野田首相の言葉の無力・政治の無力を物語る会計検査院員指摘の予算ムダ遣い

2012-11-03 10:56:16 | Weblog

 会計検査院が纏め終えた国の2011年度(平成23年度)決算検査報告書を10月2日(2012年)午後、首相官邸で野田首相に手渡した。

 《国のムダ遣い、ワースト2の5296億円 会計検査院23年度報告》MSN産経/2012.11.2 22:43)

 税金のムダ遣いなどの指摘は513件、計約5296億円

 これは過去最高の2009年度(約1兆7904億円)に次いで2番目の規模。

 記事解説。〈「事業仕分け」で歳出抑制を強調した民主党政権下でも多額の無駄が明らかになった形だ。〉――

 2010年度検査では東日本大震災の被災地に配慮、岩手、宮城、福島3県の検査未実施、2011年度から震災関連や防災全般に関する予算執行の重点検査を実施、今後、実質国有化の東京電力の本格的検査、震災からの復興・復旧に向けた施策の検査を継続していくという。

 内訳。

▽支出面が約5120億円
▽徴収漏れなど収入面が約176億円
▽法令違反など不正・不当な事例があったと判断357件、約191億円。
このうち約61億円が経済産業省に対する指摘。

 その他。

▽不適切経理との認定には至らなかったが、独立行政法人「都市再生機構(UR)」が保有する未処分地
 の資産約936億円について、需要喚起などの改善を要求。
▽独立行政法人「日本原子力研究開発機構」が建設・維持管理として約830億円支出の高速増殖炉「も
 んじゅ」関連施設の建設中断状態に対して活用方法の検討要請。
 
 省庁別ランク。

▽総務省、堂々1位最多の約743億円。
▽農林水産省約462億円。
▽経産省約390億円
▽国土交通省約293億円。

 復興予算関連。

 全921事業を対象とした復興予算執行状況調査。

 〈中には、当初から地元が拒否する事業に予算が充てられたケースも。別目的への「流用」が批判される事業は複数あり、検査院は個別事業そのものの妥当性には踏み込まなかったが、復興の基本理念に即したものとするよう求めている。〉――

 「全国防災対策費」関連の一例。

 長崎県の諫早湾干拓事業の開門調査費に平成23年度第3次補正予算で約9億6千万円計上

 農林水産省農地資源課担当者「排水ポンプや地下水のボーリングの調査に充てる予定だった」

 但し約9億6千万円うち約7億3千万円が「不用」として国に返納、約2億2千万円は来年度繰越し。

 約1千万円のみが使われた。何に使ったのか、飲み食いに使ったのか。

 東大日本震災復興予算のうち被災地外の防災対策として使途が認められた「全国防災対策費」であるが、開門調査費が防災と関係があるとは到底思えないし、そもそも被災地域復旧・復興と一体不可分な防災と規定されていることからしても、流用そのものであり、しかも「不用」として国に返納、残りは来年度繰越しでは予算を弄んでいるとしか見えない。

 会計検査院が10月25日、政府が東日本大震災で2011年度に計上した復興経費14兆9243億円の支出状況を参議院に報告している。

 その報告によると、予算設計時よりも実績が下回るなどして国庫に返納された「不用額」は12年度繰越額の7.4%に当たるの1兆1132億円(日経電子版)もあったことと、被災地の復旧・復興とは無関係の被災地外流用の広範囲化等を併せ考えると、こういった弄びが被災地の苦労を他処に横行していたと言わざるを得ない。

 記事解説も横行を裏付けている。

 〈復興予算が充てられた921事業では、予算の80%以上が使われた事業は347件にとどまる一方で、全額が「不用」や「繰り越し」となった事業が89件に上るなど、配分先の実情などを見誤った“ミスマッチ”も明らかになっている。〉云々。

 復興予算ではマスコミ各社が正当性を欠いた多くの使途・多くのムダ遣いを摘出し、会計検査院の調査による詳細・具体的なムダ遣いの指摘が何も復興予算に限ったことではないのだから、復興予算が他の予算にもあるムダ遣いの象徴として血祭りに上げられたことを意味するはずだ。

