明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



95年のある日、初めて自分の作品を被写体として、人形作品と並べて展示するため撮影していた。ブラインド・レモン・ジェファーソン。盲目のブルースマンである、写真は斜めを向いた一カットしか残されていない。ブリキのカップに聴衆が金を入れる。音でいくらか判った。 壁と床を作り、窓からの自然光が三角形の形を描いた。今日はここで稼ぐことに決めたブラインドレモンである。モノクロ、カラーで撮り、全てそのままにして翌日の同時刻、念の為もう一度。しかし全て同じはずが何か違う。写真を始めて間がない私は考え込んだ。被写体は全く動いていないし光も一緒である。結論は、昨日と違っていたのは私自身だと。つまりシャッターチャンスも外側でなく、自分の中に在るのだと思った。それから、シャッターチャンスどころか、外側にレンズを向けず、眉間に当てる念写が理想というには、さほど時間がかからなかった。 幼い頃、頭に浮かんだイメージは何処へ消えて行ってしまうんだろう?と思った。ならば消える前に念写しておこう。と今に至っている。



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