シネマポイントは、長野市権堂のイトーヨーカ堂の5階にある小さな映画館です。メジャーな映画はほとんど上映されませんが、時々面白そうな作品が上映されます。今回、ミラノの歌劇場スカラ座のドキュメンタリーが上映されたので、観てきました。監督はルカ・ルチーニというイタリアの人です。
(パンフレットの表紙。写真はマリア・カラス)
2014/15シーズンのオープニング作品「フィデリオ」上演の準備の模様、出演した著名な歌手や指揮者、劇場関係者などへのインタビュー、歴史的なオペラの場面の映像放映、バレエ学校の練習風景、オペラ作曲家の初演作品の紹介などを通して、ミラノ・スカラ座の歴史と魅力が語られています。
インタビューで印象に残ったのは、ミレルラ・フレーニで、1963年「ラ・ボエーム」でミミを歌ったところ、指揮者のカラヤンが舞台に上がってきて、泣きながら『私が涙を流したのは母が死んだとき以来だよ』といって、賞賛されたことを明かしています。また、指揮者のダニエル・バレンボイムは、『マリア・カラスが歌った場所で私は歌えないと不安を覚える歌手がいる』と、この劇場の重みを述べています。
演奏や歌の場面では、ヴェルディ作「ナブッコ」の合唱「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」、レオ・ヌッチ、レナータ・テバルディやマリア・カラスの歌声などが印象に残りました。特にヌッチ(バリトン)の素晴らしさには驚きました。地元のスカラ座愛好会の人たちが上演について感想、意見を述べ合っている映像もあって、市民に愛され、支えられていることが描かれているのもよかった。
イタリアのミラノを訪れて、スカラ座でオペラを聴いてみたくなる、ドキュメンタリー映画でした。
【ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿 公式ホームページ】
【岡田暁生著「オペラの運命」(中公新書)】
この映画を見て、「ミラノ・スカラ座」はじめオペラ劇場の歴史を知りたいと思い、図書館でこの本を借りてきました。
著者は、『本書の目的は、宮廷文化の夕映えが近代市民社会の熱気と溶け合って生まれるところの、オペラ劇場の一夜という「場」の興亡史を、時には作品を通して、時には上演ないし受容形態を通して辿ることにある。』と記しています。
オペラの名作を時代順に並べて解説したものではありませんが、それらにも言及しつつ、オペラ劇場の成り立ちから変容を辿っていて、エキサイティングに面白い本でした。1830年頃の「ミラノ・スカラ座」の客席を書いた絵(図版)も載っています。