルの道が続く。あるのは動物の足跡だけ、しかし、心配していた道迷いは、思ったよりも広く切り開かれた森と、ところどころにつけられたテープのおかげで全く心配はなかった。かなりラッセルした気がしたのだが、1時間とかからずに雨池山の山頂に到着した。立ち枯れの木の向うに北横岳や越えてきた三ツ岳が見える。さらにピークを越えてもその先またラッセルが続く。と思ったら、若者の声が聞こえ出した。雨池峠側からテント泊の2人連れが登って来たのだ。ラッキー、やっと踏み跡を踏んで歩けるぞ。すれ違いざま挨拶し、お互いにラッセルで疲れたなどというたわいない話をして別れる。2人のトレースを踏んで進むと、10分ほどで雨池峠への急下りにさしかかった。ここからは雪が固まっていて歩きやすくなっていて、ほどなく雨池峠に到着した。

    雨池峠への下りから見る縞枯山と中央アルプス


    ピラタス蓼科ロープウェイ山頂駅。その向こうは御嶽山。

 ここから先はスノーシューや一般の登山者が歩いたトレースで道はしっかりと踏み固められていた。左手に縞枯山の美しい樹氷の風景を見ながら進むと、縞枯山荘が右手に現れそれを過ぎるとほどなくロープウェイ山頂駅に到着した。駅の前では前夜ヒュッテで一緒だった中高年グループの人たちと一緒になり、本日の行程を尋ねたところ三ツ岳までピストンして下山してきたという。私の歩いたトレースがあって助かったと感謝され、ちょっとばかりうれしかった。10時50分のロープウェイに乗り、11時無事駐車場到着。
 初日はどうなることかと思ったが、山の神様に好かれているのか、今回も素晴らしい星空を見ることができた。そして久々の山小屋泊まり、親切にしていただいた北横岳ヒュッテの皆様、そして小屋の常連の皆様、良い出会いがあり、楽しい山行ができた。感謝である。
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天の川流れる八ヶ岳北横岳(前編)

2010年03月16日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成22年3月13日

 数日間不順な天候が続き、前日は一時回復したもののこの日は再び暗い雲が空をおおっていた。1ヶ月前に中山で見た樹氷の情景が頭から離れず、あの樹氷の森の上に昇る星空を撮りたいとずっと思っていた。今シーズンは今回が最後のチャンスとなるかもしれない。行き先は北八ヶ岳と決めていたが、どこに行くか・・・天候が心配だ。
 車を奥蓼科温泉渋の湯に向けて走らせるが、八ヶ岳中央高原あたりから見上げる八ヶ岳は暗い雲におおわれ、さらに雨が降り出した。テントを張るには最悪の状況、かつ、山の上は風が吹き荒れていることだろう。ならば、行き先を変更、ピラタス蓼科ロープウェイに向かい、北横岳に行くことにした。ロープウェイ駅の下で北横岳ヒュッテに電話すると、この日は満室だが1人ならなんとかしてくれると、快く宿泊させてもらうことになった。ここでも天候は小雨。気温は3℃、おそらく上は雪だろう。テントとシュラフを置いて12時にロープウェイに乗り込み出発した。

    ロープウェイ山頂駅を降りたところ。霧でまっ白。


    坪庭の途中。風が強く、岩も看板も凍りつく。

 ロープウェイ駅を降りると、雨こそ降っていないものの、そこは真っ白な世界。雪だけではなくて霧だ。やや強い風も吹いている。北横岳を目指すグループが2~3グループ私の前を歩いていた。気温は-5度くらいだろうか。さほど寒くはないが、辺りの木や岩はみんな凍りついていた。登って行く人たちは皆アイゼン装着していたが、アイスバーンになっている様子は無かったので私はアイゼン装着せずに団体のいちばん後について歩き始めた。さほど急ぐ路ではなかったのだが、他のグループが休憩している間に追い抜いてしまい、先頭から2番目で歩くようになっていた。坪庭を通り過ぎると樹林帯の中のジグザグな道となるが、雪道にしては驚くほど整備され、かつ踏み固められていた。この山の人気の高さが伺える。三ツ岳、雨池峠方面への分岐を過ぎて進んで行くと、霧の向うに小屋が見えてきた。1時間とかからずにあっけなく北横岳ヒュッテに到着した。こんなに近いとは・・・ちょっと拍子抜けした。

