採光確保の為に高さを目一杯押さた増築建物。
故に屋根裏という物が有りません。 屋根材の下がすぐ部屋の天井になるのですね。
「仕方ないね」、とばかりに、そのまま何もしないでいると夏場に蒸れて焼けきり、冬場は結露したあげくに寒くて仕方ない。
そこで屋根通気工法を取り入れました。
*今回は余り良い写真が有りません。 この頃建築に夢中で写真を撮るのを、いつも忘れていました。(笑)
本来、屋根裏は、屋根が、雨を如何に効率的に落とすか? と夏場の暑さをどうやって下に伝えないようにするかで大きさや形状が決まり、
それ以外に収納庫を設けたり、建物外観を美しく見せる為や、道路斜線などの法的制限にかかって建物一部を切り掻いたり等と、必要に応じて形が変わるものです。
寄棟、切り妻、片流れ、陸屋根等々たくさんの種類が屋根にはありますが、今回の増築では、以前も書いた様々な理由によって、片流れ屋根以外は、全て選択肢からはずしました。
それ以外のにも理由があって、建築において屋根というのは金食い虫であるということ。
複雑であればあるほど、格好良く見せれば見せるほど、高級な材質を選択するほど、バッカみたいにコストが上がっていきます。
屋根裏の屋根梁から垂木まで、重い屋根材を支える必要から、構造的に木材がどんどん増えて重くなり、更には膨大な手間がかかったあげく、反対にどんどんと雨漏りの可能性が高くなっていく・・・・
とにかく”無駄をなくして単純化”というのが僕の考えですから、構造的に限りなく簡単、安く、メンテナンス性に優れている上に、建築のしやすさという点を全て満たすのが、この屋根なのですね。
工法としてはトラスを組む垂木方式、屋根梁式など各種有りますが、片流れなら、壁パネルとの接合部分を部分をきちんと切り掻き処理をしながら、並べていくだけですから、難しくもなんともない。
誰にでもできます(笑)
プレハブなんかも基本的に片流れと似たようなものです。
パネルの上に載せた垂木は、全てハリケーンタイで固定し、完全な台風対策を取ると同時に2x4材にに多いねじれを ころびどめ(木材と木材のあいだに入れる短い板)で修正しながら施工していけば、容易に精度も出る。
けらば等の屋根の張り出しは必要最小限にし、足場いらずでメンテナンスが出来るようにしています。
*ハリケーンタイ の金具が並んでいるのが見えます。
今回、設計段階から通気工法を前提としていたので、使用したランバーサイズは2x6です。
垂木間隔は300mm、前後のスパンを短くしていますから積雪地帯並みの強度を確保。
しかし、屋根下地合板約15枚で150kg、屋根材17パックで約500kg、釘だアスファルトルーフィングだ、板金だと50kg、計700kg
計算で何ら問題ないことは解っていても、実際に2x4建築に使用するランバー材というのはすごい物です。
この間の雪が25cm~30cmで200kg近く屋根の上に載りましたが、建物内部で屋根がどれだけたわんだのかを測ってみましたが、メジャーによる手測りだと測定出来ない程度の物で、たいした物です。
ちなみに二階の床(一階天井)梁はこの屋根材の倍近い物を使っていますので、その強度は体の感覚として捕らえることはほぼ不可能。
建築法では集中加重として1平米あたり約180kg(大人3人分)の重さに耐えるように住宅の床を設計せねばなりませんが、単純に二階が20平米あると 3.6トンに耐える事になる? 家のキャンピングカーが載せられる?
安全という面でシロが有りすぎというか、過剰設計というか・・・・(笑)
まあ実際はこんなに加重がかかる分けではないので、分散加重的に見る必要が有るのですが、それでもすごい値になる。
梁のスパン考慮は 各種数値をいれて計算する方法と、単に公庫等が出しているスパン表を元にして考慮する二つの方法が有るのですが、計算だとやたら煩雑な上に大抵はスパンが短めになる?
