新春にダイヤモンド富士が見られることで多くの登山者が訪れる竜ヶ岳。もう何度も登っているが、今回どうしても欲しかった画像はダイヤモンド富士のカットでは無く、連続撮影で撮った映像をつなぎ合わせて作る動画だ。2月にスライド上映会をやろうと職場のメンバーたちと相談しており、日程を詰めているところ(おそらくは2月9日の土曜日になると思われる)である。その際に、おそらくは見たことが無いであろうダイヤモンド富士の映像、特に山頂が輝き出してチカッと光り出すあの感動的な景色を表現できたらと思っている。
平成25年1月2日‐3日
テント泊で登るような山ではないのだが、極大に1日早い四分儀座流星群が観察できるかもしれない。さらに、雨ヶ岳からは見えなかったカノープスが駿河湾の上で輝いているのが見えるかもしれない。星空の観察も兼ねて、さらに冬山トレーニングも含めてテント装備を担いで午後4時半に本栖湖キャンプ場を出発する。
駐車場に止まっている車は数台のみ。テント泊の人はいないようだ。
新しく道路が通ったために入口がややわかりにくくなった竜ヶ岳。夜だと迷いそうだ。
中腹の石仏がある休憩所に着いた頃にはもうすっかり日が暮れて木星が空高く昇り、オリオン座と冬の大三角形が昇り始めていた。残念ながらすっきりした空では無く、薄い霞がかかったような空で富士山はすっきり見えてくれない。流星が流れるのを期待しながら、空を見上げつつ登るが、全く流星は流れてくれない。山頂近くの道は凍りついて一部アイスバーンになっていたが、なんとかアイゼン装着せずに登り、午後7時半に山頂到着する。
富士に昇る木星とオリオン座 石仏のある休憩所から撮影。
同上。こちらは新しく開発した手製ハーフ拡散フィルターを装着した画像。木星が大きく輝く。
山頂では強い風が吹き、ゴーゴーと鳴っている。気温は氷点下8℃まで冷え込んでいたが、この程度は想定内なのであまり寒さを感じない。一通り周辺の星空を撮影後、風を避けるために山頂の木の陰にテント設営する。そして今度は流星群の放射点のある北極星側を狙ってカメラをセットする。山頂の木と絡めて撮影を試みるが、強風で木の枝が揺れてしまい、なかなか良い場所が見つからない。その間にオリオン座の近くを火球と言っても良いくらいの大きな流星がひとつ流れて行った。インターバル撮影(連続撮影)を数回試みたが、いずれも10分と持たずに電池が凍り付き撮影が止まってしまう。張り付け式のホッカイロや充電式電気カイロも持って行ったがほとんど役に立たなかった。50コマほど撮影した中には残念ながら流星は1個も写らず、肉眼で見たのも2個のみだった。
富士に昇る冬の大三角形とオリオン座 富士山は霞におおわれて不鮮明になってしまう。
カシオペア座と北極星 風が強く木の枝が揺れる。
同上 揺れない太い木のところにポジションを変えるが、流星は流れず。飛行機ばかり。
一旦テントに戻り夕食をとって休んでいると、外が明るくなってきた。テントの外に出ると月が昇り始めていた。半月に近い明るい月が富士山の裾から昇るが、相変わらず富士山は霞んでいる。オリオン座が高く昇った10時半過ぎ、駿河湾の上にあの星が輝いていないかどうか探すが、低空に霞が広がっていて肉眼では確認できない。しかし、撮影した画像を見てみると・・・オレンジ色に輝く星、カノープスが写っていた。予想通り竜ヶ岳からだとカノープスが見えるのだが、空気が澄んだ日でないと南の低空に昇るこの星を見るのは難しそうだ。
富士の裾野から昇る月。霞がかかって不鮮明なうえにハーフ拡散フィルターが付けっぱなしだった。
駿河湾に昇るおおいぬ座シリウスとカノープス 見えますか?富士の右裾、町明かりの霞の中に輝く星。
さて、この日の撮影はここまで。テントに戻って11時に就眠する。この時の気温は氷点下9℃まで冷え込んでいたが、シュラフ2枚にくるまるとこの程度の気温ならば快適に寝ることができた。そして朝4時に起床する。月光に照らされた富士山の上を雲が形を変えながら次々に流れて行く。夜明けが近付くにつれてあたりが明るみ始め、富士山の上では笠雲が大きくなったり小さくなったりを繰り返している。その様子を6時ごろからひたすらインターバル撮影する。途中でメモリーカードがいっぱいになって交換し、引き続きインターバル撮影するのだが・・・
未明の月光富士 富士山の上を雲がどんどん流れて行く。
薄明の月光富士
富士山上の笠雲が大きくなったり小さくなったりと、形を変えて行く。しかし、その後の画像は・・・
日の出前の6時半にはもう登って来た人が1人。7時になるとさらに数人、ダイヤモンド直前の7時半には30人以上の登山者が集まり、山頂には三脚がずらりと並ぶ。ダイヤモンドを待つ中で、私一人だけタイマーを使ってひたすらシャッターを切っていた。あいにく、7時過ぎから富士山の裏側に雲が広がってしまい、太陽は出たものの輝くダイヤモンドにはならず、霞んだ日の出になってしまった。
雲の流れが面白かったのでそれなりの撮影はできただろうとひとまずは連続撮影の目的を達成したつもりで下山した。しかしその後、最後に使った4GBのメモリーカードデータを誤って消去してしまうという大ミスを犯してしまう。パソコンに取り込んだつもりだったのだが、まだ取り込んでいなかったのだ。これでダイヤモンドを含めた約1時間分の連続撮影データが全て吹き飛んでしまった。止む無し。これはきっともう一度登って来いということなのだろう。くじけることなく、後日再び竜ヶ岳に登ることにした。(その2に続く)