    北横岳山頂。立っていられないほどの強風が吹き荒れ、機関銃のような雪のかけらが飛んでくる。すぐに撤退。


    下りながら7~8人の人たちとすれ違った。宿泊客ではなく、本日下山する人たちだった。悪天候で寒そう。

 小屋に荷物を降ろして三脚と飲み物、おやつだけ持って、撮影場所を見ておくために山頂に向った。ここから15分ほどで山頂に到着するが、傾斜がかなり急になる。高度を上げるたびに風が強くなり、さらに山頂に抜けるとそこは・・・立っていられないほどの物凄い風が吹き付け、機関銃のような雪のかけら(木についた樹氷や積もった雪が風に舞って飛んでくる)が顔に吹き付ける。とても展望をみるどころの騒ぎではなく、三脚を立てようとするとあっという間にカメラとレンズに氷の膜が張ってしまい、写真にならない。早々に山頂から撤退して小屋に戻る。
 北横岳ヒュッテのご主人さんは写真好きの人で、小屋の休憩室にはアルバムがたくさん置かれていた。フィルムのものが多いが最近の作品にはデジタルのものもあり、星空の写真もたくさん納められていた。今回私が狙っている八ヶ岳の上に出るさそり座と天の川、そして樹氷の森に登る星々の画像もあり、私が撮りたいと思っていた風景はほとんどそのアルバムの中に入っていた。若干違うのは、レンズF2.8開放で撮影する星の多さくらいだ。撮影場所、時期、撮影法などを詳細に聞き、明日の星空に思いを馳せる。しかし、天気予報では明日は晴れだが、この空模様で星は出てくれるのだろうか?不安も若干はあったが、何度もこのような天候の経験がある私は、きっと凄い星空になる、という何か確信めいたものを胸に抱いていた。

    北横岳ヒュッテの夕食は鱈と肉の鍋。山小屋でこんな食事にありつけるとは驚き。ちなみに夏場はすき焼きだそうです。一度は泊まる価値あり。

 6時、夕食。食卓についてびっくり、何だ、この夕食は!鱈と肉の鍋だ。山小屋でこんな食事には出会ったことがない。常連さんたちがたくさん集うこのファミリアルな雰囲気もなかなか良かった。出汁の味も最高だったのだが、いかんせんこの日は運動量が少なすぎ、ほとんど腹が減らない。すぐにお腹がいっぱいになってしまった。

    夜8時頃の空はまだ雲が多く、時折星が見える程度だった。しかし・・・

 食事を終え、談話室でご主人さんや常連の人たちと山談義や写真談義にふけり、あっという間に夜8時を回る。外に出て空を見上げると、時々雲間から星が見え隠れし、昼間に比べるとずいぶんと天候は回復してきていた。明日は3時起床の予定なので、9時には寝ようと思い、8時半に睡眠薬を内服した。約30分で効果が出てくるはずなので、その間に数カット撮ろうと、三脚とカメラを持って外に出て星が出るのを待つ。すると、しだいに雲が晴れ始め、オリオン座や冬の大三角形が見えるようになってきた。そして小屋の消灯時間を過ぎた9時過ぎ、空一面に凄い星空が広がった。オリオン座と冬の大三角形が小屋の上に沈んで行く。東には春の大三角形の一角、アルクトゥールスが明るく輝く。睡眠薬の眠気が吹き飛んでしまい、結局9時45分ごろまで1人小屋の周りをうろうろ、撮影に熱中してしまった。

    樹氷の上に昇るオリオン座と冬の大三角形  夜9時ごろから雲が飛び、満天の星空が広がる。眠るのが惜しい夜空になってしまう。


    ヒュッテの空に傾くオリオン座と冬の大三角形

 眠らないと翌日に応えるので、寝るのが惜しい気持ちを抑えつつ、自室に戻って眠りに着いた。明日の星空を思いつつ、目覚まし時計は3時15分にセットした。
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