明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

偏読  


初個展から40年近く経つが、最初のジャズ、ブルースシリーズから現在まで女性を作ったのは、おそらく十体に満たないであろう。人形作家の多くは女性で、作る人形も少女などが多いが私は一貫してむくつけき男性ばかりである。色々理由はあるだろうが、男女を同じ材料、同じサイズで同じ土俵に立たせられる気がしないのである。よって鎮守の杜の姫神様や江戸川乱歩作品に登場する黒蜥蜴のような、現実離れした登場人物を別にすれば、必要な場合は実物の女性を撮影し共演してもらう。それにより作品上では男女のバランスがようやく取れる気がするのである。 女性作家の作品を何を読んだか、というと、エッセイを別にすると、指折り数えて中学生の時に読んだ樋口一葉『たけくらべ』パール・バック『大地』メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』で止まってしまうのである。そんなバカな、と自分でも思うし、思い出せないだけだと思うのだが、私が男ばかり作ってきた事と無関係ではなそうである。思い出してみると、中学生の時に谷崎潤一郎を授業中にも読んでいたのは、未知の、人生上の秘密が書かれていると考えていたからであろう。でなければ『瘋癲老人日記』や荷風の『濹東綺譚』を繰り返し読む中学生はへんであろう。作家が人生上の秘密を解き明かそうとする人々だとして、私が小説を読むのが未だにそんな理由だとしたら、男である私が女流作家に興味が向かない理由にならないだろうか。
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2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube



『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載10回『劇場の永井荷風』


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