 いわば全ての予算に蔓延している正当性を欠いた使途・ムダ遣いと見ることができる。

 そしてこのことは、予算のこのような正当性を欠いた使途・ムダ遣いの阻止に自民党政治ばかりか、民主党政治にしても無力であったことの証明でもあろう。

 ムダ遣いに無関心であったことからの無力というわけではない。強い関心を持ち、その是正に向けて強い意志を向けながら、今以て無力状態にある。

 野田首相の無力を見てみる。2011年8月29日の民主党両院議員総会民主党代表選の演説。

 野田代表選候補「悲願の政権交代をみなさんと共に実現をさせていただきました。その政権交代、実現をしたあと、担当したのは財政です。えらいときの担当となりました。税収が9兆円以上落ち込んでしまった中で、先ずやるべきことはバケツの水をザルに流し込むような勿体無い遣り方は改める、そこは徹底したいと思います」

 ムダ遣い阻止に向けて強い意志を示している。

 だが、財務相の間、どれ程ムダ遣い阻止に力を発揮したのか、何も発揮しなかったことは今回の会計検査院の報告と復興予算ムダ遣いが証明している。

 同じ民主党代表選での次の発言も、野田首相の言葉の有言不実行性を証明してくれる。行政改革を推進すべきだと言ったあと、

 野田代表選候補「先ずは隗より始めよ。議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減、それはみなさんにお約束したこと。全力で闘っていこうじゃありませんか。

 それでも、どうしてもおカネが足りないときには、国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」

 消費税増税は行政改革、「議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減」の後だと言いながら、消費税増税を早々に決めた有言不実行性は文化勲章ものである。

 尤も3年前の2009年8月15日の野党時代の例の有名になった大阪の「シロアリ」演説でもムダ遣い排除に言及しているのだから、早い時期からの関心事であったはずだ。

 野田佳彦「一丁目一番地、税金の無駄遣いは許さないということです。天下りを許さない、渡りは許さない。それを、徹底していきたいと思います。
 ・・・・・・
 シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。徹底して税金の無駄遣いをなくしていく。それが民主党の考え方であります」

 2011年12月9日の臨時国会閉会に際しての野田内閣総理大臣記者会見。

 野田首相「(労働力人口減少を伴った世界最速の超高齢化社会と先進国随一の財政悪化等の)状況に対処していくため、何よりも政府の無駄遣いの徹底的な削減と税外収入の確保に懸命に取り組む決意であります。だからこそ、公務員給与削減法案と郵政改革法案を何としても早期に成立をさせたいと考えております」

 2012年1月24日第180回国会野田首相施政方針演説。

 野田首相「行政の無駄遣いの根絶は、不断に続けなければならない取組です。責任ある財政運営を行うために、過去二代の政権を通じて、私自身も懸命に努力をしてまいりました。しかしながら、『まだまだ無駄削減の努力が不足している』という国民の皆様のお叱りの声が聞こえます。行政改革に不退転の覚悟で臨みます」

 「行政の無駄遣いの根絶」を言い、「『まだまだ無駄削減の努力が不足している』という国民の皆様のお叱りの声」に応えて、「行政改革に不退転の覚悟で臨みます」と国民に約束し、その約束実現を消費税増税よりも優先させる目標に掲げた。

 2012年10月1日、野田第3次改造内閣による内閣の基本方針策定と閣議決定。

 「『行政の無駄遣い』を根絶するための行政刷新の取組の強化、公務員制度改革、公務員の人件費削減、特別会計・独立行政法人改革、地方出先機関の原則廃止を始めとした地域主権改革等を強力に推進し、改革に関する国民の理解を得る」――

 ムダ遣いの根絶は国会答弁でも機会あるごとに繰返し約束していたはずだ。

 だが、会計検査院2011年度決算検査報告書の税金のムダ遣い等の規模が過去最高の2009年度(約1兆7904億円)に次いで2番目という名誉あるランク付けと復興予算の多妓・広範囲に亘る流用が野田首相の言葉の有言不実行性――政治の無力を何よりも物語ることになっている。

 予算の欠損・歪みが生じるにも関わらず、行政のムダ遣いの横行を許している原因は赤字国債と消費税等の国民の血税が補っていくからであり、補っていくことをいいことに、一方で財政再建を叫びながら、「バケツの水をザルに流し込む」ようにムダ遣いを続けていく無感覚な悪循環に陥っていることを証明する。

 なおさらに補う手段として、2014年からの消費税増税というわけなのだろう。

 行政側は政治の無力を嘲笑って、あの手この手でムダ遣いを進めていくに違いない。

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