明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



TVでスタジオジブリの最新作『コクリコ坂から』のCMを見た。国際信号旗を掲げる少女と、やはり旗を掲げた船に乗る少年。一瞬のことで定かではないが少女の「船の挨拶みたいだね」。というセリフがあったかもしれない。 私は先日房総へ出かける前に、この国際信号旗について調べた、と書いた。これは旗の組み合わせにより様々な意味の信号になるというものであるが、何故調べたかというと三島由紀夫に『船の挨拶』という戯曲があり、それを作品化しようと考えたためである。三島が『潮騒』の取材で三重県の神島へ行ったことがきっかけで作られた作品で、凡そこんな話である。 ある灯台の海上保安庁職員。毎日通り過ぎる船をチェックしている。船はそれぞれ信号旗を掲げ、彼はやはり船に向け灯台の庭に信号旗を掲げている。彼はその船からの信号旗による挨拶に倦み果てていた。ある日怪しげな密航船が現れ、銃撃を受けるが、待ち望んだ“熱い火みたいな挨拶”を受けたと感謝して死ぬ。という話である。作中主人公が掲げていたのがW・A・Yの3種の旗で『貴艦ノ愉快ナル航海ヲ祈ル』という意味になる。ちょうどそんなことを考えている時だったので、いきなり少女が信号旗を掲げるシ一ンを見て驚いた、というわけなのである。『コクリコ坂から』はひょっとしたら『船の挨拶』から着想を得ているのかもしれない。 ジブリ作品は背景が益々凄いが、残念ながら人物の造形が趣味に合わないのでちゃんと見た覚えがない。

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