明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



久しぶりにオイルプリントをやってみて、身体に覚えさせることの大事さを実感した。難題に対した時に身体が“この場面知ってる”とコンマ何秒のタイミングで反応しているのが判った。寿司職人が、米粒一つ違わずに握るなんてことは、長くやっていれば誰でも可能であろう。私は学生の頃から長らくインスタントラーメンを常食していた。なるべく働かず、制作時間を稼ぎたいなんて了見の人間には有難い物である。もっとも後にビタミン剤の効き目を実感することになったが。愛用の片手鍋で水を入れる時に、チョロッとこぼす。計ったことはないがグラム単位で正確だったろう。スポーツも同様であろうが、日々の繰り返しがものをいう。頭で考えるのではなく、身体が反応してこそ。そうならないと話しにらないジャンルというものは間違いなくある。自転車など、子供の頃覚えたものは忘れないともいう。ただし例外はある。幼い頃、夏休みに父の故郷の茨城で竹馬を覚えた。帰ってきて、地元下町に竹馬を持ち込み流行った。近所に国鉄の官舎があり、おそらく踏切用ではないかと思うが、竹を沢山蓄えていた。もちろん勝手に持ってくるのだが。得意になってずいぶん遠くまで出かけたものである。 それから幾年月、私は四キロ四方人の住まない茨城の廃村に陶芸学校の先輩二人と暮らしていた。娯楽もない。土間に竹が生えてくるような所なので、竹馬でも作ろうということになったのだが、自信たっぷりのはずが、まったく上手く乗れない。小学生の時とは体格が違う。サドルに身体を預ける自転車と違って、全身を使うせいか身体に覚えているはずのデータが役に立たなかった。つまりラーメンで水をチョロッと、というのも愛用の鍋であったからで、鍋のサイズが違えばそうはいかなかった。鍋のサイズにかかわらず、なんていうのが名人というものなのであろう。

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『石塚公昭 幻想写真展 生き続ける作家たち』 2018年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutube
2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube

『江戸からの旅人、杉浦日向子の世界』深川江戸資料館葛飾北斎と古今亭志ん生像展示


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