炭鉱が消えてから久しい。しかし国内で毎年1億トンの石炭を我々は使っているのです。遠方の海外から大型石炭船で運び込むのです。今後も続きます。驚きではありませんか?
毎年1億トンの石炭は、製鉄業で消費されているのです。
巨大な溶鉱炉では石炭を焼き固めたコークスが絶対に必要です。鉄鉱石を溶鉱炉の上から、硬いコークスを混ぜて入れ、下から熱風を吹き込み、溶けた鉄を取り出すのです。
溶鉱炉の下の方までコークスが燃え尽きないで、そして崩れないで少しずつ降りてゆくことが溶鉱炉操業のカギです。崩れると目詰まりをして熱風が万遍なく昇って行かなくなるのです。それでは部分的に、還元されない鉱石が残ってしまいます。生の鉱石がゴロゴロと炉底まで降りてきてしまい、溶けた鉄が出来なくなってしまうのです。ですから溶鉱炉にとっては硬いコークスが絶対に必要なのです。
溶けた鉄を溶鉱炉で1トン作るのに、約1トンの石炭を必要とします。輸入した石炭はコークスオーブンという炉で焼いて(乾溜して)コークスにします。それから溶鉱炉へ鉱石と共に入れるのです。
日本では毎年9000万トンから1億トンの鉄が作られています。従って必要な石炭は大雑把に言えば9000万トンから1億トン必要になります。
それでは何故、国内の炭鉱から出る石炭を使わないのでしょう?
日本の石炭の大部分は焼き固めても(乾溜しても)、硬いコークスにならないのです。強粘結炭ではないのです。ですから溶鉱炉では使えません。その上、日本の石炭は人件費が高く、高価過ぎるのです。オースラリア、南米、やアフリカでは石炭をブルドーザーで野天堀りをしています。
「鉄は国家なり」という言葉は死語になりました。それと同時に人々は製鉄業を忘れてしまいました。しかし日本では相変わらず1億トン近い鉄を溶鉱炉で作っているのです。高品質の鉄です。そのお陰で日本の車が丈夫で故障しないのです。
昨日、常磐炭鉱の栄枯盛衰の記事を書いたので、石炭のことを書き加えました。
このように日本の工業界は世界中からいろいろな原材料を運び込んでいるのです。その為にも日本は平和な国際関係を必要とします。
今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。 藤山杜人