現在制作中の作家は存命中である。資料写真が潤沢にあるのが良いが、あまりやり過ぎで、だっら本人使えば良いじゃないか、となってはならないので、作り物臭さを残したほうが良いだろう。酒場で渋く、ということだが、かつでジャズ、ブルースシリーズで、散々そんな男性像を作ってきた。
“マレーの虎”こと陸軍大将、山下奉文の色紙が届く。水野晴郎が制作した怪作『シベリヤ超特急』で嬉しそうに自ら演じていたあの人物である。シンガポールでの降伏交渉の場で、敵将パーシバルに無条件降伏を迫る「イエスかノーか」という映像で有名だが、緊迫感を出すため、早や送りにしているそうである。確かにその時代の映像としてはせわしない。大日本帝国は実に芸が細かいが、実際は要領の悪い通訳に対していったので、敗軍の将にそんな振舞いはしない、と本人はいっている。後に日本がミズーリ艦上で無条件降伏をするさい、パーシバルを同席させマッカーサーにしっぺ返しをされている。 二・二六事件の青年将校は、事前に皇道派とされた上官の腹を探っている。首相に担ぎ出すつもりだった真崎甚三郎陸軍大将、他、山下奉文等々。そこで事後、彼らが立ち上がることを信じたわけだが、天皇の逆鱗にふれ、結果反乱軍となってしまう。そもそも事の起こりは皇道派に焚きつけられた相沢という少佐が、陸軍の逸材、統制派の永田鉄山を惨殺した所から始まる。永田は他国に対する占拠を反対していた人物で、名コンビといわれた東条英機が奔馬としたら名騎手にたとえられ、ブレーキとなりあの戦争には突入しなかっただろうとみる人も多い。青年は美しいと三島はいうが、登場する青年達は単純に過ぎると私には思える。 今回の震災により、予定していた個展会場の存続が危うい、ということで開催もまだ未定であるが、かまわず進めることにする。三島の二・二六をテーマにした作品は、制作の下ごしらえは済んだ。来月は他のバージョン制作のため、浜松に行く予定である。アダージョの制作でくりかえしたように、先に背景を制作し、そこに人物を配していくという手法である。 今回の震災で、東京にいながら、ショックで何も手に付かないという知人もいる。私の場合は世の中に無くたってかまわない物を、あえて作るという渡世を選んだので制作はあいかわらずである。
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