後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

トヨタ常務役員の逮捕と釈放で感じるアメリカ人の自由と驕り

2015年07月09日 | 日記・エッセイ・コラム
最近、トヨタの常務役員のアメリカ人女性がいきなり逮捕され、昨日、不起訴で釈放されました。
この不運な目にあったのはジェリー・ハンプさんという優秀な経営者でした。新聞によると彼女の違法行為は自分の膝の痛みをとる麻薬成分を含む薬品を日本に持ち込んだことだそうです。犯罪に悪質性がないので不起訴にし、釈放したという経緯でした。
いきなり逮捕とは行き過ぎのようですが、麻薬に厳しい日本の法律では当然な逮捕でした。逮捕の後でハンプさんはトヨタの役員を辞任します。
アメリカ大使館が動くのではと新聞を注意深く見ていましたが、弁護のしようのない事件だったので流石に干渉しなかったようです。
この事件は些細な個人的な違法行為のように見えますが、その背景には考えるべき二つの大きな問題があると考えられます。
まず自由の国アメリカでは州によっても違いますが原則的に銃の売買は自由です。大きなホームセンターに行けば釣り道具売り場の隣には猟銃やピストルも売っています。簡単な手続きをすれば誰でも買えるのです。
そして麻薬の使用も個人の自由な判断に任せるべきという思想が強いのです。これは麻薬の習慣性を知らない人の間違った思想です。麻薬は一度使うと強い習慣になり体をボロボロにするものなのです。ですから日本では非常に厳しく禁止され所持していれば即逮捕です。
ここで麻薬と大雑把に書きましたが麻薬には覚醒剤、大麻、コカイン、ヘロイン、阿片、向精神薬などいろいろあります。そして医薬品の成分として使われている麻薬性の化合物もあります。今度の事件ではオキシコドンという成分を含んでいた痛み止めをハンプさんが使っていたのです。
これは日本では立派な麻薬と定義され取り締まりの対象です。しかしアメリカでは麻薬の定義が狭い範囲になっているのです。医者が処方する限りこの膝の痛み止めの使用は自由です。アメリカではその薬は麻薬でないと考えられているようです。
しかしハンプさんはこの錠剤が日本では禁止されているのを知りながら父親に送ってもらったのです。
今回の事件は、銃や麻薬をなるべく自由にすべきだというアメリカの文化をあらためて明らかにしたのです。その文化の本質は、どんな危険なことでも自分の判断で、自己責任をもって行うのが良いという考えなのです。
一方、日本では、少しでも危険なことは政府が規制しています。政府の規制通り生活していれば余計なことは考える必要が無いというのが日本の文化なのです。ですから何か悪いことが起きれば国民は政府の規制が甘いと政府を批判します。そして担当の大臣が規制の甘さを謝って一件落着です。この日本の文化では個人の判断や自己責任ということは重要視されません。
アメリカと日本は「自由と平等」の思想をもとにした同じ民主国家だと言います。
しかしアメリカと日本の民主主義の内容は非常に違うのです。これをあらためて思い知らされたのが今回の即逮捕と、不起訴・釈放の事件でした。
もう一つ考えるべきは「アメリカ人の驕りと傲慢さ」です。
戦後70年、日本は一応独立国家ですがアメリカ軍の基地が国内の方々に存在しています。
東京の近くにはアメリカ太平洋艦隊の母港の横須賀があります。福生飛行場も厚木飛行場もあります。独立国家と言っても遠いヨーロッパから見れば日本はアメリカの従属国家に見られるのが現実です。日本人がいくら逆立ちしてもこの現実は微動だにしません。
日本に来て活躍しているアメリカ人に、「多少なら日本の法律を犯してもどうにかなる」という驕りを持つのは人間として自然なことです。これをアメリカ人の傲慢さだと批判したら、それは行き過ぎだと思います。
聡明なジェリー・ハンプさんは即逮捕された時、自分の心の驕りに気づき反省したに違いありません。ですからトヨタの重役を辞任したのかもしれません。外国で働いていればその国の法律を守るというのは当然のことです。随分と高い授業料を払って、今回彼女はこのことを学んだのです。日本の新聞は不起訴になって釈放されたとだけ報じています。
しかし違法行為をしたので、まったくの無罪ではなく、罰金くらいは科するべきだと私は考えています。完全無罪にしない方が良いと思います。
それが法治国家というものと思います。
今日の挿絵代わりの写真は先週訪れた安曇野の大王ワサビ農園の清流と水車の写真です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)