音楽評論家の吉田秀和さんのクラシックへの入門本が、文庫化されたので購入して読み、紹介されている曲の中から、聴いてみたいものをCDで聴きました。
表紙
(カバー裏にある本書の紹介)
(著者について)
吉田秀和さんは、1913年東京生まれ、2012年に逝去された音楽評論家。著書が多数あり、2006年に文化勲章を受章。1948年に井口基成、斎藤秀雄らと「子供のための音楽教室」を創設し、後の桐朋学園音楽科設立に参加、57年には「二十世紀音楽研究所」を設立するなど幅広い活動を行った。詳細は、下記をご覧下さい。
(感 想)
この河出文庫の元は、1950年12月に刊行された『世界の音楽』(実業之日本社)なので、1950年(昭和25年)までの作品について書かれています。取り上げられた66曲の中に、バルトークやヒンデミットなど当時の現代音楽が多く含まれ、吉田さんのアンテナの高さには、驚きました。
掲載曲数が多いのは、4曲のベートーヴェン、3曲のバッハ、モーツァルト、ドビュッシー、2曲のシューベルト、シューマン、チャイコフスキーです。ドイツ中心ですが、フォーレ、デュカス、ラヴェル、ファリャなどが入り、フランス、スペインの音楽も取り上げているのには好感が持てます。
巧みな文章で曲について語っていて、その音楽を聴いているような気分にもなりました。例えば、モーツァルト「ピアノ協奏曲ハ短調」(k491)の第一楽章について、『この楽章の主題の中頃は、半音階的に下降しながら7度跳躍するという、実に印象的で細やかな感じにみちたものである。』と記しています。
(目次・・・紹介されている曲目)
(カバー内側にある著者略歴)
(本書で取り上げられた曲について、聴いたCD)
モーツァルト「ピアノ協奏曲ハ短調」(k491)。ロベール・カサドシュ(p)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団。品格があって、好きな曲、演奏です。
フランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」。イザベル・ファウスト(vn)、アレクサンドル・メルニコフ(p)。出だしが印象的な曲です。メルニコフ(p)については、最近、N響との共演をテレビで聴いたら、なかなか素晴らしく、印象に残ったピアニストです。
リムスキー=コルサコフ「シェラザード」。イーゴリ・マルケヴィッチ指揮ロンドン交響楽団。著者はこの曲について、『サルタンが怒り狂うさまとか、なだめるような王妃の姿とか、いつもまことに多彩な効果的な管弦楽の手法で描かれている』と記しています。このアルバムがSACD化されたので、それを購入しました。
ファリャ「スペインの庭の夜」。ジャン=フランソワ・エッセール(p)、ヘスス・ロべス=コボス指揮ローザンヌ室内管弦楽団。著者は『旋律は、アンダルシアの民俗調に模し、特色あるリズムや装飾音にみち・・ピアノはオーケストラの中に巧みにとけあわされている』と記しています。今回購入したこのCDは良かった。
バルトーク「ピアノ協奏曲第三番」。キース・ジャレット(p)、秋山和慶指揮新日本フィルハーモニー交響楽団。著者は、『この曲は、実に僕らの胸をうつ深く澄みきったものをもっているということである。』と記しています。
【河出書房新社刊行の吉田秀和の本(同社ホームページ)】
今年はラフマニノフ生誕150年ですね♪
ラフマニノフ協奏曲第二番の調べに乗せて描いた第1回カンヌ国際映画祭グランプリのイギリス映画「逢びき」でも観たくなりました。ちなみに、今年でカンヌ国際映画祭は第76回かぁ!
評論では名うての1人でしたね。
ある意味格調高い文章は、敷居が高い
感じもありました。図書館で全集を
見たときにちょっとたじろいだ
想い出があります。
譜面の一部が記されているのも、
音楽専門書以外で見るのは初めてで、
彼の表現の広さに関心しました。
ムック本で、ご本人のオーディオ
システムを紹介されていましたが、
ごく普通の民生機であの著作がと、
驚いたことがありました。
当時の演奏会も通われていた様ですし、
名を残す方は違うと思ったことが
ありました。
キースとECM、国内の楽団で
バーバー・バルトークが残されてたのは
初めて知りました。参考になりました。
情報ありがとうござます。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番は、記念イヤーということもあって、今年は各地でたくさん演奏されていましたね。記念イヤーでなくとも、多分、現在の一番人気のピアノ協奏曲ではないでしょうか。
ラフマニノフは、人気がある割には、クラシックの作曲家の中では低い位置づけになっているように思います。音楽之友社の作曲家別名曲解説ライブラリーにもラフマニノフの名前はありません。プロコフィエフ、グリーグやニールセン、シベリウスあたりが取り上げられているのにです。
これを機にさらに、ラフマニノフの評価が上がればいいなと僕は思っています。
コメントありがとうございます。
本文庫の渡辺さんの解説にあるのですが、吉田さんは、楽譜が手に入らない曲や、実際に演奏会で聴いたことのない曲は取り上げていないようです。ブルックナーも、楽譜の関連で入っていないようでした。
僕個人としては、ガ―シュインの「ラプソディ・イン・ブルー(1924年初演)」あたりも入れてほしかったところです。
僕は吉田秀和さんの著作を読みだしたのは、ごく近年で、河出文庫から刊行され始めてからです。難しいところもありますが、格調の高い文章は、惹かれるところがあります。
コメントありがとうございます。
吉田秀和さんの著作は、個々の作曲家や、指揮者、演奏家について、楽譜を引きながら、述べたものが多く、こういった入門書的なものは少ないと思います。この本は、初期のものですが、近現代作品がたくさん取り上げられていて、その点も凄いなと思いました。
CDの方ですが、キース・ジャレットのバルトーク第三番の演奏は、結構好きです。最近は、ジャズ畑の人が、クラシックを演奏することも増えているように思いますが、キース・ジャレットやウィントン・マルサリスあたりが、代表例でしょうか。
クラシック、ジャズともに楽しんでいきたいと考えています。コメントありがとうございます。