外灯の看板に「人間国宝美術館」というのがあるのに気がついていた。どこにあるのかな、人間国宝の作品を展示してあるのかな、それにしてもネーミングはいただけない、なんて思っていた。
昨日、ハンディに行こうとして、交差点で看板を見た。「人間国宝美術館って、どこにあるの?」と聞くと、「信号の向こうのあの丸い建物だよ」とPapasanが言った。「大昭和の事務所だったとこ?」「そうだよ」「じゃ~、寄ってみようよ」ということで、左に曲がらずに直進して、と言っても交差点をすぎ、駐車場を探すと建物の裏にあった。通路がすこぶる細い。裏手に車をおき、入口の方に歩くと、歩道沿いにコーヒー330円と紙が張ってあるガラスの入口があった。
中に入ると、受付に感じのいい和服の女性がいて、「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。右手には椅子とテーブルが置かれ、喫茶になっているようだ。「美術館、ここでいいんですか?」「はい、お抹茶つきで900円になります」「お抹茶つきとはありがたい」そこで、ドアを開け、向こうの入口の方に歩いていくPapasanを呼んだ。
展示場は2~4階。エレベーターで4階にあがる。ここはビデオコーナーになっていて、スクリーンで作品の解説がなされていた。解説されている作品はスクリーンの左手に今月の一点として実物が飾ってあった。金重陶陽さんの水差しだ。備前の田の土を使ったものだそうだ。重厚だが、温かみのある作品だ。今月の一点は毎月変わるらしい、来月は磁器だと言っていた。ということは来月も来なくっちゃね。サイドのガラスケースには染付けが並んでいる。
4階の窓からのぞくと、高さがあるので、見慣れた景色も変わって見える。海岸の高層マンションが視界をさえぎる。景色を共有するには高くても4、5階がいいところだ。
3階の広い部屋でまず目に入ったのは島岡達三さんの大皿だった。そっちに行こうとすると、「右手にも部屋があるよ」といわれた。あら~、見覚えのある椿の絵柄、魯山人だね。河井寛次郎、唐九朗、加藤卓男など、おなじみの作家の作品があった。奥にジンチョウゲが活けてあった。
そして広い部屋に入ると、お~お~、いいね~、ここにもおなじみの作家達の作品がぞろり。浜田庄司も島岡達三にならんでいる。柿右衛門もある。私は楽15代の作品は好きなんだ。
人形にはあまりお付き合いはないが、「児よろこぶ」という人形は、子どもの表情がとてもよく出ていて、思わず笑みが浮かんでしまった。
2階は色鍋島などの骨董が並んでいる。角には備前の花瓶に活けたランがあった。この階には細川護煕さんの陶器も書もある。7年間、陶芸に打ち込んでいるという。確かに美意識は高いし、別に売る必要はないし、美の探求に専心できるといういい環境にあるから、それなりの品はあるが、名工たちの作品を見た後なので、ちょっと心惹かれない。
展示室は3階も2階もいい空間だ。作品が静かに語りかけてくる。それにわがままな私には、人がいないのがいい。
1階に戻って、お抹茶を頂いた。並んでいる、名工のお茶碗で、お茶がいただけるのである。私は志野を選んだ。私が選んだ志野は鈴木蔵(おさむ)さんの作である。Papasanは細川さんの茶碗をえらんだ。志野茶碗はデフォルメされているけど、両手にすっぽりと収まって、感覚がいい。お菓子は好きなものじゃなかったから、食べなかったけど。お茶を頂くと、アンケートのお願いをされた。素直に、期待していなかったが、内容はとても素晴らしくて、また来ようという気になった、と書いた。ほんと、そうなんだ。
人間国宝美術館HP
http://www.nikobi.com/
HPのご利用案内をあけ、割引券をプリントして持っていくと100円引きになるようだ。