明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



スケジュール的に追い詰められてくると、石の下から這い出してくる魑魅魍魎のように、私の前に現れる恐ろしい敵がいる。これは私のマゾヒズムに由来する物ではないかと思うが、この期におよんでニューアイディアが湧き出してくるのである。それはトッド・ブラウニングの『フリークス』の一場面のように、地面を這うように私に向かってジリジリと迫りそして苛むのである。これは前触れもなく棚からボタ餅が落ちてくるように湧くので、自動車事故と違って防ぎようがない。そしてこれが決まって誘惑的なアイディアなのである。 昨日、鮎川哲也賞授賞式会場で一つ上から落ちてきた。きっと横で私に向かって「間に合うんですか?」といった人物のせいである。こんな時の私の不安感を餌に、この敵は生きている。 このブログでもたまに、こんな物は作るわけにはいかない、などと書いたときは、おそらくどこかで作ることを決めているので、内容に関しては一切書かないことにする。そして、まずやるべきことをちゃんと済ませ、余裕があったら手掛ければ良いではないか。「ウン判った」。私は幼い頃から何度そういってきたであろう。こんなことが、これからしばらく続くことになる。悪魔は間違いなくいる。

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房総に行ったとき、一番シャッターを切ったのが海、空、次に焚き火であった。焚き火を都内で、しかも夜撮影するのは無理であろう。サンマを七輪で焼いていて通報されるご時世である。その時は今やっていることに使うとは思ってもいなかった。あの段階では、「飛び越えて来い」の初江、監的哨のシーンの焚き火のつもりであった。ところがあれだけ撮ったのに、結局実際には思っていたようにはいかず描いた。焚き火を使うことはもうないはずであったが、消去しないでよかった。三島で“焚き火”といえば『金閣寺』である。 夕方30分ほど遅れて飯田橋の『ホテル メトロポリタン エドモンド』へ。数年ぶりなので道に迷い通行人に「デスモンド ホテルは?」それはクラリネットみたいな音を出すサックスプレヤーである。でも通じた。送られてきた地図は見えないよう握り締めていたのはいうまでもない。地図を持ちながらでは恥ずかしくて道は訊けない。 授賞式会場へ。人のお祝いに出かけている場合ではないが、出欠のハガキを投函したときは、渡辺温があれほど難航するとは思っていなかった。今回個展でお世話になるギャラリーオキュルスの渡辺東さんもお見えになるだろうと出かけた。会場に着くとTさんから、私の個展のDMに文章を書くことになり、と伺った。初耳である。東さんから頼まれると嫌といえないのは私も経験済みである。なにはともあれ有り難いことである。これで3人の方にお書きいただくことになった。DMが一番立派だったといわれないよう、数人にご挨拶し、とっとと退散して制作を続けたのであった。

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寝る時間を削り、個展までの時間を捻出しよう、という作戦は、あまり頭の良い作戦とはいえない。歩いては斜めに進む有様で、世界との間に薄い膜があるようでつねにフラフラしている。酒を飲んでも妙に効いてしまう。こんなに効くなら、何も腕立て伏せしたり走ったり、唐辛子を入れたりしなくても良かったではないか、あの頃の私。 しかしそうはいってもこの作戦、まんざらではない。昨日K本に寄ったが、三杯も飲んだら眠いのか酔っているのか判らず、これはさすがに寝ないとならないと早々に退散した。そしてオキュルスに持っていく個展DM用のデータを完成させ、友人各位に送信。評判も上々である。良かったもう寝よう。ところが寝しなにちょっとやり始めたら別バージョンに突入し、朝までかかってパワーアップ。各位が出社などの時刻を見計らって再度送信すると、全員こっちだ、との返事。“景気が良い”というコメントが3名。寝ていたらこの作品はなかったかもしれない。寝てる間は死んでいるも同然だ。というわけで。11月25日より12月2日。オキュルスにて三島由紀夫オマージュ展『男の死』。会期中無休。

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怪獣が完成。ドラゴンなので蝙蝠のような翼を付けたが、尻尾の先に銛や矢じりみたいなのを付けると、同じ竜でも西洋風ドラゴンになる。しかし作ったは良いが、これを使うと私は本気で考えているのだろうか。深夜書いたラブレターはすぐに投函せず、朝日の下で読み返してみるべし。 齢とともに睡眠時間が短くなったが、起きている時間が長いので、その分長生きしているのだ、ということにしているが、しばらく個展から遠ざかっていたせいで、ペース配分が上手くいかず時間が足りない。そこで睡眠時間を削る作戦に出た。個展までの日にちが延びたことにしよう、というわけである。うどん粉に水を加えて量を増やすようなものだが、それはもんじゃだろう、などと東京でいってはいけない。まず寝床の背中あたりに物を置いて寝心地を悪くした。 ドラゴンを作りながら、先日家に来た秘策を撮影している。なかなか簡単にいかず何度も撮りなおしているが、私のような手法にはデジタルは現像を待つ時間がないのが助かる。また何時間モニターを見つめていても全く目が疲れない、というのも実に有り難い。

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気がついたらTVのリモコンが水に濡れていた。拭いて乾かすとオン、オフ、チャンネルの切り替えなどは無事であったが、肝心な地上デジタルに切り替わらない。これはつまり、TVなど観ている場合ではない、というお告げであろう。
制作中のドラゴンだが、どうしも東洋的な龍のようになってしまうので、急遽頭でっかちで短い顔に作りかえた。トゲトゲのティラのサウルスのような感じだろうか。 それにしても、この齢で怪獣作ることになるとは思わなかったぜ金子君。 金子君は小学一年生の時に、油粘土で作った怪獣の背中を指で順番につまんでいくと、自動的に背びれが出来る方法を発明した。欠点といえば指で摘んだだけなので、鋭角的ではなくサザエさんの頭のような丸っこい背びれが並ぶことになるのだが。 休み時間の終るチャイムが鳴ると、それぞれが怪獣になった気になり、それまで作った物を一挙に破戒して粘土臭い手を洗いにいくわけだが、エンピツを何本も柱にして、モノレールを作ったのを壊した際に、鉛筆の芯が手のひらに刺さった。その痕が小さなホクロのように残っていたのだが、ひさしぶりにそう思って見たら、かすかに判る程度になっていた。 そういえば、私が作ったゴジラの腹の中に、死んだフナを入れたのは金子君だろ?

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