明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



永井荷風の短冊“夜ごと鳴く虫もいつしか枕もと”をむき出しはいけないだろう、とヤフオクで古い短冊用の額を落札。昔入手した久保田万太郎作という、落ちてた釘で引っ掻いて書いたような“灰ふかく立てし火箸の夜長かな”とある徳利も久しぶりに出てきた。これで一献と常々考えていたが、見た目はそれらしくしているものの、ヘタクソすぎて使う気がおこらなかった。一応陶芸をかじったことがあるので、ド素人の作と判る。 せっかく行灯があるので寝床で読書しながら、ちょっと飲みたいと思いつつ止めたことは書いた。注ぐことを考えると、うつ伏せだと面倒だからだが、かといって茶碗では無粋である。小さな杯でチビチビやりつつ『嗚呼私はなんてチビチビした人間なんだ。』と飲むから良いのである。そこで日本酒で飲ろうと思うのが間違いで、度数の高い焼酎でいけば、シミジミとした様子を味わいつつ、面倒もなくなるではないか、と思いついた。 夜中の4時過ぎ、隣の部屋から、私にバレないように注意しつつ、おそらくアンパンの袋を開け、食べている母の気配がする。「アンパン食べてるだろ?」「判る?」「夜中にそんなもの食べて、身体に悪いだろ。」「大丈夫々。」全盛期80キロ超級だった母も老境に入りすっかり痩せ、特に今年に入ってからゲッソリしていたが、周囲に心配されるわりに食欲は旺盛で、最近少しふっくらと回復してきた。「いい加減にしとけよ。」しかし話しかけてしまったのがいけなかった。ショートステイの老人ホームで仲良くなった婆さんの話が長々と。行灯の灯りで聞くような話ではない。母が次にショートステイに出かけるまで、この風流作戦は中止。灯りを消した。

河童が人間どもを懲らしめるため、大きなイシナギを座敷に放り込んで欲しいと鎮守の森の姫神さまに頼みにいったが、今はクジラでも放り込めるらしい。

http://iinee-news.com/post-9101/ 

石塚公昭HP

『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回



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