グラフィックデザイナー、イラストレーターとして装画や装丁分野で活躍し、映画の監督やエッセイ執筆など幅広い活動を行った和田誠さん(1936~2019年)が書いた本は好きで、たまに読んでいます。今回、彼の原点である装丁について書いた本を読みました。
表紙
(目 次)
1 装丁で忙しくなり始めたころ
2 装丁と装幀
3 谷川俊太郎さんの本
4 文字について
5 装丁の依頼
6 丸谷才一さんの本
7 映画の本の装丁
8 先生たちの本
9 シリーズものの装丁
10 つかこうへいさんの本
11 紙の話
12 画材について
13 文庫のカヴァー
14 村上春樹さんの本
15 人の絵を使う
16 自著の装丁
17 言い残したこと
18 バーコードについて
(感 想)
普段何気なく手に取っている本ですが、その外観によって読もうとする意欲が湧いたり、また、書棚に飾っておきたくなったりと、装丁は大事な仕事だということを改めて感じさせられました。豪華本ばかりでなく、著者は文庫本の一冊に至るまで愛情を注いで作っています。
装丁の技術的なことについても、紙など材料から、描く手法などその細部に渡り記述しています。そのへんも興味深いですが、作品にかける著者の一貫した姿勢には打たれました。基本的に原稿は全部読んでいて、そこから得られる印象を装丁に生かしていて、手間を惜しまないのには驚きました。
「装丁で忙しくなりはじめたころ」の1972年から、この単行本が発行された1997年までのことが仔細に綴られていて、その記憶力と整理力には改めて感服しました。本文には本人の装丁した本の写真なども出てきて、視覚的にも楽しく読めます。
(この本に掲載されている、著者デザインの表紙など)
和田誠さんの初期のころの仕事。『孤狸庵VSマンボウ』
「文字について」に出てくる、書体の話でうまくいった例として挙げられている丸谷才一など訳『ユリシーズ』。
「映画の本の装丁」にでてくる、山田宏一訳ローレン・バコール自伝『私一人』。写真を使った一例。
村上春樹さんの本も多数手がけています。ビル・クロウ著村上春樹訳『さよならバードランド』。和田さんの挿絵もたくさん入った本です。
イラストレーターというよりもグラフィック・デザイナーとしての立場から、「人の絵を使う」ことによって装丁をすることがあることも一章を設けて述べています。これは、山口はるみさんの絵を使った伝記『ヴィヴィアン・リー』。
(以下は、僕が読んだ和田誠さん、村上春樹さん関連の本から。)
これは、和田誠さんが個展でジャズをテーマに二十数点の油絵を描いたところ、その絵を村上春樹さんが気に入って、文章をつけて芸術新潮に連載されたものが単行本になったもの。(「Portrait in Jazz 新潮社)
この本の本文にも登場しますが、著者が装丁をした「さよならバードランド」の文庫本。
こちらも著者の装丁。
村上春樹著「村上ソングズ」。著者の絵が満載されています。