明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

矛盾  


新版画の川瀬巴水が、陰影があったりなかったり、室内の人物と風景の場合を使い分けているのを見て、陰影を消すといっておきながら、行灯の灯りを半裸の女性に当てる誘惑に勝てず、その矛盾に身悶えしていた私は 目から鱗であったが、さすがに同じ場面内で矛盾があってはならないと思う訳だが、深川江戸資料館の『江戸からの旅人、杉浦日向子の世界』にも複製を展示していたが、日本人離れした夜の陰影表現で知られる北斎の娘お栄は『春夜美人図』で石灯籠の灯りを描写しているが、肝心の顔と腕には一番明るいという理由にかこつけ、陰影を施していない。輪郭線による従来の浮世絵調にリアルな陰影は、もはや限界というところであったろう。それにしても。本当のことなどどうでも良いといい続けてきた私は、そのわりに律儀に融通が利かないところがある。蝋燭の炎を筆で描いておきながら、水はどうするんだ?何て考えている。陰影を描かないということは、艶や反射も描かないということになるだろう。となると小川のせせらぎも滝の流れも、ただパチリとシャッターを切れば良いということになりそうにない。日本画の遠近法を写真に取り入れようと、グループ展に出品し、その矛盾に耐えられず、二回も差し替え、挙げ句に断念したのは昨年のことだった。

新HP
旧HP
『石塚公昭 幻想写真展 生き続ける作家たち』 2018年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutube
2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube

『江戸からの旅人、杉浦日向子の世界』深川江戸資料館葛飾北斎と古今亭志ん生像展示


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