中央と地方のコジキ行為・ムダ遣いの関係

2006-11-01 04:19:41 | Weblog

 国会議員・高級官僚のなすコジキ行為・ムダ遣い、地方政治家・地方公務員これに倣う

 岐阜県庁の前知事時代の巨額裏ガネ問題、5期18年の間クリーンのイメージで長期に亘って県政を担ってきた福島県知事の公共工事談合汚職、和歌山県の同じ公共工事をめぐる談合と出納課長の競売入札妨害容疑、5年間で8日しか勤務していなかったにも関わらず、約2700万円もの給与を受けていた奈良市役所職員等々、このところ地方の側からの犯罪・コジキ行為が美しい日本の伝統づくりに目立って寄与している。中央の犯罪・コジキ行為の影がすっかり薄くなった印象さえ与える。

10月29日日曜日のサンデーモーニングで官僚のムダ遣い・コジキ行為に関しての議論が行われた。司会者は例の太鼓持ち田原総一郎、出席者は自民党幹事長中川秀直、民主党代表代行菅直人、外交評論家岡崎久彦、塩川正十郎。肝心なところだけを拾ってみると。

 岡崎久彦「そういうことを言うと非難ごうごうですけどね、本当なら官僚と言うものは定年までお国のために働いて、後は年金で食えなくてはいけないんですね」
 田原総一郎「そう」

 田原総一郎は先ずは岡崎久彦の意見を肯定する。

 岡崎久彦「そうでしょ。それをね、高級官僚は年金を減らしましたからね。そうしますとね、そうすると天下りするところをつくるね。それから役職中、あのー財産つくるね、そういう弊害が出てくるんですよ。それはね、私はね、高級官僚の年金、みんなから批判されますけども、それは世界的に見て極めて低くなっているんですね」
 田原総一郎「日本の――」
 岡崎久彦「いや、そうするとね、その、どうしても後のことを考えなくてはいけなくなってくるんですよ。本当はね、役人である限りお国のことだけを考えていりゃあいいんですよ」――

 年金を減らされたから、天下りして私利私欲に走る、役職中、財産をつくるでは、会社で上司に注意されたのが面白くなく、むしゃくしゃして帰宅途中の電車の中で痴漢を働くような人間と頭の程度は同じということになる。犯罪やコジキ行為にならないことで生活の手当・人生の手当てを考えるのが最高学府を出て官僚まで務めた人間の才覚というものではないだろうか。言っていることが的外れに思えて仕方がない。

 人間は一方で「お国のこと」を考え、もう一方で私利私欲をも働くことができる、極めて器用にできている生きものだという人間の現実の姿を知らずして、よく外交評論家が務まるものだと思うが、務まっているから、務まるということなのだろう。

 高級官僚が「定年までお国のために働」かないのは、同期に入省した者の中から事務次官を出すと、残りは勇退するといった慣行があって、そのため50歳前後から退職・再就職に向けて準備し、政府関係機関や民間企業に天下っていくという手順になっているそうだが、事務次官と同期入省者が勇退という慣例はどんな意味や価値があるのだろうか。

 事務次官とは事務方のトップである。生え抜きの国家老と言ったところだろう。同期がいたのでは遠慮があって十分に腕を振るうことができないだろうと暗黙の了解からの排除する制度であるとしたら(それ以外に理由は考えられない)、如何に官機構の人間関係が上下関係を絶対とする権威主義で成り立っているかの証明を示すものであろう。能力発揮が年齢や先輩・後輩、さらに多分卒業した大学の格といった序列を額面として、その影響を受ける変数となっていることを意味する。

 その同じ上下の権威主義が天下り先で逆に生きて、自らの存在価値を高めることができる。
 
 中川秀直自民党幹事長が岡崎名外交評論家を遮るようにして口を挟んだ。世間一般に出れば十分に暴力団の親分をやっていける貫禄たっぷりの風貌で、なお且つドスの効いた声をしている。
 「それは岡崎氏がご自身でね、シンクタンクなんかやっておられる。高級官僚はそんな数が多いわけじゃないんですから。そういう形で(シンクタンクのような形で)定年後は60過ぎたら、そういうお仕事なさって、一旦、今度またそういう形で(天下りという形で)戻ってくる場合もあると、そういう形で行くべきだと思う」
 田原総一郎「そこはいいんです」
 中川幹事長「やっぱ、そこはそういう形にしていくべきだと思います」
 田原総一郎「僕はね、官僚の問題、本当にやって欲しいと思ってる。霞ヶ関改革、地方公務員まで。その場合にね、やっぱ岡崎さんが言ったみたいにね、その、年金薄くなっちゃったとかね、それから塩川さん言ったみたいにね、50歳、51歳でやめなきゃいけないとか、そういうことみんな国民が分かるように論議して欲しい」

