森喜朗のごくごく自己都合な安倍晋三等自民執行部「解散要求」発言封じ

2012-11-06 10:59:18 | Weblog

 最初に断っておくが、自民党を支持しているわけでも、安倍晋三国家主義者を支持しているわけではない。小沢一郎氏の「国民の生活が第一」に次期総選挙で第三極として一定の勢力、キャスティングボードを握れる程の勢力確保ができればと期待を寄せている。

 11月5日(2012年)、昨日である。自民党衆院議員パーティーで森喜朗元首相が安倍晋三自民総裁と高村自民副総裁の早期解散要求発言に苦言を呈したという。《森氏が安倍総裁に苦言=「早期解散を言い過ぎ」-自民》時事ドットコム/2012/11/05-21:00)

 安倍晋三「日本のためにちゃんと解散を行い、首相は誠意ある人だということを証明していただきたい」

 高村正彦「首相が大うそつきでないとすれば、今年中に解散・総選挙がある。みんなにとって良いことだ」

 森喜朗「どっちみち来年の6、7月には参院選があり、8月には(衆院議員も任期満了で)首になる。(解散・総選挙を)いつやったって一緒だ。

 解散を早くしろだの、総裁も副総裁もつまらんことを言い過ぎだ」

 早期解散反対、来年半ば以降で結構と言っている。

 森喜朗ご都合主義者の身内に対する「解散要求」発言封じは何も今回が初めてではない。

 《森氏「解散ばかりみっともない」 石破氏に厳しく苦言》TOKYO Web/2012年10月12日 23時34分)

 自民党の総裁選で安倍晋三が当選、安倍は党員投票でトップだった石破茂を幹事長に据えた。その石破が10月22日、国会内の森事務所を尋ねて、幹事長就任挨拶をした。

 森喜朗「解散、解散ばかりではみっともない。昔の社会党や共産党のやり方だ。なぜ国会議員票で負けたのか」

 石破茂「・・・・・・・」

 ニヤニヤ笑うだけで、何も答えられなかったのか、記事は、〈石破氏が言葉を継げない場面もあった。〉と解説している。

 森喜朗「大野党としてもっとどっしり構えなさい。もっとやることがあるでしょ」

 石破茂「私もそう思います」――

 早期解散反対は野田政権擁護を意味する。野田首相延命と言い換えてもいい。

 「大野党としてもっとどっしり構えなさい」などと立派なことを言っているが、どっしり構えることが野党の務めではない。野党は自らの政治を行うべく与党を政権から引きずり降ろす政治闘争を専らとし、与党は自らの政治を維持すべく野党の与党に対する攻撃を撃破する政治闘争を専らとする。政治闘争とは政治上の権力闘争である。政策闘争とは限らない。相手の失言や閣僚人事の失態等々まで攻撃の材料として相手を失点させ、自らの得点とする、政策外の闘争も含まれるからである。

 なぜこのような政治闘争を行うかと言うと、実際にはそうならなくても、自分たちの政治こそが国のため・国民のためになると思っているからに他ならない。

 政権交代後の民主党は自らの政治を日本のため・国民のためになると信じて行なってきたが、実際にはそうならなかった。

 野田内閣支持率が20%を切り、民主党支持率が低下、その反動で自民党支持率と次の首相候補支持率が世論の後押しを受けて比較的に高い数字を獲得、またとない政権復帰のチャンスとなっている。この絶好の政治闘争の季節に森喜朗は自民党内の動向に反して野田政権擁護、野田首相延命の立場を取っている。

 なぜなのだろう。与党擁護・延命は野党の務めたる政治闘争の放棄を意味する。政治闘争の放棄をしてまで、森喜朗は野田政権擁護、その延命に手を貸そうとしている。

 理由なくして言動は成り立たない。 

 挨拶一つを取っても、上司に対しては丁寧であったり、敬意を込めていたり、媚びていたり、部下に対しては親しみを込めたり、あるいは機械的・義務的であったり、それぞれ上司だから、部下だからといった理由を持つ挨拶となる。

 玄葉外相が今年(2012年)7月28日、ロシアを訪問、南部ソチでラブロフ外相、プーチン大統領と相次いで会談している。要するに領土問題に於ける双方受入れ可能解決策模索の対話継続に関する確認作業である。

 ロシア側に返還する気がなければ、確認儀式となる。

 その疑いは7月28日の玄葉・ラブロフ外相会談と玄葉・プーチン会談を伝えた次の記事から見て取ることができる。

 《領土問題 日ロ、対話継続を確認》TOKYO Web/2012年7月29日 朝刊)

