三島由紀夫は「あと何百万年たっても、女が男にかなはないものが二つある。それは筋肉と知性である」といっている。しかも書いているのが婦人公論というから困った人である。1963年当時はまだそんな時代だったのであろうか。私が女性だったら、三島は二度と読むまい、と思ってもおかしくないセリフである。そもそも女性だったら三島は作らなかっただろう。 何度か書いた気がするが、私は死ぬまでに一度見てみたいものに、スポーツで女性が男性の記録を抜く瞬間がある。63年といえば、翌年に開催されたのが東京オリンピックである。その時マラソン銅メダルの円谷幸吉の記録は、すでに女子に1分も抜かれている。長距離走など“根性”がものをいう競技には可能性があるのではないか。 私は円谷が大嫌いである。『男は後ろを振り返るな』という父親の言いつけを守り、競技場内でヒートリーに抜かれる。父親は人生訓としていったので、そういう意味でいったんじゃない、としたらとんだマヌケな男だが、後ろから迫るヒートリーに、“シムラ後ろ後ろ”ではないが、手に汗握って応援した少年にしてみると、胸糞悪い遺書を残して自殺されてガッカリ。憎さ百倍に転じ、日本男児の悪例のイメージとなった。 ところで三島先生は思いもよらなかったろうが、現在では女性で先生くらいの筋肉の持ち主はいくらでもいる。
過去の雑記
HOME