昨日の11月27日、嘉田由紀子滋賀県知事は自らが代表を務める新党「日本未来の党」結成宣言を行った。
《滋賀県・嘉田知事 新党結成を表明》(NHK NEWS WEB/2012年11月27日 18時42分)
嘉田知事「『今のままでは選ぶ政党がない。本当の第三極を作ってほしい』という声に応え、新しい党を作ります。未来を開く新しい政治を始め、希望を見いだしたい。
自分が立候補したいという方がいて、準備があれば拒否するものではない。
(他党との連携)この指止まれ方式で、すべての皆さんに呼びかけたい。
(国民の生活が第一の小沢代表との連携)小沢氏らがそういう気持ちをお持ちならば、方向性としてはありえると思う」
自身は知事を辞職せず、衆議院選挙には立候補しない考えだという。
〈新党では、段階的に原発からの脱却を目指す「卒原発」や、女性や子どもがいきいきと活躍できる社会づくり、それに消費増税の前に徹底してむだをなくす「脱増税」など、6つの政策を柱として掲げる方針〉――
早速、橋下徹日本維新の会代表代行が批判の矢を放った。《維新橋下代行が新党批判 「脱原発絶対できない」》(TOKYO Web/2012年11月27日 21時48分)
新党「日本未来の党」結党日と同じ11月27日の発言。
橋下代行「脱原発グループが新しくできるが、彼らがどれだけ高い目標を掲げようと絶対に実行できない。実行した経験がないからだ。
(嘉田知事は)知事としての経験はあるが、国会議員や政治グループを束ねた経験はない」
松井日本維新の会幹事長・大阪府知事「脱原発と言うのは簡単だが、実行するための設計図をつくらないといけない」
両者とも頭の程度が知れる発言となっている。
橋下徹は脱原発は「実行した経験がないから」できないと言っている。
では、橋下徹は脱原発を「実行した経験」があるのだろうか。
「実行した経験がない」は誰もが同じ土俵に立っているはずだが、自身にもある未経験を無視して嘉田知事の未経験を以てして「卒原発」は不可能だと言う。自身の認識の矛盾にはさらさら気づいていない。
経験がないからと言って、できないというなら、何事もできないことになる。自身の他の経験も参考・応用し、他者の力も借りたあるべき姿に対する的を射た創造力と挑戦する姿勢に事欠かなかったなら、試行錯誤は繰返すだろうが、決して達成できないと決めつけることはできないはずだ。
松井維新の会幹事長の「実行するための設計図をつくらないといけない」は当たり前のことである。工程表なくして何もできない。
問題は工程表の的確な実現性である。
そもそもからして橋下徹の「脱原発グループが新しくできるが、彼らがどれだけ高い目標を掲げようと絶対に実行できない」は、「実行した経験がない」の理由如何に関わらず、奇妙キテレツな矛盾そのものの認識となっている。
《【衆院選】「維新は選択肢でない」嘉田新党・飯田氏 橋下・松井氏に強烈“対決宣言”》(MSN産経/2012.11.27 21:57)が、「日本未来の党」の代表代行に飯田哲也(てつなり)民間シンクタンク・環境エネルギー政策研究所所長(53歳)が就くと書いている。
記事はまた、飯田氏が大阪府市特別顧問として松井一郎知事と橋下徹市長のエネルギー戦略を下支えしてきたと伝えている。
記事。〈飯田氏は今年1月に大阪市、2月に大阪府の特別顧問に就任。府市エネルギー戦略会議の委員として、脱原発の方向性や原発再稼働への反対姿勢など、府市政で打ち出された方針に深くかかわってきた。〉
但し飯田氏の次の発言が維新の会には関わっていなかったことを示している。
飯田哲也氏「嘉田さんを支えて、裏付けのある形の政策を一緒に作っていきたい。
維新の政策ブレーンとして協力したことは、これまでも、これからもない。山口県知事選でも、維新の推薦も応援も受けなかった」
飯田氏は今年の7月に故郷の山口県知事選に無所属で出馬。維新の会は何ら応援しなかったと記事は書いている。
だが、維新の会に関わってこなかったとしても、大阪府市特別顧問・府市エネルギー戦略会議委員として、〈脱原発の方向性や原発再稼働への反対姿勢など〉、府市政が打ち出した方針に深く関わってきたのである。
ということは、嘉田新党「日本未来の党」に飯田氏が卒原発政策問題で関わっていく経緯を前にして、「彼らがどれだけ高い目標を掲げようと絶対に実行できない」は自分たちが飯田氏を府市エネルギー戦略会議委員として採用基準としたはずの能力を否定することになる。
あるいは脱原発に関わる飯田氏の府市に於けるブレーンとしての存在をこの期に及んで否定したことになる。
このような否定は橋下徹や松井の他者能力を見抜く目の否定ともなる。
橋本徹に独断独行が多いのは他者能力を見抜く目がなく、人が信用できないからなのかもしれない。
他者能力を見抜く目のない人間が、例え行政トップ経験者だと自らをいくら誇ろうとも、政党の代表や代表代行として信頼を与えることができるだろうか。
いや、既に信頼を失っているはずだ。橋下徹は当初は「2030年代原発ゼロ」を掲げていながら、太陽の党との合流時の合意に「脱原発」の文言を盛り込まなかった。
このことは各方面から「脱原発」からの後退だと批判された。
太陽との合流のために自身の政策を売ったのである。魂を売ったのと同じであろう。
石原慎太郎の次の発言は、橋下徹の「脱原発」からの後退に添った発言であるはずだ。
《原発ゼロ 目指さない 維新・石原代表が方針》(TOKYO Web/2012年11月27日 朝刊)
11月26日の東京新聞等のインタビュー。
石原慎太郎「どういう産業をどうやって盛り上げていくか考えなければ、(原発を)何パーセント残す、残さないという議論にならない。綿密な経済のシミュレーションをやった上で、(火力や水力との)エネルギーの配分を決めていくのが妥当だ」
原発ゼロではなく、火力や水力、自然エネルギーとの併合でやっていくと言っている。
石原慎太郎(橋下徹代表代行が「原発ゼロに向けてやる」と主張していることについて)「個人的な発言だと理解している」
記事は、原発ゼロは〈党方針ではないとの考えを示した。〉と書いているが、要は合意にはないことだと言ったのである。
ということは、街頭演説や記者会見で最近、「原発ゼロに向けてやる」と言っていることは、党の方針でない以上、当初の自身の脱原発の姿勢と整合性を持たせるためと、脱原発が選挙の争点として前面に出てくるに連れ、そのような情勢との整合性を持たせるために、太陽の党との合意にはない「原発ゼロ」を口にして誤魔化しているに過ぎないと解釈しなければならなくなる。
様々な発言の矛盾は人間の信用性に深く関わっていく。いや発言の矛盾と人間の信用性は相互照射し合う。
誤魔化されてはいけない。