「美しい国」づくりに向けた造反議員復党

2006-11-28 05:54:29 | Weblog

 古い自民党だかからこそできる復党ドタバタ劇

 昨夜(06年11月27日・月曜日)のNHKテレビ夜9時からの「ニュースウオッチ9」・造反議員復党問題――先ず離党勧告を受けて自民党から離党していた無所属の「郵政造反議員」12人全員が「復党願い」を提出したと伝えた。

 番組はそれまでの動き追う。堀内元自民党政務会長の言葉「皆さん、全員選挙区に帰られるでしょうね。大変、みなさん方、是非復党されるようにご意向は殆どあるということだろうと思いますね」

 もう少し滑らかな言葉の使い方をしてもらいたいと思うが、年齢相応に頭まで古くなってしまったのか、ないものねだりと言うことなのだろう。

 「ご理解されますか」の質問に、江口俊一衆議院議員「もう去年の法案、臨時国会で賛成していますから。で、よりよい民営化ということで、今考えておりますので、ここら変は整合性はありますと思います」

 その「整合性」とは法案に対する最初の反対を貫けず「臨時国会で賛成」にまわったことと今回の復党問題でも突きつけられた条件が本来なら自らの政策に反するにも関わらず反対できなかったことの二つの態度変更を言う「整合性」ということなのだろう。

 解説が、「復党願い」に添えられた誓約書は、去年の衆議員選挙ののち離党勧告処分を受けたことについて遺憾であり、重大な責任を認識しているなどとして中川幹事長が先に示した復党の条件を全面的に受け入れる内容となっていますと伝えていたが、要するに反省していますと悔悟の姿勢を判を押す形で示せという内容だということだろう。

 そもそもの郵政民営化反対が自らの政策上の信念で行ったことなら、それに対する反省というのはまるきりの矛盾行為となる。

 但し、12人の無所属議員の自民党との交渉の窓口となってきた平沼元経済産業大臣は復党願いは出したものの、ただ一人誓約書の提出には応じなかったと解説。

 平沼「支援者の皆様方の言葉も聞いてですね、信念を貫けという非常に強かったわけです。従って私は信念を貫かせていただいて、えー、こうした誓約書を書くことに関しては断固反対をすると――」

 カメラは先週末地元岡山市に戻った平沼氏を追う。土曜日に地元幹部150人を集めて会合を開いたという。
 
 会合の席で幹部を前にした平沼氏「私はある意味で筋を通し、信念を重んじて行動してきた政治家でありますから――」と、簡単には復党条件に従わない氏の姿勢を映し出す。そして、解説が言う「郵政民営化の確実な実施への支持、去年の衆議員選挙での反党行為に対する反省を明確にした誓約書の提出など」に対する考えとして「自民党を愛するにやぶさかではありません。今の自民党というのはどっかおかしい。一方的に一人の幹事長によって突きつけた、そういう問題を本当に呑んでしまって、私の先行きが切り開かれていくかどうか――」と、疑問を呈する様子を伝えた。

 支援者の「筋を通していただくのは大事なことで、それあっての平沼先生でございますので」との復帰反対の立場からの声と、「この際、ほかの11人のためにも、自民党に復帰していただきまして、ご活躍いただきたいとお願いいたします」という復帰賛成の立場からの声を紹介する。

 平沼氏は会合のあと、次のように述べている。「あなたもちゃんと信念を通せよと、みなさんにおっしゃっていただいたので、そういうことも胸に秘めて決断していきたいとな、そう思ってます。変な形でね、戻っても、何も主導権を発揮できないような、そういった状況で戻るということも考慮に入れなければいけないのかなあーと――」と、自分を殺す選択も視野に入れた迷いも見せる。

 2度と反党行為をするな。反党行為の基準は安倍・ジョンイルが握っているのである。安倍・ジョンイルが一言、「それは反党行為である」と告げたなら、それが反党行為となって、逆らうことはできなくなる。常に顔色を窺って、何が反党行為かを探っていなければならない。キム・ジョンイルに対する北朝鮮国民と同じように絶対服従あるのみ。戻った場合の「何も主導権を発揮できないような」状況も覚悟しなければならない悲愴感に囚われたといったところか。

 解説が、「復党願いの提出期限の今日、無所属議員との会合で平沼元経済産業大臣は誓約書の提出はできないという考えを示し、他の議員たちの説得にも応じなかったことを伝えた」と伝えた。

 平沼氏のこのような態度に対して、堀内元政務会長「12名全員が誓約書を出すということは一番いいことではないかというふうに思っておりましたけど、まあ、これは信念の問題ですから、止むを得ないと思います」

 山口俊一「ご自身の考え方、政治家としてのあり方の問題だろうと思いますね。これは本当に尊敬に値する話なんで――」

 山口俊一ご自身の態度に関して言えば、「尊敬に値しない話」ということになるが、そんなことは少しも思ってもいないだろう。ご自身の頭の中は自分の「復党」のことしかないだろうから。

 平沼氏は復党願いを出したことについては、「復党願いもあんまり出したくないと思ってましたね。まあ、しかし、12人が纏まって行動する、そういう前提でみなさん方が本当に一途に思っておられるので、まあ、それはいわゆる復党願いを出させていただこうと、こういうふうに決断しました。私には当面無所属議員として、あのー、一生懸命努力していくしかないなあ、とまあ、そういうふうに思っております」

