最近、鹿や猪や猿が増え過ぎて農業や林業へ甚大な被害が起きています。2012年の推定では全国の鹿は約250万頭、猪が約90万頭にも増加しているのです。
例えば鹿の増加は私自身でも実感しています。
下の写真は今年の6月に甲斐駒岳の山麓の山林の中の私自身の小屋のそばて撮った鹿の写真です。
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そして下は先月の9月に富士山の五合目に登るスカイラインで撮った鹿の写真です。
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三番目の写真はこの9月17日から知床に旅した時に撮ったエゾシカの写真です。
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このように自然界でゆうゆうと遊んでいる可愛い鹿の姿を見ると害獣駆除のために殺してしまうのが非常に残酷に感じます。しかし駆除しなけてば農業や林業をしている人々が困まります。この害獣駆除が日本の大きな問題になってきました。
そこで農林省や各地の自治体が害獣駆除政策を進めています。
このような背景があったので、以前に害獣被害の実態と、狩猟の実態を調べ、以下のような2つの記事にしました。
(1)「鳥獣被害額は年間1000億円くらい!」
(2)「狩猟の趣味の実態を知り、皆で考えよう」
この二つの記事は今年の8月14日に、後藤和弘のブログ:http://blog.goo.ne.jp/yamansi-satoyama に公開致しました。
(1)の記事では次の2つの事実が書いてあります。
1、農林水産省ホームページによると日本の害獣被害額は年間200億円弱といいます。
その内訳を見ると鹿と猪の被害が一番多いのです。
そして届け出ていない害獣被害を含めると被害額は年間1000億円と推定されています。
大切に育ててきた農作物が一夜にして食い荒らされてしまうのです。
2、2007年度のデータによると、狩猟免許所持者約23万人中、60歳以上が約13万人、50歳以上まで含めると約20万人となり、50歳未満の狩猟者数はわずか3万人程度です。このままの状況であれば、20年後、30年後には狩猟者数が数万人になってしまうでしょう。
要するに害獣被害が増加しているのにシカやイノシシを獲る猟師がいなくなりつつあるのです。
そして上記の(2)の記事では猟師が獲った獲物の解体と流通経路が明快になっていないことを指摘しました。せっかっく獲ったイノシシや鹿の肉を全国へ販売する為のルートが明快に確立されていないのです。
そこで8月以来、折に触れて猪肉と鹿肉の販売業者について調べてみました。
ネットに鹿肉を検索するといろいろなネット販売の広告があります。
しかし鹿肉の処理方法や衛生状態が分からず不安です。
私自身は山林の中の小屋の近所の馬刺しを売っている精肉店が衛生的なのでそこから猪肉や鹿肉を時々買っています。その店の主人の息子が甲斐駒岳の周囲で銃猟で獲ったものだと判っているので安心なのです。
今回はその鹿肉の販売に関して更に詳しく調べましたのでご報告いたします。
農林省も「野生鳥獣被害防止マニュアル-シカ、イノシシ(捕獲獣肉利活用編)」を発表し積極的に鹿肉や猪肉の流通を支援しています。
このマニュアルの第2章には以下のように鹿肉や猪肉などの衛生管理を詳しく規定しています。
第2章捕獲獣肉の衛生管理
1.衛生管理の基本的な考え方
2.捕獲段階の衛生管理
3.処理施設の衛生管理
4.処理段階の衛生管理
5.事業者等における衛生管理
これを受けて最近、数多くの鹿肉処理、販売業者が事業を始めました。
例えば9月17日に訪れた斜里町では下の写真のような食用の鹿牧場を見ました。
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この鹿牧場は株式会社エゾシカファームの所有で、野生の鹿を囲い網で一網打尽に獲って飼育しているのです。
この鹿の大量飼育の目的は市場への鹿肉を安定供給し、さらに売り出す鹿肉を美味しくするためです。
このエゾシカファームの代表取締役、土田一吉 さんは以下のように述べています。「平成17年8月に、知床は世界自然遺産の登録をうけました。しかしこの素晴らしい生態系を破壊する勢いでシカが爆発的に繁殖しています。 私どもは建設業で培った技術力を生かし、地域への恩返しをこめて、このシカの駆除・有効利用事業に着手致しました。この取組が斜里町の基幹産業である、農業・漁業・観光業の活性化につながるよう願っております。当社は上記の各産業の皆様にも参画をいただいております。社員一丸となり、少しでも地域に貢献できますよう、努力する所存であります。皆様のご愛顧のほど宜しくお願い致します。」
この鹿牧場は大規模ですが、北海道では、例えば「狩人の蔵」(店主:引地 安久)のような個人経営の鹿肉業者も数多く鹿肉を供給しています。
これを受けて社団法人エゾシカ協会は以下のような推奨鹿肉販売店を指定しています。
(1)スーパーエース美香保店、札幌市東区北18条東8丁目2-5 011-741-2346
(2)スーパーエース30条店、札幌市東区北30条東8丁目1-2 011-731-2141