 玄葉外相が例の如く、「北方四島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である」と日本側の基本的立場を表明、メドベージェフ首相の7月3日の国後島訪問に遺憾の意を伝え、抗議した。

 ラブロフ外相の会談後の共同記者会見。

 ラブロフ外相「抗議を受け入れることはできない。(抗議は領土交渉に向けた「静かな環境」醸成のための)必要な雰囲気をつくることに全く役に立たない。

 ロシアの政府要人が訪問を控えることはない」

 共同記者会見だから、玄葉外相も参加していた。いわば玄葉外相の目の前で日本側の抗議を撥ねつけ、訪問は今後共続けると挑戦的態度に出た。双方受入れ可能解決策模索の対話継続の確認作業がロシア側からしたら儀式ではないかと疑う根拠がここにある。

 玄葉外相はプーチン会談では、森喜朗元首相を政府特使として派遣したいと伝達。

 プーチン「いつでも受け入れる」

 歓迎の意向を示し、その上でロシア極東のウラジオストクで9月開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議時に予定されている野田首相との首脳会談にも期待感を表明したという。

 ウラジオストクでの野田・プーチン首脳会談は9月9日行われた。プーチンはAPEC首脳会議の終了後の記者会見で北方領土問題の解決に前向きな姿勢を示したという。

 対して野田首相は9月9日、前日の日露首脳会談合意の12月訪露について同行記者団に次のように話している。

 野田首相「(北方)領土問題の実質的な協議もやっていく意味合いもある」(MSN産経

 要するに今回の野田・プーチン会談では「領土問題の実質的な協議」は行わなかった。12月の訪問でその協議が主要なテーマの一つとなるという意味であろう。

 森喜朗政府特使派遣はいつのことかと思っていたら、昨日の「時事ドットコム」記事がその辺について報道していた。

 《森元首相が訪ロ検討》2012/11/05-22:56)

 記事発信日時が自民党衆院議員パーティーで自民党執行部の早期解散要求発言に苦言を呈したのと同じ日である。

 記事冒頭。〈自民党の森喜朗元首相がロシアを月内にも訪問し、プーチン大統領と会談する方向で調整していることがわかった。政府関係者が5日、明らかにした。〉

 目的は、〈野田佳彦首相の12月の訪ロに先立ち、地ならしをするのが狙い。難航する北方領土問題について話し合うとみられる。〉

 さらに次のように解説している。〈森元首相の訪ロをめぐっては、新党大地・真民主の鈴木宗男代表が首相に政府特使としての派遣を提案。首相も検討する考えを示し、プーチン大統領も前向きとされるが、「双方の日程の都合」を理由に先送りされている。〉云々。

 外務省幹部「政府交渉の役割をするわけではなく、昔の友人として話をする」

 記事はこの発言を、〈森元首相を政府特使とすることには否定的な意見もある。〉としているが、森訪露を明らかにしたのが政府関係者である以上、政府派遣のはずだし、玄葉外相も7月28日の玄葉・プーチン会談で政府特使として派遣したいと伝達しているのだから、政府派遣でなければならないはずだが、「政府交渉の役割をするわけではな」いと言っているのは矛盾している。

 政府派遣で、「昔の友人として話をする」ということになる。

 多分、森派遣で領土問題に何らかの進展が出た場合、外務官僚のメンツが丸潰れになるために政府派遣にしたくないということかもしれない。政府派遣でなければ、正式な立場で領土問題を話し合う資格を失う。

 それとも森政府特使派遣が領土問題進展に何ら貢献しなかった場合、派遣自体が野田首相の責任問題に振りかかることを前以って避ける意味合いから、「昔の友人として話をする」ということにしたのだろうか。

 いわば失敗の予防線を張るための政府特使外しということなのか。

 「いくら実力者だといっても、野党の議員を政府特使として派遣までしておきながら、何の役にも立たなかった、何のために派遣したのだ」という責任問題が起きることは十分に予想できる。

 森喜朗がプーチンの「昔の友人」だというのは、2001年3月25日、イルクーツクで日ロ首脳会談を行い、北方四島返還を話しあっているばかりか、このときを合わせてプーチン大統領とは6回も会談して、旧知の間柄になっているからだろう。

 Web記事――《プーチンと親しい森喜朗が語る北方領土交渉秘話》 ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一/2012年07月05日)に、イルクーツクの日ロ首脳会談について次のような記述がある。
  
