狭い日本とは言え、北の端北海道東北部と南の端沖縄では、自然環境は元より住む人 間の感覚もずいぶん違う様なことを書いてきた。でも人間の感性は、自然環境や地理的 隔離によってのみ異なるものではない。時間的距離の方が、もっと大きな影響を与える。
明日香村に有る訳の分からない石造物である。左は噴水塔、右は水路であろうが問題 はその機能ではない。この様なデザインに至らしめた感性が問題なのだ。特に右の水路 の石組みと造形は、現代アートの芸術家であってもここまでの感性は持ち得ないであろ う。時間間隔の成せる、いや成した技である。7~8世紀と現代とでは、文化文明のレベ ル(内容?)が異なるなだから当然だ、との意見もあるだろうし、日本人の宗教観が仏教 への移行期であり、アミニズムの影響を色濃く反映したものだ、との意見もあるだろう。
いずれにしても要素還元的分析であり、時間はその全てを包括する。古代史に疎い素 人は、「時間の成せる技」と一括りに言ってしまったほうが簡単でいい。素人の戯れ言の 強みである。