橋下徹「日本維新の会」西村眞悟擁立に見る独立独歩はここまで落ちたか

2012-11-24 11:20:37 | Weblog

 日本維新の会は当初、全小選挙区候補擁立という選挙戦略を立てていた。

 このことは日本維新の会が独立独歩を看板としたことを意味する。他党に頼らない、日本維新の会のみの力による全区候補擁立と選挙勝利を予定した、自尊心高い独立独歩戦術の宣言だった。

 【独立独歩】「独立して他から支配も影響も受けずに自分の思うとおりにやること」(『大辞林』三省堂)

 だが、世論調査で意外と支持率が伸びなかったことと、公募応募者の中から候補者が集まらなかったために擁立が困難となって、小選挙区全区候補擁立という選挙戦術の転換を余儀なくされることとなった。

 余儀ない転換は仕方がない。だが、一度独立独歩の看板を掲げた以上、擁立可能な選挙区のみの戦いに限定するのが看板に偽りなしの独立独歩の姿勢であるはずだが、「小異を捨てて大同につく」の口実の元、政策の異なる上に、「維新」とは「これ新なり」という意味に反して古い政治家たちの集団である「太陽の党」と合流、独立独歩がかなり怪しくなってきた。

 あるいは独立独歩のガタがきたと印象を与えた

 だが、日本維新の会が西村真悟氏を擁立するに至って、独立独歩ががここまで落ちたのかという印象を拭うことはできなかった。

 《【衆院選】西村真悟氏の擁立明言 日本維新幹事長》MSN産経/2012.11.23 17:57)

 11月23日、日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事が堺市で西村真悟元衆院議員(64)と共に街頭演説。

 松井幹事長「長年活動してきた大阪17区を(西村氏から)譲っていただいた。比例近畿ブロックから、しっかりと国政に戻っていただく」

 記事写真を無断転載しておくが、写真を見てのとおり、〈演説には日本維新代表代行の橋下徹大阪市長も参加した。〉と記事には書いてある。

 「Wikipedia」を参考にすると、西村眞悟は民主党が政権交代を果たした2009年総選挙で改革クラブ公認で出馬、小選挙区、比例区共に落選。後、たちあがれ日本に参加。そのまま石原慎太郎の太陽の党にスライド。太陽の党が日本維新の会と合流したことにより、こういう結果となったのだろう。

 番組は尖閣諸島に日本人の政治家として初めて上陸したと紹介していて、この紹介のみでも西村眞悟が如何なる政治家か大方の知るところとなると思うが、11月11日(2012年)「たかじんのそこまで言って委員会」に出演していて、「目覚めよ日本 怒れるオッサン大賞」と題したコナーで中国に対して怒りをぶつけていたが、このコーナを取り上げるだけで、如何なる思想家であるかが分かるはずである。

 怒りのポイント

1日本に感謝せず、非難し、金をせびる
2中共は自国民を共産化の中で8000万人殺した
3人の物を自分の物と思うイナゴの群れ

 1番の解説として、日本は2009年までに中国に援助したODAの総額は3兆6412億円でありながら、尖閣国有化の反日デモで暴動化した中国人の殆どはその事実を知らされていないとされているとしている。

 西村眞悟「もっとあるんですが、この三っつだけ、思いついた順から書いただけです。これは怒りと言うよりも、冷静に我が国益の観点から、動物生態学者の目を持って、中国共産党というものを――」

 辛坊アナウンサー「動物生態学者だったんですね」

 西村眞悟「いえいえ、違います。あのね、相手を人間と思うから、本質が分からない(笑い)

 あの、賛否両論に分かれることを本当に目指してですね、これからはっきりと申し上げたい。

 中国はあの文明という観点から見ても、日本と共に天を戴かない。そして国家としても、敵・味方(の)、識別としても、明確に中国共産党独裁国家は打倒すべき敵であると、いうふうな前提で、これから、この(三っつの)項目について話をさせていただきたいと思います」

 1番の「1日本に感謝せず、非難し、金をせびる」

 西村眞悟「我々の税金がですね、日中友好の美名のもとに巨額のカネが流れて、そして彼(中国)はそのカネを以って核大国、核ミサイル大国となって、そのミサイルの狙う先は我が日本である、という物凄いグロテスクな状況が彼の国の謀略によって実現しとるわけですな。

 これについて怒りと言うよりもですね、我が国の政治を立て直すという、この、国家キンコク(?「緊急」の言い違えか)のですね、えー、決断をしなければならない。

 我が国のカネで核ミサイルを開発して、我が国の主要都市に狙いを定めている。中国共産党国家は我が国の敵なんです。

 辛坊「2、『中共は自国民を共産化の中で8000万人殺した』」

 西村眞悟「これ、何人殺したか分からんです。しかし大体、文化大革命だけで2千万人が死んだと言っているわけなんですね。その前の大躍進、そして共産革命の中でも、あの内戦の中で8千万、毛沢東が殺したということを、世界の、主にアメリカの学者が言っているもので、8千万人という数字を出しました。

 で、その数字が如何なる意味かと。中国共産党は自国民にウソをつき続けなければ存立を続けることはできない体制なんです。このウソをつくことの内容に、8千万人は日本が殺したんだと。

 だから、中国人民に対する最大の敵は日本軍国主義であるから、日本軍国主義を打ち負かした中国共産党こそ、人民の恨みを日本に集中させることによって、自国の政治を維持している。

 こういう者と、日中友好で歩み寄れると錯覚した日本の政治自体、が戦後体制の中で狂っていると」

 辛坊「3、『人の物を自分の物と思うイナゴの群れ』」

 西村眞悟まさに、イナゴの群れであって、人の物を、自分の物と。

 辛坊さん、これ(辛坊の左手を取って、腕時計を上に向ける)俺のもんや」

 辛坊「いやいや、これ私のものです」

 西村眞悟「自分の領土をですね、棚に上げて喜ぶバカがどこにあるんですか。尖閣という小さな無人島を獲りに来ているのではないと。沖縄本島を呑み込んで、全日本を屈服させるための軍備を着々と進めている。