 この会談のとき、〈森氏は「歯舞群島、色丹島の二島については、どうやって返還するのか協議をしましょう。国後、択捉島については、日ロいずれに帰属するかについて協議しましょう」という並行協議を提案。プーチン大統領は「その提案は持ち帰らせていただきたい」と述べた。

 元外務省の佐藤優氏によると、この頃が北方領土が日本に返還される最大の好機で、「そのまま交渉を続けていれば、もう歯舞、色丹には日の丸が揚がり、国後、択捉は、今ごろは交渉が終わり、日本のものになっていた可能性がかなりあった」と語っている。

 そして今、民主党の前原氏や玄葉光一郎外相などの野田政権は森路線を継承しており、またとないチャンスが再び来ている、という。今後の動向を注目したい。〉――

 元外務省の佐藤優氏が言っていることが果たして事実そのとおりになったのだろうか。森喜朗は、歯舞群島、色丹島を日本返還の直接的な対象として提案した。

 だが、このことを裏返すと、日本返還の対象としたのは歯舞群島、色丹島のみで、国後島、択捉島両島は直接的には日本返還の対象としなかったということになる。

 国後島、択捉島両島は日本返還の直接的な対象とはせずに日露いずれかの帰属の対象として提案した。

 いわばロシアへの帰属もあり得るとしたのである。

 当然、ロシアへの帰属という選択肢も否定できないのだから、元外務省の佐藤優氏が言っている、「そのまま交渉を続けていれば、もう歯舞、色丹には日の丸が揚がり、国後、択捉は、今ごろは交渉が終わり、日本のものになっていた可能性がかなりあった」の後半部分はかなり怪しくなる。

 ロシアは北方領土は第2次世界大戦の結果、ロシアの領土となったとの立場を取っている。

 ラブロフ外相「第2次世界大戦の結果を認めるという他の国がしていることを、日本がする以外に方法はない」

 これがロシアの公式的見解となっている。

 日本側には誰を政府特使としてロシアに派遣しようとも、この見解を破る理論の武装にかかっているが、今以て構築できないでいる。

 森喜朗は今季限りで引退を表明している。当然、森政府特使ロシア派遣は新聞・テレビが大々的に取り上げる、誇らしさこの上ない最後の一大晴れ舞台となる。

 引退を飾る格好の記念碑となるに違いない。

 飛行機のタラップを降りたとこでロシアの大統領プーチンににこやかに迎えられる(となるかどうか)。

 一方、自民党は12月16日投開票となる年内衆院解散・総選挙を求めて、一大攻勢をかけている。12月16日投開票の場合、11月22日までの解散が必要だとしている。

 もし野田首相が自民党の攻勢に負けて11月22日解散・総選挙、12月16日投開票となると、野田首相自身の訪露の目はなくなり、森政府特使訪露の目も野田訪露の目と玉砕することになる。 

 あるいは心中することになる。

 引退を飾る格好の記念碑となる誇らしさこの上ない最後の一大晴れ舞台が、散々夢だけ見させて煙の如くに消えることを意味する。

 但し、森喜朗が「どっちみち来年の6、7月には参院選があり、8月には(衆院議員も任期満了で)首になる。(解散・総選挙を)いつやったって一緒だ」と望んでいるように解散が来年以降にずれ込めば、夢は土俵際で残ることになる。

 いわば自身の一大晴れ舞台実現のためというごくごく個人的な自己都合からの自民党執行部「解散要求」発言封じだということである。

 政権を奪われた野党の無能な実力者でありながら、政権交代のチャンスを先延ばしにする理由はこのことを措いて他にはないはずだ。

 大体が2001年2月10日、ハワイ沖で日本の水産高校の練習船「えひめ丸」にアメリカ海軍の原子力潜水艦が浮上時衝突、えひめ丸は沈没して教員5人、生徒4人が死亡したとき、その第一報がSPの携帯電話を通じてゴルフ場でゴルフしていた森当時首相に入ったにも関わらず、沈没した練習船の教師・生徒の安否を気遣うことなく、また相手が米海軍の原子力潜水艦であり、加害と被害の関係に応じて日米安全保障問題に少なからず影響する可能性もありながら、第一報後、1時間以上もプレーを続けていたごくごく自己都合の政治家なのである。

 最後の一大晴れ舞台を華々しく飾りたいばっかりに与党に対する解散要求という野党の務めである政治闘争放棄の自己都合を働かせたとしても不思議はない。

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