明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



泉鏡花に触れたのは小学生の時TVで観た、高野聖を原作とした『白夜の妖女』(日活)であったが、最初に読んだ高校生の時から、毒の回り方は最速で、気がついたら一人山深い所を歩いていたり、座敷に妖し気な女が俯いていたりした。 鏡花は言霊の存在を信じ執筆の前に、原稿用紙にお清めの水を垂らした。あらゆる文字を大事に扱い、文字が書いてあると箸袋さえ捨てられない。鏡花の文章には鏡花がなにがしかの術をかけていたに違いなく、毒の回りの早さを考えると、そうだとしか思えないのである。明治、大正、昭和を生きた作家だが、晩年は、時代遅れの古臭い作風と見なされていたことはいなめない。しかしだからこそ、それ以上は古びない。おかげで今でも舞台、映画化されているのだろう。 西洋から陰影、遠近法かもたらされ、そのリアリズムに葛飾北斎を始め、日本人画家は感化され現在に至っているわけだが、泉鏡花は時代にかかわらず自分の小説世界を守りきった。海外から英訳本のオファーを受けた鏡花は「あなた方に解る訳がない」。と断っている。 新HP
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2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube



『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載10回『劇場の永井荷風』



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