明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



一昨年の深川江戸資料館の個展で数年ぶりに会った高校時代の友人Aが、真空管のギターアンプを作ってくれるといったが、部品がそろったと連絡が着た。リバーブを付けてくれるよう頼んである。 私は中学生の頃からエレキギターを作ろうとデザインしていたが、実現したことはない。60年代の国産ギター、いわゆるビザールギターというのが好きなのだが、他人の作った、自分の辞書に載っていないスタイルだから良いのであって、自分の中からは、自分にとって意外な、そんな物.は出て来ない。絵描きの物まねしている芸人のように左手で描いてみたり、眼を瞑って描くぐらいでないとダメだろう。それを数十年かけ悟って熱が冷めた。といいながら、只の板にフレットの代わりに見当のラインををひいてピックアップを着けるだけで良いスチールギターなら、とホンジュラスマホガニーの板は入手済みだが、放りっぱなしである。 口ばっかりの私に対し、Aは、だったら俺が作る、とたいした工具も使わず数台のギターを作った。初代が完成した時ウチに見せに来たが、ダブルネックの様々な機能の付いた異形のギターで、ボデイには形代(かたしろ)が埋め込まれている始末で、横にいた友人が「患者が作ったギターじゃねえのか?」。Aは担当する患者の自殺率の低さを誇る精神科の医師である。送られて来たアンプの画像を見る限り、神霊が依り憑くようなものが封入されている気配はないが。


銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載6回「夏目漱石の鼻」

HP


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