後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

イギリス製の大型帆船の構造を簡単に理解する方法ー世の中に理解出来ないものは無いー

2009年09月05日 | うんちく・小ネタ

Dscn4135

この写真は帆走を楽しむだけのヨットの写真です。遊びが目的なので縦型の三角形の帆が2枚ついているだけです。実に簡単な構造です。

ところが大西洋やインド洋、そして太平洋を越えてお客や貨物を運ぶための大型帆船となると構造が複雑になります。下の写真は昭和5年から59年まで国立商船学校などで練習船として使われていた、総トン数2200トンの運輸省の帆船日本丸です。イギリス製です。この帆船の29枚の帆の張り方は、上のヨットの構造を手掛かりにすると簡単に理解できるのです。

Dscn3350

遊びのヨットでは風上に登る楽しさを主にしますのでその性能を出す三角形の帆だけが2枚ついています。一方大型実用帆船では大西洋や太平洋の貿易風を掴んで追い風で快走し、スピードを上げる必要があります。従って4本のマストへ追い風用の四角形の帆を18枚も上げます。風上に登るための三角形の帆は船首に3枚、マストの間に6枚と、最後部のマストに2枚、合計11枚の帆を上げます。このように四角形の追い風用の帆を18枚も上げると風上に登れる性能が小さくなります。ですから、逆風が吹いたときは風上70度や80度へ少しだけ登って風向きの変わるのを待ちます。あるいは600馬力のジーゼルエンジン2基を動かして走ります。追い風の帆走では13ノットの最高速度が出ますが、エンジンで航行するときは8ノットしか速度が出ません。

この様に大洋を貿易風を掴んで快速で走る性能を重視した構造になっているのが帆船日本丸の構造です。

下の写真は日本丸の29枚の総ての帆を広げる途中の写真で、メイン・マストとミズン・マストの上へ追い風用の四角形のセイルを上げている様子です。追い風用の四角形の帆が全て上がった後に三角形のジブやステイスルという縦帆を上げます。

Dscn3380

太平洋を横断する時の航海方法については昨年、日本丸の船長をしていた大西船長から直接聞きました。伊豆七島をかわすまでは原則、エンジンで走るそうです。そこから先は全ての帆をあげて、西からの貿易風で荒れる北太平洋を、追い風で一気に駆け抜けるそうです。

サンフランシスコ湾が近づいたら追い風用の四角形の帆を下ろし、ジブとステイスルだけにして、狭い水路をジグザグに注意深く進むそうです。港近くでは全ての帆を下ろし、エンジンで入港するそうです。帰りは南太平洋を風を掴みながら根気よく走って、ハワイに寄ってから横浜へ帰ってくるそうです。船長の苦労は何時も清水460トンをどのようにもたせるかという問題だったそうです。練習生120名、乗組員を含めて総数やく200名の北太平洋横断の30日以上の生活用水、炊事用水、飲料水を賄うのです。従って荒れる海でもスピードを上げてサンフランシスコ目がけて走ったそうです。イギリス製の帆船の過不足ない合理的な設計と航海性能には太平洋を横断する度に感動したそうです。大西船長が、「大型帆船にはヨーロッパ文化がいっぱい詰まっています」と、何度も言っていたのが忘れられません。

大型帆船の構造はどんなに複雑でも風上へ登るための三角帆と追い風用の四角形の帆の組み合わせから出来上がっています。三角帆の総面積と四角帆の総面積帆の比が大型帆船の風上へ登れる性能を示しています。日本丸では三角帆の総面積が615平方メートルで四角帆の総面積は1435平方メートルです。これでは風上へ75度から80度くらいしか登れないでしょう。そのような設計思想で出来ている帆船なのです。その他の帆船の構造については続編で書いて行きたいと思います。(終わり)


欧米人を尊敬しアジア人を蔑視することの愚かしさ

2009年09月05日 | 日記・エッセイ・コラム

Dscn3387

私は実に愚かな人間でした。中年になるまで欧米人を尊敬し、アジア人を蔑視していました。

それが1969年、33歳まで続きました。1969年にドイツのローテンブルグに住んでいる間にインド人の若い友人、フェルナンデス君が毎週、教会へ連れって行ってくれます。教会へ行ってみると自分の愚かさに打ちひしがれたような顔をしたドイツ人がおおぜいいます。そうなのです。ドイツ人も愚かで悲しい存在なのです。この感想をフェルナンド君へ話すと、彼は、「ドイツ人だけではありません。インド人も愚かで悲しい存在なのです」、と言うのです。

「目から鱗が落ちる」と言いますが、その瞬間、私の「アジア蔑視」の気持ちが一瞬にして消えてしまったのです。

帰国後の1971年にカトリックの洗礼を受けました。洗礼を受けて欧米人の心が少し理解できるようになりました。するとますます欧米もアジアも人間は皆同じという確信を持てました。嬉しくて叫びたくなるような体験です。それと同時に仏教の素晴らしさも分かります。

その一方で日本人の悪い点も鮮明に見えるようになりました。例えば上に示した写真にある初代、帆船日本丸のことです。横浜の桜木町に飾ってあるのでご存じの方も多いとおもいます。

皆様はこの帆船は日本製と信じています。日本丸の説明の看板に、「神戸川崎造船所で昭和5年に竣工」と書いてあるからです。本当は、イギリスのラメージ&ファーガソンという会社が設計し、鋼材の切り出しと部品の調達を全てして、神戸へ送ったのです。日本では組み立てただけなのです。この船の内部の鋼材にはその会社の名前が打ち抜いてあります。

この船は純粋にイギリス製なのです。日本は単に組み上げただけなのです。こういう日本人の我田引水的な考えは至る所にあります。日本人の実に悪い性格です。いや外国にも我田引水はありますが、日本人のは理屈抜きの感情的な我田引水なので始末が悪いのです。

帆船日本丸の操船の訓練はイギリスから来た士官によって徹底的に行われました。現在の2代目帆船日本丸と姉妹船の海王丸は海運関連の大学の訓練に使用され、その操船は昔の英語式で行っています。一歩船内に入るとイギリスの伝統が色濃く残っています。

この船を、そして富山県にある初代海王丸を日本の文化遺産にしようとする考えがあることも聞きます。中国人は、「最初に井戸を掘った人を何時までも尊敬する」とい考えが強いようです。逮捕された田中角栄さんの目白の自宅を、中国の要人が来日する度に表敬訪問していたのがその証拠です。どうも我々の学校教育も間違ってるのでしょう。愚痴を言いだすと長くなるので止めます。

皆様は欧米人を尊敬し、アジア人を蔑視していないと信じています。

今日も皆様のご健康と平和をお祈りしています。 藤山杜人