明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



私の作品に登場してもらう人物は皆素人の一般人である。よってどこの誰かは知らないけれど、誰もがみんな知らない所が良い。例えば酒場の見知った常連にお願いした場合、おそらく本人よりも私の方が、こんな時、こんな顔をする、と知っているのは間違いがない。先日5年ぶりに会った漁師役の彼は、それまで全く面識がなかったが、人柄が滲み出ていて、相棒とともに、自分達がどんな目に合うのかも知らず、良い表情を見せてくれた。但し、気を付けなければならないのは、少しでも男前に写ろう、とでも思うのか、直前に床屋でサッパリして来られたのに慌てたり、河童が触ろうとするむっちりとした尻の持ち主の娘のはずが、急に痩せてしまい、それは恋愛事が作用していたらしく、これも慌てたが、おかげで後に 無事二人の子の親となった。先日“谷崎もの”に出てくれることを了承してくれた彼女は、テストで試しに撮ったカットには、実物の良さが全く出ておらず、これは現場で一工夫を要することになるだろう。それで上手く行けば素人ならではのリアル感が出ることになるだろう。素人からオーディションで黒澤映画『影武者』で家康役をやった油井昌由樹さんは、ほとんど一発OKだった、と伺ったが、黒澤と一緒にしてはいけないが、私もほとんど一発で終了であった。素人は繰り返すほどつまらなくなっていく。北野武の『アウトレイジ』で韓国人の大親分の役をやった人は、登場早々すぐに素人だと判った。あの味は演技という嘘を繰り返した人間には出ない類いのものだったからである。 新HP
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2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube



『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載10回『劇場の永井荷風』



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