(3)スーパーエース屯田店 、札幌市北区屯田5条3丁目2-23 011-733-8411
(4)スーパーエース八軒店 、札幌市西区八軒3条西3丁目2-5 011-613-1033
(5)産直生鮮市場江別店、 江別市野幌代々木町77-2 011-385-8971
(6)産直生鮮市場北郷店 、札幌市白石区北郷4条4丁目22-1 011-879-2310
(7)産直生鮮市場月寒店 、札幌市豊平区月寒中央通2丁目3-38 011-858-3351
(8)産直生鮮市場平岡店、札幌市清田区平岡7条3丁目18-45 011-883-8555
(9)産直生鮮市場伏古店、札幌市東区伏古9条4丁目3-1 011-789-5538
(10)生鮮おろし、連絡先 北海道滝川市 TEL/0125-23-8064
生鮮専門のスーパーで、新鮮なエゾシカを販売しております。主に、知床産、阿寒産、静 内産を販売。ブロックなど売り場にないエゾ シカ肉も近隣の処理工場より仕入れ販売 いたします。 シカのいろいろな部位の肉も供給します。
(11)せいせん日の出、連絡先 北海道岩見沢市 TEL/0126-22-0000
(12)アンの店、住所と電話 札幌市白石区本通4丁目南1-13 011-863-9373
(13)Natural & Organic 自然食の店「まほろば」本店、札幌市西区西野5-3-1-1 011- 665-6624
(14)Natural & Organic 自然食の店「まほろば」厚別店、札幌市厚別区厚別中央1-3 011-894-5551
(15)焼肉わらべ、連絡先 北海道千歳市 TEL/0123-24-8826
焼肉店に併設する精肉販売店舗にてエゾシカを販売しています。主に、知床産、阿寒産、 静内産を販売。
(16)株式会社北海道食美樂、北海道新冠町 TEL/0146−47−1822、FAX/0146−47−1823
(17)株式会社アイマトン業務卸、札幌営業所TEL/011-787-1105
(18)同上、滝川営業所TEL/0125-24-1105
(19)同上、千歳営業所TEL/0123-23-1105
(20)南富フーズ(株)、 空知郡南富良野町字幾寅617番地3 TEL 0167-52-3773
(21)その他。
以上を見ると北海道ではエゾシカを普通に買って毎日のように食べている人が多いようです。
それでは本州、四国、九州ではどうなっているのでしょうか?
いろいろな情報がありますが以下に一例として長野県で大手スーパーのシカ肉販売をご紹介します。
総合スーパー「イオン」は、2015年6月5日から県内の11店舗すべてで、県内産のニホンジカの生肉(冷凍)や加工食品を通年で販売しはじめました。
害獣駆除で獲ったシカの生肉が長野県スーパー販売されるのは初めてです。
「信州ジビエ(野生鳥獣肉)」としてブランド化を図っている県はこれを支援しています。このイオンの事業によって消費者にジビエを届ける流通経路がようやく出来上がったのです。普通に家庭の食卓に上がるのも時間の問題です。
今回、生肉を販売する仕組みが出来上がったのは、業務用食品卸売業「ナガレイ」(長野市)が県内各所に散らばる22のジビエ処理加工施設から、シカの生肉や加工品を仕入れる流通の流れが構築できたためです。
長野県は昨年度、信州ジビエ研究会とともに、徹底したトレーサビリティー(流通履歴管理)や衛生管理のもとで加工処理されたシカ肉に対する認証制度を創設しました。ナガレイにはシカ肉の流通促進事業を委託しており、イオン店頭で販売される生肉は同制度で認定された3施設からのものに限られます。県庁の担当者は「この流通の仕組みにより、消費者のジビエに対する安全性への懸念は払拭される」と言っているそうです。
イオンで販売される生肉はいずれも冷凍状態で、ロースとモモのブロック肉が200グラム1280円(税抜き)、煮込み用が同980円(同)。イオンを運営するイオンリテールの辻晴芳専務執行役員は「シカ肉は牛肉や豚肉に比べて高タンパク、低脂肪、低カロリーで鉄分が豊富。ヨーロッパではジビエとして注目が集まる食材で、シカ肉のおいしさをイオンから発信していきたい」と話しています。
長野県のイオン11店舗では、認証生肉3種類を月間ベースで合計400キログラムの販売を計画。このほか、大和煮などの缶詰、カレーなどのレトルト製品、ソーセージなどの加工食品11種類も販売し、信州ジビエのブランド化を後押ししていく。
他の地方の鹿肉販売の実情は以下の言葉を検索する見ることが出来ます。
鹿肉販売神奈川、鹿肉販売東京、鹿肉販売奈良、鹿肉販売京都、鹿肉販売兵庫など。
さて冒頭に2012年の推定では全国の鹿は約250万頭、猪が約90万頭も棲んでいると書きました。これに対して捕獲数は2010年の統計では鹿が38万頭で猪が48万頭でした。
それでも鹿も猪も増え続けてるのです。
農作物の鳥獣被害額も増加の一方です。
日本人がもっともっと鹿肉や猪肉を食べ、捕獲数を増加しないとこの問題は解決しそうもありません。
一方で動物愛護の精神では捕獲数の増大には反対です。ここに大きなジレンマがあり実に難しい問題なのです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)