明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

K本  


久々に粘土を注文し、うっとおしかった髪を切る。本当はこれを書いた時点で髪は切っていないが、こう書いておけば、K本に行くまでには切らなければならない。 現在、毎日通える超常連だけが顔を出している状態で、片付けから勘定まで自分たちで済ませていて、とても他の客を受け入れられる状態ではない。出てくるのは豆腐半分の冷や奴のみである。K本の皆さん御高齢で、以前のように営業再開することはなさそうである。昨年6月以来冷凍したままの煮込みもどうなることか。 私には女将さんの顔を見られないK本は考えられない。現在の状態は、10人ほどの地下壕での残党の寄り合いの如きものである。風通しが良く、人の出入りがあるのが本来酒場というものであろう。電灯も当たらず、使われる事のない店の奥が最近、増々霞んで見えるのであった。

石塚公昭HP

『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




雑事の合間に読書したり、しばらく弾いていなかったギターを弾いたり。このギターがヘタクソで、やる事がすぐなくなってしまう。そのせいでそろそろ何か作りたくなってきた。 もう亡くなってしまったが、幼稚園児の頃からの付き合いのNとギターを弾いたりを始めたのが中学生の時で、当時フォークギターに段ボールやタッパがドラム代わりで、ハイハットは蒸し器であった。そこへNが秋葉原で1000円のラワン製エレキギターを見つけて来た。高校生になると、置き場所に困った同級生からドラムを借りてきたりベースが導入されたりしていった。それでも私はギターを弾いても1時間もすると飽きてしまったが、Nは皆で話していてもギターを手放さず、ウルサいから止めろ、としょっちゅういわれていた。Nを見ていて将来何時間、何日続けても飽きない仕事ができたら良いな。と思った。当時飽きないといえば読書であったが、本を読むだけ、なんて仕事はなかった。

石塚公昭HP

『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回

 

 

 

 

 

 

 

 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




撮影用にヤフオクで入手した行灯。なかなか妖しい。以前、小型の行灯を持っており、低いお盆にお銚子で、寝床で本を読みながら日本酒を飲んだものだが、当初シミジミとして鏡花など読むには良い、と思ったが、お銚子でチビチビがだんだん面倒になる。一升瓶に茶碗酒だと、これもイチイチ起きるのが面倒。そうだヤカンが良い、と思った時点で行灯で寝床の飲酒は止めた。 夕方より人と会う。昔、某作家を怒らせ、謝罪にいった話を聞く。訪ねると野球中継の大きな音、呼び鈴押しても誰も出てこない。時間をつぶして何回目かに、友人と飲みながら野球を観ていた、とようやく入れてくれるが、どこもかしこも本だらけ。謝罪に来たのだからと正座するとその下にも本。先ほど友人が飲んでいたコップを洗うこともなくウイスキーが注がれ、脚も崩せず2時間だったそうである。この手の話は人事だと面白い。私は昔、宣材として貸したポジフィルムを無くされ、謝罪を受けたことがある。間に入った男とは未だに付き合いがあるが、帰りに◯◯の仕事は二度とあるとは思うなよ。といっていたそうである。実際に仕事は来なかったが、男は後にサーフボードが頭を直撃、亡くなったそうである。「あいつあの時、高級チョコレートなんか持って来たろ?あれがいけなかったんだな」。

石塚公昭HP

『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回

 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




人形の勉強とか写真の勉強はできるだけしないようにしている。一度入った物は簡単には出て行かない。情報過多の時代、自分で身を守らなければならない。しかし他ジャンルに関しては別の話で、今一番の関心事は日本画である。イメージを絵にするためにはなんでもやってしまう、というところが頼もしい。Ⅰ枚の絵の中に時間経過まで描いてしまうし、自分のイメージのためには形だって変形させてしまう。 私はまことを写す、という意味の写真という言葉を蛇蝎のごとくに嫌ってきた。作品に関していえば、外側のことはどうでも良く、まことを画面から排除する事にひたすらファイトを燃やしている。 額にレンズを向ける念写ができるならば、粘土をこねくり回す必要もないわけだが、被写体まで作るという面倒なことをすることが、感心されるくらいなら呆れられたい私の最大の武器だと自覚している。夜中にこんな馬鹿馬鹿しいことは誰もやるまい、とほくそ笑む時、多量の快感物質がにじみ出すのを感じるのである。これも一種の中毒症状といって良さそうである。 これは単に制作上の話である。別の意味で呆れられても困る。

石塚公昭HP

『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


   次ページ »