茅ヶ崎港の片隅に有る、有料駐車場に車を入れると、エンジンを停止。
といってもね、”生しらす”を売っているお婆ちゃんの店の、片隅にある小さな敷地です。
ほんの数台しか置けない、小さいスペースなんですけど、おそらくは浜に一番近い。
ヒッチキャリアがまだ届いていないので、今回はMTBを車内に乗せてきた。
少しでも安くと探し回り、やっとこさ見つけたフルカーボン製車体と、黒い荒馬のエンブレム。
軽いので、積載には苦労しないわけですけど、 車内右サイドの、サイドドア右端付近に飛び出ている、スケートボードのホィールが干渉しないようにだけは注意。
お婆ちゃんの娘さん? それとも息子さんのお嫁さん?に車の鍵を預けると、出がけに「行ってらっしゃい!」と優しいお婆ちゃんの言葉をもらった。
そうして、海に誘われるようにして、江ノ島に続く湘南のサイクルロードに乗り出した僕。
ここから目的地のヨットハーバーまでの距離は約11km、往復で22kmの短距離ツーリング。
もう11月半ば近くだというのに、風は暖かく、ペダルを踏み出して5分も経たないのに、もう背中は汗ばみ始めた。
道ばたに自転車を止めると、パーカーを脱いでTシャツ一枚になる。
「ラッシュガートにすればよかったな~」なんて思ったりも・・・
*右クリックの”新しいウインドを開いて”で動画を再生すれば、日記から飛びません。
【MV/PV】AKB48 - Boku no Taiyou / AKB48 僕の太陽
そんなに広くないし、かといって狭くも無い、この綺麗なサイクルロードは、遙か向こうまで砂浜を割るように続いていく。
耳に入る波の砕ける音と、風切り音。
そして砂のささやく声。
それがこよなく心地よい。
辻堂海岸に近づくにつれて、サーファーの姿が多くなり、 時々ペダルを止めては海と戯れる彼らの姿を見つめる。
同じボードを使うスポーツで有りながら、僕のやっているウインドサーフィンと、サーフィンの大きな違いは、 風の力を推進力にして海面を飛ばすという点。
大きなセイルに風を受け、揚力が生み出す凄まじい力を動力にする。
その爆発力を腕で支えることは到底出来ないので、ハーネスで体に受け取ると、無いはずの軸をボードの上に創りだし、それをフィンとの共同作業で前進力へ変換する。
”風使い”という言葉が、まさにウインドサーファーには似合う・・・・僕はそう思う。
「快適に流せる!」 と言いたいけど、意外に多いジョガー達が少しだけ邪魔でね、
ただ、僕だって彼らにとっては邪魔だろうな、と思うと、特に苛つくことも無い。
「お互い様だ~」なんて思いながら又ペダルを踏む。
そういえば、ビーチサイドを走るに適した太いタイヤに、ボードキャリアを搭載した自転車が本当に多い。
ビーチクルーザーと呼ばれる、この流れるような形状の自転車は、ボードを運ぶに特化していて、キャリアをうまく生かして整然と並べて停められていたり、かと思えば放り投げたように置かれているのもあって、 案外面白い。
やがてすれ違ったのが、ボードを片手で担いだお父さん、そしてそのすぐ横で小さい板を両手で重そうに運ぶ男の子。
年齢にして10歳くらいだろうね、髪からしたたる海の輝きは、その子の心の美しさに思えてくる。
平坦なシーサイドは、特に僕の息をかき乱す程の物ではないけど、時速10マイル程度を維持しながら秋の空気に溶け込みつつ走る。
江ノ島がすぐそこに迫ると、僕は自転車を降りて、押して歩く事に、
島までの桟橋道路は、多くの人たちが歩くには少し狭いから・・・・
500mほど有るそれを抜けると、今度は目の前に沢山のお店が広がる光景。
真正面に、島の頂上へと続く登り道、右には自分が来た茅ヶ崎が見渡せる海。
左にはお土産屋さんと食べ物屋さん。
想像以上に人が多くて、相変わらず歩かされる僕ですけど、ややもして、一通りの店を通り過ぎると、左奥にヨットハーバーが見えてきて、
そのあたりから再びペダルを踏み、今日の目的地である江ノ島ヨットハーバーに到着する。
片道11kmのサイクルロードは、ウインドに乗っているときのような、半端ない体力消費にはほど遠い、わずかなエネルギーの消費量ではあるけど、お腹は確実に空く。
港湾施設の隅にあるお店に入ると、今日は生しらすが入荷しているらしいので、釜ゆでと生の両方を食べたくなった僕は、高いけど少しだけ贅沢。
ドリンクのコーラが不思議と合ってね、とても美味しかったです。
ごちそうさまをすると、ハーバーの中を少しだけお散歩。
ディンギー陸置きヤードを抜けて、敷地の突端近くに有る、シンボル的オブジェを兼ねた高台に上って、海を見渡してみる。
沖には沢山のヨットが浮かび、コーチ達に引きつられて練習している子供達、その向こうでは、やはり子供達のレースらしき物が行われている。
審判艇が、ブイ浮かぶ広い海面をあちこちボートで走りまわり、”正しい競い合いという、海の男となるべき人間性”を育てる、そんな目的とルールの為に併走したり追走したり。
子供達同士で競う事、それは正しい方向で有れば、人間性を大きく伸ばす。
僕はそう思っているけど、同じ方向を向いているのは、マリンスポーツに携わる一部の人間だけになってしまったように思えるこの国の教育の昨今。
さらに右の広い海面、沖にはクルーザーもいれば、大学のヨット部なのでしょうかね?
470級の艇が銀色に輝く沖を疾走する姿も見える。
クルーザー群が見たくなって、ハーバーを戻るようにして歩き始めると、汽走でゆっくりと入ってくるカタマランが一艇。
その向かうところは、係留所。
ヨットを見て歩く僕、といってもね、関係者以外は一応立ち入り禁止なので、遠巻きに見ているだけですけど・・・ いつかは僕も外洋ヨットを手に入れて、世界を巡ってみたい。
そんな夢は昔も今も変わらないんです。
さて、そろそろ戻りの時刻? かな・・・
ワイヤーロックをはずすと、MTBに跨がってペダルを踏み出す。
瞬間、頬を撫でながら陸の方へと去っていく、今日の風。
それが南の風であることを今更知ったけど、真上に輝く暖かきそれは、僕の太陽、そして皆の太陽。
素晴らしい一日をありがとう!