 田原総一郎はここでは自民党側の言い分に肯定的態度を示す。

 菅直人「田原さんね、高級官僚だけじゃないですよ。道路公団なんかも官製談合になるのは、あるいは高級官僚の防衛施設庁も、殆どすべての役所ですよ。それによってどのくらいの税金がムダ遣いになっているか、私は公共調達と言われるものの2割、3割だと、ということは7兆ばかりの規模なんですよ」
 田原総一郎「ちょっと、なぜ菅さんは前に言ってくれないんです。そういうこと国会でガンガンやってくださいよ」

 次に民主党側の言い分の肩を持つ。その繰返しである。

 菅直人「言ってるけど、逃げてるんですよ。そのことをやらないで、その他の、そのどっちかと言うと、一般職員的なところだけをターゲットにして、中川さんが言われるが、ちゃんと、その高級官僚のその問題をやってくださいよと言ってるんですよ」
 中川幹事長「高級官僚なんか、そんなものは僅かな数で――」
 田原総一郎「そう」
 菅直人「いやいや、凄いですよ」
 中川幹事長「三百何十万一般職員で、金額の方は全然一般職員の方が多くて――」
 菅直人「いやいや、そうじゃなくて、官製談合によるムダ遣いが物凄く多いということです。認めているんじゃないですか」
 (中川幹事長と菅直人の声が重なって聞き取りにくい。)
 田原総一郎「国会でくだらない論争しないで、そういうことをガンガンやって欲しい」
 菅直人「国会でやってますよね」と中川に言う。
 中川幹事長、下を向いたまま仕方なさそうに「はい」(以上)

 「国会でやってますよね」などと、手打ちみたいな尻切れトンボの終わり方は情けない。「言ってるけど、逃げてるんですよ」と一度口にしているのだから、相手が逃げの姿勢であることを印象づけるべきで、「我々の方に詰めの甘さもあることは認めるが、小泉さんもそうだったけど、今の安倍首相も、首相以下自民党は逃げ上手、ゴマカシ上手で」ぐらいは言うべきだったろう。どこが「逃げ上手か、ゴマカシ上手か」と反論されたら、「知っている国民はよく知っている」と逃げ上手、ゴマカシ上手なところを見せる。
 
 中川幹事長は「高級官僚なんか、そんなものは僅かな数で」あって、誤魔化す「金額の方は全然一般職員の方が多」いとして、さも罪が軽いようなことを言っているが、国家機関たる中央省庁に勤める高級官僚と地方機関たる地方自治体の公務員とでは地位・役割の重さに違いがある。当然地位・役割の軽重に伴って社会的責任の軽重も比較対照的に連動する。国家機関に勤める高級官僚の方が遥かに社会的責任は重いはずである。人数が少ない、誤魔化す金額の合計が少ないで片付けることができるコジキ行為やズサンなコスト意識からのムダ遣い等では決してない。地位・役割から考えたなら、高級官僚の方が遥かに社会的責任は重く、その重さに応じて罪も重いはずである。高級官僚が1億のカネを誤魔化したりムダ遣いしたら、地方公務員の10億の誤魔化し・ムダ遣いに相当するぐらいの10倍計算でいくべきであろう。

 当然、年金が少ないとか50歳、51歳で退職しなければならないといった問題でもない。そんなのは責任逃れ・罪逃れの口実に過ぎない。地位・役割に付随し、当然担わなければならない責任意識の欠如の問題であろう。官僚だけではない。口利き、不正政治献金、収賄、視察・研修と称した観光旅行等々の中央政治家のコジキ行為・ムダ遣いも跡を絶たない。

 いわば安倍晋三の十八番の口癖である〝規範意識〟に相当する責任意識の視点からも把えなければならないムダ遣い・コジキ行為でもあるはずであるが、サンデーモーニングでの議論にはその点がすっぽりと抜けていた。抜けていることに、司会の田原総一郎にしても、外交評論家の岡崎久彦にしても、菅直人民主党代表代行にしても、その他にしても気づいていなかった。本質的な因果性とは関係のないゴマカシやコジキ行為を働く人数や合計金額の多い少ない、年金の多い少ない、定年が何歳だといったことのみに目が向いていた。

 また、「上の為すところ、下これに倣う」(出典は『大学』らしい。難しくて、私の頭ではチンプンカンプンである)という諺がある。これは一面的には真理を成している。上が乱れれば、下も乱れるということであろう。

 中央から地方まで日本全国で政治家・役人の規範が乱れている原因はこのこと以外に求めることができるだろうか。

 何事も上が手本であって、手本たる上(国会議員・高級官僚)が手本になっていない状況(=上の腐敗・怠慢・無責任)が下に位置する地方議員・地方公務員の腐敗・怠慢・無責任といった規律の緩みを誘発・蔓延させているということだろう。上の規律に下が倣っているとも言える。

 また公務員の生産性に関しても、中央官僚がきちっと生産性を発揮していたなら、地方公務員もうかうかしていられない気持にさせられて、引きずられる形で生産性を発揮するはずである。ところが全体的に生産性は低い状態となっている。これも上に倣った下の生産性の低さではないだろうか。

 何度でも言わなければならない。国会議員・高級官僚のなすコジキ行為・ムダ遣い、地方政治家・地方公務員これに倣う。

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