明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

  


昨日の撮影は、現場に着いた時には雨にかわっており、雪が撮影できなかった。こうなったら作るしかない。帰宅後、その前に雪より重要な作業を始めた。 三島は映画『憂国』の撮影時、クライマックスの割腹のシーンにもっと血を、と“増血”を要求したらしい。三島の好みからいえば当然のことであろう。乱歩同様、無惨絵が大好きな三島である。そこで撮影した現場を血だらけにすることを始めた。方法は『乱歩 夜の夢こそまこと』(パロル舎)制作時に、『盲獣』の風呂場ですでに考え出している。しかしあまりに陰惨な仕上がりに、趣旨に合わない、と没にしていた。いや正直にいうと、その風呂場を使わなかった本当の理由は、文化財だったからである。リアル過ぎて乱歩作品には使うことはなかった、というのは本当で、切断死体も切り口は常にスッパリと綺麗に、切断面は極力こちらに向けず、風呂場は元銭湯を使った。悲惨な状況も、どことなく笑えることを心がけた。同じ無惨絵好きでも、乱歩は本当の血など大嫌いである。その点三島はまるで違い、血に目を輝かせ恍惚とするタイプである。それは近年あきらかにされた様々な証言でも確かであろう。制作に熱中していると、あまりに上手くいき、雪はもう、二の次でどうでもよくなってしまっていた。

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