日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第百八十四段

2022年12月27日 | 徒然草を読む


【原文】 
相模守時頼の母は、松下禅尼にとぞ申しける。守を入れ申さるゝ事ありけるに、煤けたる明り障子の破ればかりを、禅尼、手づから、小刀して切り廻しつゝ張られければ、兄の城介義景、その日のけいめいして候ひけるが、「給はりて、某男に張せ候はん。さやうの事に心得えたる者に候ふ」と申されければ、「その男、尼が細工によも勝り侍らじ」とて、なほ、一間づゝ張られけるを、義景、「皆を張り替へ候はんは、遥かにたやすく候ふべし。斑らに候ふも見苦しくや」と重ねて申されければ、「尼も、後は、さはさはと張り替へんと思へども、今日ばかりは、わざとかくてあるべきなり。物は破れたる所ばかりを修理して用ゐる事ぞと、若き人に見習はせて、心づけんためなり」と申されける、いと有難かりけり。
世を治むる道、倹約を本とす。女性によしやうなれども、聖人の心に通へり。天下を保つほどの人を子にて持れける、まことに、たゞ人にはあらざりけるとぞ。

【現代語訳】  
北条時頼の母は、松下禅尼と言った。ある日、息子の時頼を招待することがあった。古くなった障子の破れている所を、僧尼が自ら小刀をクルクル回して切り貼りしていた。それを見た兄の義景が「私に任せなさい。某という男がいるので、奴に貼らせましょう。手先が器用な男なのです」と言った。「その男だって、私の手際には敵わないでしょう」と、僧尼は、障子を一マスずつ張り替え続けた。義景は、「ならば全部張り替えた方が、よっぽど楽でしょう。このままだとマダラ模様で見苦しい」と付け加えた。僧尼は、「後で綺麗に張り替えるつもりですが、今日だけは、わざとこのようにするのです。物は壊れた部分を修繕して使うのだと、若い時頼に注意するのです」と答えた。なんと殊勝なことであろう。
政治の道は倹約が基本だ。禅尼は、女性ではあるが、聖人と同じ心を持つ人である。天下を統治するまでの子を持つ親は、一般人とは違う。

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。

Daily Vocabulary(2022/12/27)

2022年12月27日 | Daily Vocabulary
29786.I've got to run  (もう行かないと )
It was great running into you. But I gotta (I've got to) run because I'm meeting someone in 30 minutes. 
29787.chip in   (みんなでお金を少しずつ出し合う )   if each person in a group chips in, they each give a small amount of money so that they can buy something together 
I'm thinking about buying pizza for everyone. Would you mind chipping in
29788.good to go   (準備OK!  )American English informal to be ready to do something 
I got my brand-new shoes on and I’m good to go
29789.confirm  ((真実であることを)確かめる、裏付ける )to show that something is definitely true, especially by providing more proof OPP refute 
Great. Can you confirm if the other team members can join the meeting?  
29790.verify   ((事実や真意を証拠や調査などによって)確認する )to discover whether something is correct or true 
I will need to verify your identity. Could you provide me with your passport?