 で、これから以降、民主党脆弱内閣が存在を続けるならば、ある一点の時点で、軍事的行動に出るだろうと、こう思っております

  
 いよいよ採点。

 「共感できる」――宮崎哲弥、津川雅彦、桂ざこば、勝谷誠彦、金美齢、加藤清隆
 「共感できない」――筆坂秀世、山田玲奈

 筆坂秀世元共産党員「大体は共感できるが。西村さんの言っていることが分からないではない。中国の脅威を大きく描写し過ぎてはいないか。中国を巨大に描き過ぎている」

 西村眞悟「まだまだ抑制して言ってるんです。ベマ・ギャルボさんの書いた物を読むと、私が言っていることはまだまだ抑制されたものだとお分かり頂けると思います」

 勝谷誠彦「ベマ・ギャルボさんの本によると、最後の目的は天皇の処刑だそうですね」

 別画面の挿入でその書物を紹介。ベマ・ギャルボ著『最終目標は天皇の処刑』

 西村眞悟「そうです。従って、今まさに中国人民全ては日本を敵勢力として打倒しに来ると、正常な国家運営の感覚を持っていたら、そう断定してですね、胡錦涛に150人の議員を連れていかない」

 宮崎哲弥「日本人として、日本として、中国にどのように対抗すべきなのでしょうか」

 西村眞悟「賛否両論分かれることを言いますよ。武力で対抗する。それ以外にない。それを躊躇したら、殺られる。

 それからもう一つ。軍服を着てこないから、平服を着て、尖閣に上陸してくるし、平服を着て、大阪市内で行動を起こし始める。

 北京オリンピックの聖火リレーが行われた長野市の状態を、あれは彼ら実験したんです。4千名で長野市全域を制圧をできた。沖縄ですね」

 「4千名で長野市全域を制圧」とは長野の善光寺が2008年北京オリンピック聖火リレーの出発式会場とされるが、チベット騒乱に対する中国弾圧に抗議して長野市に対して不使用を求めると、学生を主体とした中国人が大挙して抗議デモに駆けつけ、市を埋め尽くしたことを指している。
 
 辛坊「山田玲奈さん、共感できないのは?」

 山田玲奈「大学で中国語を勉強していますが、まだ中国人が分からないんです」

 西村眞悟「よく聞いて頂いた。中国人には二種類あります。悪い中国人と、非常に悪い中国人」

 笑いが起こる。

 さらに続くが、これで十分だから、以下略。

 中国が共産化の中で何人殺したかは中国の問題であって、ここでは日中関係のみを取り上げる。

 西村は「中国はあの文明という観点から見ても、日本と共に天を戴かない。そして国家としても、敵・味方(の)、識別としても、明確に中国共産党独裁国家は打倒すべき敵である」と断定している。

 確かに中国が共産党一党独裁体制を打破して、共通の価値観を抱くことができる民主主義に生まれ変わることは望ましいが、しかし経済的には既に共産党一党独裁体制の中国と共に天を戴く関係になっているのであって、その関係を絶った場合、日本は経済的に相当な打撃を受けることになる。

 尖閣国有化による中国国内の反日デモでも中国の日本企業は相当な打撃を受けているのである。

 例えば今年10月に中国で販売された新車台数は去年の同じ月に比べて5.3%増加し、2か月ぶりに前年を上回ったが、日本の乗用車に限った場合、日中関係の冷え込みによって約60%も減少ししたと「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 当然、日本からの部品輸出も滞っているはずで、このことは他の産業にも影響しているはずだ。

 だが、中国にしても日本と経済的に共に天を戴くことをやめた場合、経済的損失は無視できないはずだ。

 尤も一次的には経済的損失を被ったとしても、軍事的に「全日本を屈服させる」ことで日本が持つ経済的全資源まで簒奪・吸収して、中国の経済的資源に加えた場合、結果的には中国のプラスになるだろう。

 但しこの考えには日本が米国と軍事同盟を結んでいるという視点を欠いている。

 また中国が軍事的に「全日本を屈服させる」ことは日本を植民地とすることを意味する。

 戦前の植民地時代ではない。果たして世界の世論が黙っているだろうか。

 こういったことばかりではない。西村が中国人を「イナゴの群れであって」、人間と思わない扱いをし、「中国共産党国家は我が国の敵」で、「中国人には二種類あります。悪い中国人と、非常に悪い中国人」だと差別的な言説で排除して、何が解決するというのだろうか。

 要するに言っていることの全てに合理的判断能力を欠いている。

 西村がどのような主張を展開しようが、思想・信条の自由によって守られている。だが、このような政治家を日本維新の会が所属議員として抱えた場合、彼の主張が中国関係に影響を与えないと保証できるだろうか。

 例え好ましくな共産党一党独裁体制であっても、最早断ち切ることのできない中国との経済関係に何らかの障害となって現れない保証があるのだろか。

 全小選挙区候補擁立という自尊心も露わな独立独歩から肌合いの異なる政党と合流する、自尊心を捨てた、言ってみれば数合わせに後退、さらに西村みたいな、一面的に勇ましいことを言っているだけの合理的判断能力を欠いた政治家まで日本維新の会の候補者に擁立する後退は、同じことを言うことになるが、最早独立独歩の見る影もない無残な姿、独立独歩はここまで落ちたのかの感しか湧いてこない。

 独立独歩の自尊心を捨てているから、それを悟られまいと、言葉だけ勇ましくなる。

コメント (3)
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