健康な人々にとって迷惑な話の一つに病気の自慢話があります。そんな話は聞きたくないのです。しかし何故か大きな病気をした人は自分の病気の自慢話を聞いてもらいたいのです。それで私も自慢にもならない前立腺ガンの体験記を何度も書きました。終いには家内に、「病気の話は禁止」、と言われてしまいました。
しかし他の人の体験談なら良いと思い少し書きます。それは自慢話というより男性高齢者へ参考になると思うからです。武蔵野赤十字病院での10日間は、手術後の3日以外は4人部屋に居ました。同室の患者は泌尿器関係の手術を受けた人々です。隣の人が荷物をまとめて退院の準備完了です。「治って良かったですね。何日入院なさっていました?」と聞きました。4ケ月の入院で3回手術を受けました、という答えです。前立腺という臓器を取る簡単な手術のつもりで10日入院の予定で来たそうです。ところがその後、心臓の血管が狭くなっていることが分かり血管拡大の手術を受け、更に膀胱にも悪いところが見つかり、膀胱の手術も受けたそうです。特に心臓の手術は慎重に何度かに分けてしたので4ケ月の入院になったそうです。
もう一人の患者は膀胱ガンになり膀胱のかなりの部分を切り取り、後に穴が出来たそうです。そこで小腸を切り取ってきて膀胱の穴を塞いだそうです。長時間の手術だったそうです。
手術後は尿道からビニールの管を膀胱まで挿入して、尿が自由に体外のビニール袋に出るようにして、そのビニールの尿袋を手にぶら下げて退院して行きました。手に持っている尿袋は花柄の可愛い布製の手提げ袋に入っているので誰もオシッコ袋をぶら下げて歩いているとは気がつきません。久しぶりに家へ帰れるので、上機嫌に笑いながら、「藤山さんも頑張って早く退院して下さい!」と言って帰っていったのです。ところが次の日、彼が突然現れたのです。そして見舞いに来ました、と言うのです。聞くと挿入したビニールの尿管が細すぎて、詰まってしまい尿が出なくなったそうです。尿が出ないと人間は七転八倒するのです。真夜中に救急車で武蔵野日赤病院へ逆戻りしたそうです。次の朝、私を見舞に来てくれたときは一件落着の笑顔になっていて、尿が詰るとどのようになるか詳しく報告してくれました。
もう一つの話です。となりのベットの患者は話が出来ない位悪いのです。そのうち発作を起こして看護師さん達が緊張して何人も駆けつけて来ました。本人は見事に落ち着いて、話しています。「心臓が悪くて、色々薬を飲んでいます。先ほどから心臓が苦しくなったので呼んだのです。なに静かにしてニトロ・・・を飲めば治ります」と看護師をなだめています。泌尿器系統の手術のために入院したのに心臓病が発作を起こしたのです。その病棟は心臓専門の医者も看護師もいないので看護師たちはかなり緊張して心臓の病棟へ電話をし、専門医と専門の看護師が来ました。さすが専門家は落ち着いて応急手当をします。
次の日、私が退院する時は少し元気でしたので、「どうぞ十分安静になさって早く治って下さい」と声をかけました。本人が落ち着いて言います、「心臓の方はなれていますから程度が分かっています。それよりも短期間で元気に退院出来て良かったですね。おめでとう御座います」と。
余裕綽々たる病人です。それで分かったのですが、私の前立腺全摘出手術は単純すぎて自慢にならないという事です。素人相手にはガンですと自慢できますが、大病を経験した人々にとっては初歩的すぎて笑われそうです。
少しはご参考になったでしょうか?そして病気の自慢話はどんなものでも絶対に他の人の参考になると思いますので、コメントとして是非ご投稿下さい。ご投稿をお待ちしています。(終わり)