従来の自由民主党ー大企業ー中央官僚機構の協力関係が日本の高度成長をもたらした歴史的事実は高く評価すべきです。しかし1990年のバブル経済の崩壊後はこの政治経済発展図式は機能しなくなったのです。自民党でない村山首相や細川首相が誕生したのはその苦しみの結果と思います。しかし従来の成功体験から、どうしても根本的改革へ踏み出せなかったのです。それが一昨年以来の金融危機と経済不況によって国民は決心しました。新しい政治経済体制を作らないと日本はこのまま下降し、ますます暗い不況の底に沈んでしまうと理解しました。この国民の不安感を理解しないで、何時までも従来型の利権政治を続行しようとした自民党に怒りが爆発したのです。民主党が衆議員選挙で308議席という圧倒的多数を取り、先程の国会で鳩山首相が誕生しました。中央官僚制度の打破や自民党の従来の利権政治が無くなる可能性を持つ新しい政府が出来上がることを私は心から嬉しく思います。
公平に言えば自民党は1990年頃までは国民に支持され良い政策を実施してきました。経済の高度成長は民間の努力だけでなく、このような自民党の政策に助けられ、支えられてきたのも歴史的事実です。しかし自民党の今回の悲劇は1990年以降の自民党の失敗の連続によって起きたのです。民主党がなにか良い政策を提案・実行したからではありません。
今回の鳩山政府の誕生は政治の世界の変革だけではすみません。日本の学術や芸術そして文化一般のあり方が変わると思います。欧米にあっては学術や芸術は政治組織とは距離をおいて個人の才能と努力によって展開してきました。日本の学術の多くは国立大学が担い、芸術分野でさえ上野の国立芸術大学が広く、深く関係してきました。学者になるためには旧帝国大学の有名教授の弟子にならなければなれない。一流の芸術家になるには上野の芸大を出なければいけない。このような社会風土が根本的に変革すると信じています。芸術の分野では1980年頃から日本の有名な大学を卒業しない音楽家や画家が欧米諸国で伸び伸びと活躍しています。ケーキを作るパティシエもワインのソムリエも全て個人的に外国でも活躍しています。あるいは個人の趣味としてネパールやタイに住み着いて、質の高い人生を送っている人々もいます。その上、海外ボランティアとして個人のリスクで活躍している人々も少なくないのです。
この様な人々は従来、決して日本の社会で尊敬され、丁重に扱われてきませんでした。鳩山政府の誕生でこれもすっかり変わります。従来は自由民主党の国会議員や中央省庁の国家公務員、そして大企業の社員だけが社会的に優遇されてきました。それが変るのですから、革命的な事態です。個人のリスクで学問や芸術に生涯を捧げている人々。そして高度な技術や良い趣味を持って個人的に活躍している人々が高く評価される社会になると信じています。
このような理由で私は「鳩山政府の誕生」が嬉しくで仕方がないのです。皆様はいかがお考えでしょうか? テレビによると、只今国会で鳩山さんが首相に選ばれたので一筆したためました。(終わり)