【まくら】
原話は、松浦静山が文政4年(1821年)に出版した随筆・「甲子夜話」の「第十七巻」。
【あらすじ】
徳川家七代将軍のご他界があって、跡目相続の話が持ち上がり、水戸家、紀州家に尾州家の御三家から選ばれる事になった。水戸家は歳を取って引退していたので辞退し、紀州公か尾州公のどちらから八代将軍を選ぶ事になった。
尾州公は男として将軍になりたかったので、うがい手水に身を固め柏手を打って屋敷を後にした。駕籠に乗っていても”天下”を取りたいと思っていた。今井町を通ると鍛冶屋で鎚の音がトンテンカンと聞こえず「テンカ~、トール」と聞こえてきた。さい先が良いと登城し、紀州公と並んで座った。小田原の城主、大久保加賀守が尾州公の前に進み出て「この度、七代将軍ご他界し、お跡目これなく、しも万民の為、任官あってしかるべし」と頭を下げた。この時受けてしまえば終わっていたのを、見栄が働いて 、断っても再度言葉が掛かるだろうと「余はその徳薄くしてその任にあたわず」と断ってしまった。すると意に反して、向きを変えて紀州公の前に行って「この度、七代将軍ご他界し、お跡目これなく、しも万民武育の為、任官あってしかるべし」と同じ事を言った。紀州公は何て 答えるだろうと聞いていると「余はその徳薄くしてその任にあたわず」と同じ事を言った。しかし、続けて「・・・なれども、しも万民武育の為、任官いたすべし」と応えた瞬間、将軍職は尾州公を通り越して紀州公に決まってしまった。
尾州公はぼんやりしながら駕籠に揺られて今井町まで来ると、鍛冶屋がまだ”テンカ~、トール。テンカ~、トール”と打っていた。「おかしいな、まだ天下取ると聞こえる。そうか紀州公は返事はしたが『やはり将軍職は尾州公様に』と頼みに来るんだろう」と思っていた。「鍛冶屋の鎚の音は幸先のイイものだ。これで私が天下を取れる」。まだ鍛冶屋ではテンカ~、トール、テンカ~、トールと打っていると、 テンテンテンと打ち上げて、真っ赤に焼けた鉄を水の中に入れると”キシュ~(紀州)”。
出典: 落語の舞台を歩く
【オチ・サゲ】
不明
【語句豆辞典】
【御三家】江戸時代、尾張の徳川家(尾州家)、紀伊の徳川家(紀州家)、常陸の徳川家(水戸家)の総称。諸大名の上に位し、将軍に嗣子のない時は三卿(サンキヨウ)と共に尾張・紀伊両家から継嗣を出した。水戸家はその特典なく、代々副将軍。三家。
【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生
・三代目 三遊亭金馬
・六代目 三遊亭圓生
原話は、松浦静山が文政4年(1821年)に出版した随筆・「甲子夜話」の「第十七巻」。
【あらすじ】
徳川家七代将軍のご他界があって、跡目相続の話が持ち上がり、水戸家、紀州家に尾州家の御三家から選ばれる事になった。水戸家は歳を取って引退していたので辞退し、紀州公か尾州公のどちらから八代将軍を選ぶ事になった。
尾州公は男として将軍になりたかったので、うがい手水に身を固め柏手を打って屋敷を後にした。駕籠に乗っていても”天下”を取りたいと思っていた。今井町を通ると鍛冶屋で鎚の音がトンテンカンと聞こえず「テンカ~、トール」と聞こえてきた。さい先が良いと登城し、紀州公と並んで座った。小田原の城主、大久保加賀守が尾州公の前に進み出て「この度、七代将軍ご他界し、お跡目これなく、しも万民の為、任官あってしかるべし」と頭を下げた。この時受けてしまえば終わっていたのを、見栄が働いて 、断っても再度言葉が掛かるだろうと「余はその徳薄くしてその任にあたわず」と断ってしまった。すると意に反して、向きを変えて紀州公の前に行って「この度、七代将軍ご他界し、お跡目これなく、しも万民武育の為、任官あってしかるべし」と同じ事を言った。紀州公は何て 答えるだろうと聞いていると「余はその徳薄くしてその任にあたわず」と同じ事を言った。しかし、続けて「・・・なれども、しも万民武育の為、任官いたすべし」と応えた瞬間、将軍職は尾州公を通り越して紀州公に決まってしまった。
尾州公はぼんやりしながら駕籠に揺られて今井町まで来ると、鍛冶屋がまだ”テンカ~、トール。テンカ~、トール”と打っていた。「おかしいな、まだ天下取ると聞こえる。そうか紀州公は返事はしたが『やはり将軍職は尾州公様に』と頼みに来るんだろう」と思っていた。「鍛冶屋の鎚の音は幸先のイイものだ。これで私が天下を取れる」。まだ鍛冶屋ではテンカ~、トール、テンカ~、トールと打っていると、 テンテンテンと打ち上げて、真っ赤に焼けた鉄を水の中に入れると”キシュ~(紀州)”。
出典: 落語の舞台を歩く
【オチ・サゲ】
不明
【語句豆辞典】
【御三家】江戸時代、尾張の徳川家(尾州家)、紀伊の徳川家(紀州家)、常陸の徳川家(水戸家)の総称。諸大名の上に位し、将軍に嗣子のない時は三卿(サンキヨウ)と共に尾張・紀伊両家から継嗣を出した。水戸家はその特典なく、代々副将軍。三家。
【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生
・三代目 三遊亭金馬
・六代目 三遊亭圓生