安倍政権の今迄手つかずにきた振り構わない無節操な内部留保云々はアベノミクス失敗の証明

2015-10-17 11:28:04 | Weblog


 安倍晋三は2015年10月16日、首相官邸で第1回の「未来投資に向けた官民対話」を開催した。企業収益が過去最高となったから、設備、技術、人材に対して積極的に投資してくれと、お願いの形を装わせた強い要請が目的だったようだ。

 この要請の背景として2014年度の企業の内部留保(利益剰余金額)が354兆円に上っているのに対して設備投資額が40兆8373億円、10年前の内部留保対設備投資額で見ると、率にして19%少なくなっていると、「NHK NEWS WEB」が伝えている。 

 記事は財務省の統計として、昨年度・平成26年度の国内企業の「経常利益」は過去最高の64兆円にのぼると伝えている。

 設備投資は景気回復・維持の大きな要となっている。その設備投資が内部留保は溜まる一方でありながら、実体経済牽引の効果を見い出す程には増えていない。

 と言うことなら、お願いの裏を返すと、賃上げが政府の要請でどうにか実現できたように設備投資の増額まで政府要請の形を取らなければならないのだから、アベノミクス3本の矢を大々的に掲げた手前、表面的には窺わせなかったとしても、安倍晋三に焦りがなかったと言ったらウソになる。

 記事が紹介している麻生太郎副総理兼財務相の全国信用組合大会挨拶の企業に対する設備投資に向けた余りにもストレート過ぎる露骨な要請が安倍内閣の焦りを逆説的に象徴しているはずだ。

 麻生太郎「企業の内部留保は安倍内閣がスタートしてから1年目で24兆円、去年は26兆円も増えている。企業は金を貯めるのが目的なのか。企業は儲けた利益を株主への配当や社員の賃上げ、投資に回すべきなのにそれもせず、設備投資は数兆円しか伸びていない」――

 次のロイター記事がこの焦りの傍証となり得る。《ロイター企業調査:アベノミクス評価が失速、「後退・消失」7割超》ロイター/2015年 10月 16日 07:31) 

 〈10月ロイター企業調査によると、アベノミクスの勢いに関して7割超の企業が「後退している」ないし「消失している」とみていることが明らかとなった。「新3本の矢」も含めて効果が不明との指摘が目立っている。景気停滞感が強まる中、日銀による追加緩和については、賛否が拮抗している。〉と、冒頭からアベノミクス効果に否定的な宣告が行われている。

 アベノミクスに対するこのような手厳しい見方は安倍晋三にしても前以て周囲から知らされていたはずで、そういった状況下での「未来投資に向けた官民対話」であり、そこでの設備投資増のお願いなのである。

 内心、焦りがなかろうはずはない。

 焦りの理由は他にもある。

 2014年(平成26年)1月20日、産業競争力強化法の制定に伴って「生産性向上設備投資促進税制」が新設され、生産性を特に向上させると認められた設備投資について、即時償却又は最大5%の税額控除が適用されている。

 即時償却とは初年度に設備投資額分だけ減価償却を一括で行うことができる制度だそうで、それを損金に計上、その分税金が差し引かれるという。

 但し減価償却資産が同じである場合、その耐用年数割で弾き出した減価償却の損金額の合計と一括の減価償却の損金額と等しい値を取るから、資金に余裕のある企業にはそれ程の恩恵ではないそうだが、資金に余裕のない企業には設備投資した時点での一括の減価償却による損金計上は大きな恩恵となるし、又は最大5%の税額控除の適用もそれなりに恩恵の形を取る。

 こういった政策の効果なのだろう、年々設備投資額は増えているが、甘利明経済再生担当相名の《設備投資の現状について》のサイトを見ると、2012年10~12月から2015年4~6月までの約2年半の設備投資額増加率は大企業(資本金10億円以上)は3%増 (0.2兆円増)しかなく、中堅・中小企業(資本金1000万円以上10億円未満)は28%増 (1兆円増)としかなっていない。  

 中堅・中小企業の場合、28%増加していても、一件ごとの設備投資額が小さいから、総額で1兆円という金額になっているのだろう。

 しかも日本で大企業が占める割合は僅か0.3%で、中小企業が99.7%も占める関係から、中小企業が数でこなして設備投資額がかなりのしてもいいはずだが、28%増の金額で1兆円しか増加していない。

 要するにアベノミクスが仕掛けた数々の経済政策は全体的には功を奏していない。だから、2015年10月ロイター調査にアベノミクスに対する否定的評価が現れることになった。

 そこで2014年度の国内企業の「経常利益」は過去最高の64兆円にのぼり、内部留保(利益剰余金額)が354兆円にも達しているのだから、その内部留保から景気浮揚のためにと言うよりも、アベノミクスに効果を与えるために設備投資に回したらどうかと内心に焦りを隠した限りなくソフト形の直談判に及んだ。

 但し内部留保はそっくりそのまま現金や貯蓄の形での保留だけではなく、売掛金、金銭債権、有価証券の他、土地建物・機械設備といった固定資産など様々な資産形態を取って運用されているそうだが、どう運用されていたとしても、内部留保が354兆円にも達することができたのは国内企業が2014年度は過去最高の64兆円にものぼる程の経常利益を上げることができるようになったからであり、このことに関してはアベノミクスの恩恵は最大であった。

 にも関わらず、堂々巡りになるが、企業の利益が内部留保に向かうばかりで、目に見える形で日本の経済を活性化させるまでの設備投資に向かわなかった。

 アベノミクスが企業に与えた恩恵の具体的な内容は周知のように異次元の金融緩和による株高と円安、そして法人税減税などが加わって、企業の大きな利益となって現れた。

 であるなら、株高と円安で企業は大きな利益を上げていたのだから、少なくとも法人税減税までは行うべきではなかったのではないだろうか。

 行うべきではなかったと考えざるを得ないその一つが法人税率30%を1.95%引き下げた上で、課税標準法人税額に10%掛けて徴収していた課税期間2012年4月1日から2015年3月31日までの復興特別法人税1年前倒し(2014年3月31日)の廃止である。

 2012年度の全企業の内部留保は304兆1千億円。2013年度は327兆5千億円。23兆1千億円も増加しているのだから、2014年3月31日で復興特別法人税を1年前倒しで廃止する必要はなかったはずである。

 一方の2013年(平成25年)1月1日からの25年間、税額に2.1%を上乗せして国民個人に掛ける復興特別所得税はそのまま維持された。

 ここに国民の利益よりも企業の利益を優先する国家主義を見ないわけにはいかない。

 法人税に対する特別待遇はこればかりではない。現在34.62%(標準税率)の法人実効税率を2015年度で2.51%引き下げて32.11%、2016年度0.78%引き下げて31.33%減税する税制改正大綱を決定している。
 
 株高と円安で大儲けしている企業に盗人に追い銭みたいな形でさらに内部留保を増やすカードを与えたのである。

 このように金融政策や税制で企業利益獲得と内部留保増に協力しながら、ここに来て企業利益と内部留保を問題とする。企業利益が内部留保にばかり回っていると。

 このなり振り構わない無節操自体がアベノミクス失敗の証明そのものに見える。

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