明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



工芸学校時代の友人が、父親の死の直前、感謝の意を伝えた話を聞いたことがある。普段はそんなタイプではない。二人だけの時に、そっと伝えたのだろう。もし父親がまだ意識がはっきりしていて、死ぬつもりがなければ、息子がこんな似合わないことを言うくらいなら、俺はもうダメだろう、と思うんじゃないか?とも思った。 ホームにいる母は転院する前から食欲がなくなり、ぼんやりするようになってしまったが、今何を作ってるの?という話から、近作の話から、どさくさに紛れて感謝を伝えた。母は「感謝してるんだ?」と笑った。そもそも母のためにいった訳でもないし、二度というつもりもない。元気な時にいうのはバツが悪いし、私こそ言いそうにないセリフに、場合によっては泣かれる可能性もあったろう。幸い、もう死ぬんだ?という状態でもない。親不孝息子が感謝を口にするには良いタイミングであったろう。



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