明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



来月9月22日~10月2日 高輪のギャラリーオキュルスで渡辺温オマージュ展《アンドロギュノスの裔》が開催される。渡辺温の短編は独特のもので、たんにその情景を具体的に画にしたとしても、おそらくニュアンスは表せない類の作品である。私は小説など読むと、常に情景が頭に浮かび続けるのだが、文章と浮かぶ情景の間にあるものが不思議な余韻を残す。私にとってまったくの難物である。だいたい渡辺温の写真が少なく、作中に本人を登場させる、いつもの方法は無理だろうと考え、イメージ写真でも、とオキュルスの渡辺東さんにお伝えしたが、できれば渡辺温像を、と資料を二冊送っていただいた。それでも掲載された写真は非常に少なく、小さくかつ不鮮明である。ただここまで無いとなれば、あるていど好きに判断創作しても良い、ということでもある。以前写真が1カットしか存在しないブラインド・レモン・ジェファーソンを制作した時、私は彼の後頭部をゼッペキだと判断した。彼の後頭部の形状など誰も知らないのだから良いのである。

先日定年で青森に帰る後輩のSさんの送別会の帰り、錦糸町のサウナを付き合ったKさん。翌日も駅に送る前に最後ということで朝から飲んだらしい。そのころ私に、このあと某所でスッキリした後、夕方飲もうと相変わらずのメールが着たが、体調悪いということでその日は会わなかった。しかし後で聞くと駅で去っていくSさんに「俺を置いていくのかー!」と大声で叫び号泣してしまったそうである。酔っているとはいえ、何しろ四十年近い付き合いである。寂しがりのKさんらしい話である。アンソニー・クインに若干似ている強面のSさんは、一切振り向かなかったそうだが、Sさんも泪をこらえていたらしい。日ごろKさんに聞かされる女に泣かされた話よりよりよっぽど良い話であった。  

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