さらにアメリカのスパンと日本のスパンの考え方は微妙に違うし、等級なんぞも有り、アメリカとカナダで、これまた製材メーカの計算でもなぜか違いがでる。
いったい何を元にすればいいんだべな? となるのですが、今回は増築工事で使用しているカナダの2x4材メーカーで、提示しているスパン表と計算式をつかって家を造っています。
材料を出している処のものなら、問題ないだろう という極めて単純な発想ですが、これだと二階の床梁は全く問題なしで、でも公庫仕様からすると、なんとかパスする感じです。
メーカー保証としての強度は十分だが、一応等級は付いているが、実際は劣悪な2x4材が供給されたりなんぞということを全てすべてひっくるめ、これなら安全だろうというの公庫の基準だと、どうしても厳しくなる。
さらに日本の方は耐震性という点でも余裕を見ているのですが、車なんか載せないし・・・ いやいや、冗談です(爆笑)。
さて、この2x6というサイズですが、出来るだけ安価に通気工法を確保するうえで幅140mmというのは魅力なのです。
*ころびどめ(高さ89mmの2x4) と 屋根下地材との間から通気口の光が漏れているのが分ります。
屋根裏に使用する断熱材は、通気工法故にグラスウールではなく、厚さ50mmのスチロール系で、これを垂木と垂木の間に挟み込むようにして全面施行。
こんな感じで施工。
http://www.asahikasei-kenzai.com/akk/insulation/pdf/yanecut_brochure.pdf#search='屋根断熱 施工'
*ちなみに僕の設計だと、単純に垂木間へ断熱材を押し込むわけではなく、通気が常時行われる工法で有ることから、このホームぺージの効果より格段に優れています。
はず?(爆笑)
断熱材と屋根下地合板まで高さ90mmの通気高が確保されますが、垂木どうしの間は260mmあり、空気の流れとしては十分過ぎるくらいの通路面積です。
これが2x4だと37mm程度の高さとなり、空気の流量が一気に低下。
同時に、加熱した屋根材の放射熱が十分奪われる前に断熱材の上に放射され、思った効果が得られない。
そのために、メーカーではアルミの反射シートを適所に葺くことで熱を反射させる手法を用いているところがあります。
実は僕も、断熱材の上か、屋根下地の上に敷かれるアルファルト防水シートの上にアルミシートを置こうかと散々迷いました。
でも、このシートはプチプチのうえにアルミコートしたものか、薄い発泡材の上にコートした専用の物で、まだ新しいものですから?信頼性に疑問があるうえ、バカみたいに高いのでやめました。
断熱材の上に載せる事も考えましたが、断熱材との上手い接着方法が無く(つるつるのアルミ面を接着する方法が無い。
さらには高温と寒さにさらされる場所故に、はがれて通気路内で丸まったりでもされたら、えらい事になる。
まあ、屋根下地と断熱材との間に適度なクリアランスがあれば良いわけですが、かといって2x8だと幅184mmで通気面積が広くなりすぎて、今度はそれが建物の高さをもたらすか、室内高を圧迫し、結局無駄な空間になる。
垂木の先端と末端は常時オープンとなりますから、ここには虫が進入しない径の穴が無数にあるパンチメタルを設け、同時に、適度な空気流入を確保します。
これがないと、もし強い風が吹き込んだ時に騒音(笛のような音)が出るので、それを防ぐ効果を持たせています。
*普通の屋根裏換気口なんか下手に使うとメッシュが荒すぎて、冬場にカメムシとテントウムシの集団住まいとなるので、
こうした専用の物で無いとボツ
実はあまり知られていないことですが、最新の通気工法だと言って、下手に飛びつくと、施工する大工の技量でまずいことになる。
それは通気路に入り込んだ風の強さと向きによって笛のような音を出すトラブルが起き易く、この辺をよく理解していないと、あとでとんでもない事態になったりするのですね。
結構難しいです(笑)
さて、こうして通気開口部をもうけているわけですが、上記の理由から、特に冬の北風対策で開口面積を小さくする調整を行わなければならないのですが、そうすると今度は逆に、大量の通気を確保したい夏場に不具合が出る。
*調整ダンパー等を設けようものならコストバカ高だし、壊れたり、最後には誰も操作しなくなるので
こうした複雑なものはつけません。 単純であるほど良いのです。
まあ、今回は母屋建物の段差の関係で、母屋が北風をさえぎってくれますから、その辺の心配は有りませんが、そのまま、開け放っています。
どんな感じでエアが流れるか?ですが、下の図のようになります。
*流体論というのはそれなりに難しく、エアコンの空調サーキット設計等もその一つです。
下図のようになります。
相変わらず汚い手書きですがご容赦ください。
*垂木の幅140mmを160mmと書いています、間違えです、バカですね~ ハイ!
