書店で平積みされていた文庫本の帯のPRが目を惹いたので、横関大さんが書いた本を数冊購入してきました。観たことはありませんが、「ルパンの娘」は、ドラマ化されて深田恭子主演で現在放映されています。
著者の横関 大(よこぜき だい)さんは、1975年静岡県生まれで武蔵大学人文学部卒。8年連続で江戸川乱歩賞に応募し、2010年に『再会』で第56回江戸川乱歩賞を受賞。その後はコンスタントに作品を発表していて、「グッバイ・ヒーロー」、「沈黙のエール」、「ルパンの娘」、「K2池袋署刑事課 神崎・黒木」などがあります。
【ルパンの娘】
(粗筋)
泥棒一家の娘・三雲華は、警察一家の長男・桜庭和馬と素性を隠して交際していた。ある日、華の祖父・巌が顔を潰された遺体で見つかり、華は独自に犯人を捜す。和馬は華に婚約指輪を贈るが、殺人事件を捜査する中で華が伝説のスリ師・巌の孫だと知り悩む。事件の真相と二人の恋の行方は?著者会心の長編ミステリ!
(参考)【フジテレビ ルパンの娘公式サイト】
【ルパンの帰還】
(粗筋)
警視庁捜査一課で活躍する桜庭和馬。部下に配属された、別嬪の新人刑事は京都の老舗探偵事務所に生まれた北条美雲、23歳。ドジで愛嬌のある天才肌。バディを組んだふたりが直面したのは、和馬の妻子が巻き込まれたバスジャック事件だった。連続ドラマ化で話題沸騰の人気シリーズ新展開!
(ルパンシリーズ感想)
エンタ-テイメントとしてよくできた面白い小説です。荒唐無稽な設定ですが、登場人物のキャラクターがよく描けていて、魅力的です。文章もテンポがよく、難しい言い回しを使わないので、幅広い層に受けそうです。「ルパンの帰還」の結末でトラックが突然登場するとこなど、展開に強引さもありますが、適度な謎解きも含まれていて、飽きさせません。続編も出るようなので、楽しみです。
【再 会】
(粗筋)
小学校卒業の直前、悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込めた幼なじみ四人組。23年後、各々の道を歩んでいた彼らはある殺人事件をきっかけに再会する。わかっていることは一つだけ。四人の中に、拳銃を掘り出した人間がいる。繋がった過去と現在の事件の真相とは。第56回江戸川乱歩賞受賞作。
(感 想)
江戸川乱歩賞を逃していた著者が、ようやく受賞した作品です。解説を読むと、受章に至らなかった原因は、ミステリーとしての謎の設定、その解き方が弱いという点だったようです。そういう弱点を踏まえて書かれ小説なので、幾重にも伏線がはられた重厚さのあるものでした。
この小説は力作だとは思いましたが、ストーリー展開がややくどく、著者の特質である登場人物のキャラクター設定やテンポの良さがそがれている印象でした。「K2池袋署刑事課 神崎・黒木」も読みましたが、面白い物語を創造し、文章も読み易いので、これからの作品も期待できそうです。できれば、個性的なヒーローが活躍するハードボイルドを書いてくれれば嬉しい。