 誓約書を提出しなくても、あるいは復党が許可されるかもしれないという一縷の望みを持っていたからこそ、復党願いだけは出したといったところだろう。

 解説が「午後5時。自民党役員会で安倍総理大臣は、しかるべき手続きを踏んだ11人は復党を認めると明言。党執行部は近くこの問題を審査する党紀委員会に諮り平沼氏を除く11人の復党を正式に決定する運び」だと伝える。

 中川幹事長の記者会見。「今回の誓約書や11人の先生方に私が申し上げてまいりました条件はほぼ呑んで頂いたものと、このように受け止めております。条件を満たせば、そうした手続きで進むのが筋であると――」

 「呑んで頂いた」と言うよりも、「呑ませた」と言った方が実態に近いだろう。平沼氏一人の態度に振りまわされていただけのことで、それがなかったなら、11人は股をくぐれと命じられたとしても、韓信とは正反対の心境で四つん這いとなり、頭を低く下げて股を潜っただろうことは目に見えている。

 片山虎之助参議院議員、記者に問われて、「誓約書とかね、総括・反省だとかね、そういったことは、まあ、あまり公(おおやけ)でなくても、よかったんではないか。あの、もう少し優しいって言うかね、そういうやり方もあったんではないかと思いますけどね。まあ、中川さんは中川さんとして十分考えた上での措置だろうから――」

 国民の目に見えない密室で内々に話し合うべきではなかったか、自民党の恥が漏れないよう隠せる場所でこっそりと解決すべきではなかったか。そういった「やり方」が「もう少し優しい」やり方ということなのだろう。いわば臭い物には蓋、都合の悪いことは国民には隠すべきだとテレビカメラの前で堂々と主張しているのである。密室政治の勧めを説いたとも言える。

 安倍美しい国総理大臣の記者会見での弁「自民党は決して古い自民党に戻ることはありません。また戻してはならないと思います。国民の皆様の前でご示しをした条件を了解したと言うことで、私は総裁として復党を認め、そして、復党をなされたのちには、皆さんと、まあ、一緒に美しい国づくりに向けて汗を流して貰いたい。私の責任に於いて今後、みなさんにしっかりと力を発揮をしていただいて、みなさんの、国民のご理解をいただきたい――」

 一国の総理大臣として、もう少し深みのあることが言えないのだろうか。「古い自民党に戻ることはありません」と「美しい国づくり」といった決まりきったスローガンと、復党の経緯をなぞっただけの内容しか示すことができない。これは正義である、大義ある政治行為であるぐらいの説明責任は国民に対して持っているはずだと思うが。尤も正義・大義の文脈で話したら、たちまちのうちにまったくの嘘っぱちの大逆転を味わうことになるだろうが。

 「私の責任に於いて今後、みなさんにしっかりと力を発揮をしていただいて」とはどういう意味なのだろうか。「力を発揮」しなかった場合、復党を最終的に認めた自分に責任があると宣言したと言うことなのだろうか。力を発揮したら、復党が正当化されるというわけのものではない。復党問題自体と復党議員の今後の動向とは別問題のはずである。安倍総理の責任問題が生ずるとしたら、復党が国民の批判を受けて安倍政権が立ち行かなくなった場合であって、個々の復党議員の「力を発揮」云々は関係ないはずである。安倍総理が望んでいることはそんなことではなく、復党問題で国民が早いとこ健忘症にかかってくれることだろう。

 また、「力を発揮」するしないは議員それぞれの責任事項のはずである。個人で立つということはそういうことだろう。自民党議員は古臭くも個人で立っていないということなのだろうか。だから、反党行為はしないといった議員の行動をコントロールする誓約書が必要だったということなのだろうか。

 先の総裁選で自民党の大多数が美しくも演じたポスト欲しや寄らば大樹の自己保身からの安倍総裁雪崩現象といった打算一辺倒の無節操、今回の選挙目的の復党といった同じ打算一辺倒の無節操なドタバタ劇――古い体質でなければ演じることのできない無節操ではある。

 そういった古い体質でなければ演じることのできない打算一辺倒の無節操議員が現在の自民党の主導権を握って、一大勢力化している。「自民党は決して古い自民党に戻ることはありません。また戻してはならないと思います」と華々しく啖呵を切ったとしても、一大勢力を築いているのが既に古い体質の議員である。小泉政権下で「新しい自民党」と見えたのは見せ掛けで、小泉首相がメッキを施してどうにか新しく見せていたが、安倍政権になって抑えるだけの力が首相自身になくて、メッキが既に剥がれかかっているということではないだろうか。

 類は友を呼ぶ。リーダーの位置に立っている安倍首相自体が古い体質の政治家だから、古い体質の打算一辺倒の無節操議員が一大勢力化するのだろう。片山虎之助の都合の悪いことはこっそりとやるべきといった密室志向にしても、古い政治体質を持っていなくては出てこない発想である。

 安倍首相がいくら「一緒に美しい国づくりに向けて汗を流して貰いたい」とバカの一つ覚えのように言ったとしても、「美しい国づくり」を担う人材自体が安倍首相を筆頭に一大勢力が古臭い体質の政治家ばかりな上、その関係で「美しい国づくり」創造の素材エネルギーとなるべき頭や思考能力自体が古臭くできているから、いくら一大勢力でも全員が逆立ちしたって、あるいは公明党議員を逆立ちに加えたとしても、「美しい国」になりようがないのではないか。

 今回のドタバタ劇が今後どのように展開していくか、見守る価値だけはある。

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