まず、左の上はエア流れの概略図、
母屋と増築建物の間は、地震の際に建物が共に揺れることから、相互にぶつかり合うことが無いように横に100mmほどの空間を設けてあります。
これを通気に利用しているのですが、建物は上下に飛び跳ねる事は殆ど考えなくて良いので、50mmの空間に留めている部分もある。
夏場に気温が上がると、建物全体は上から温まっていくので、床下の空気がこのクリアランスを上昇してきます。
ベランダのところまで来ると、(図の上右)増築建物の屋根が、ベランダの端を適度に覆いかぶさるところまで設けられているので、
登ってきた床下空気は通気口に吸い込まれ、最後に南側末端より放出される。
もちろん増築屋根にさほど太陽光が当たらない状態(空気の流れが少ない)では、床下の空気は殆ど吸い込まれず、それどころか母屋側のベランダ側に出て行く量のほうが多い。
やがて太陽が昇り、増築建物の屋根が加熱して流れが加速し始めると、屋根通気室は床下の空気をどんどんと吸い込み始めます。
吸い込まれた空気は、屋根裏を冷やし、屋根材(コロニアルベスト)の熱を奪いながら放出口より排出されますが、 その空気の流れで下の部屋に熱が伝わっていくのを遮断するようにしているのです。(下の図)
それじゃ、もっと効果を出す為にベランダ側の口を塞いでしまった方が良いのではないか?という疑問が沸いて来るかと思いますが、
それだと、夜間や梅雨の時期などの、太陽が出ない時に経路内に空気の流れが留まり、そこにかならず湿気が蓄積されていきます。
*空気は流れが止ると必ず湿気を蓄積させます。
その状態で室内エアコン等を使用すると、いくら断熱材を使っているとはいえ、結露が始まる。
ゆえに、適度に開放状態を設ける事で、有る程度の空気流れが起きるようにしておく必要が、どうしてもあるわけです。
この計算が難しく、自分でもパーフェクトに機能するか分りません。
ところで、耐震の為に、何故?増築建物と母屋の間にクリアランスを置くのかですが、普通は増築建物が母屋に完全ジョイントした施工が当然だと思われていることからくる、当然の疑問なのですが、
そもそも母屋は軸組み工法、増築建物は2x4で、地震発生時の揺れ方がまったく異なります。
それを無思考に相互ジョイントすれば、その部分に莫大な力がかかることになって、柱などが折れたり外れたりと、壊れる上に、へたすりゃ倒壊しかねません。
増築部が平屋建てなら何とか接合する事も可能でしょうが、大抵は接合部分に亀裂が入り、後で雨漏りを起こすトラブルが多い。
ましてや、二階建てですから、絶対に直接合できない。
そこで、母屋の建物外壁を一切壊さず、建物相互の接続はジョイントエクスパンション構造にして、互いに力が干渉しあわない構造にします。
*実は外壁材のサイディングも耐震性を考え、柔軟性のある、しかも安価で特殊なものを選定使用してあります。
え~と、確か建築法では、地震時の建物揺れは、最大建物高さの300分の1以内としなければならないはずだったな・・・ あれれ? ともろ忘れ気味(笑)ですが、
大体6mの建物だと、2~3センチの揺れまでが許されるという事なのですが、実際に震度7クラスが来ればそんなものでおさまる筈がない。
故に10cmを設けたわけですが、実のところこれでも不安で、しかしながら、震度7クラスだと建物がまずまともな状態で残っているのか?すらわかりませんので、不必要に過剰設計するのはいかがなものか? と、このクリアランスにしました。
そこで、せっかく出来た建物間の隙間なら、なんでこれを無駄にしなければならないのだ? というのが、今回の屋根裏通気工法を併せて採用することになった理由の一つでもあります。
一切の無駄が出ない様にしているのですね。
そのうち耐震対策なんかも書いてみたいと思います。