本日より金沢の泉鏡花記念館に写真作品が展示される。『貝の穴に河童の居る事』からはカラー作品4カット。昔、吉徳の“人形は顔がいのち”というCMがあったが、人形制作する私からすると、河童がジタバタと人間どもに仇討ちしようとする物語は、極端にいえば主役の河童の三郎の表情のためにある、といっても良いであろう。特に三郎の目に物いわせた、表紙と表紙になり損なった沼に半身浸かっているカットを選んだ。実際は20数センチの三郎が、プリントとして拡大されての、“こっち見てる”感を御堪能いただきたい。観る方には三郎は何を想うように見えるであろう。ちなみに表紙の三郎を見上げる亀は合成ではなく、たまたま現れた亀で、外来種のミドリ亀であったら当然使えなかった。直後にすべってドボンと落ちたから日本の亀は鈍臭い。それと東雅夫さんに“呵々大笑い”していただいた、柳田國男演ずる灯ともしの翁と三郎の見つめ合うシーンである。仮に『やっと会えたね』とでも名付けておこう。それに先日書いた、このぐらいやらないと収まりが着かなかったクライマックスの大団円シーンである。他2点は96、7年に、金沢に鏡花像を持って行き現場で撮影したモノクローム作品と、古典技法のプラチナプリントである。 鏡花作品のビジュアル化の難しさに少々苛立ち、腹いせに、ばい菌恐怖症の鏡花が嫌いな蠅を3匹三郎にたからせ、洟まで垂らしてしまったカットは遠慮しておいた。鏡花記念館は鏡花の生家跡に建つ。鏡花が観に来ないとも限らない。
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