中国南シナ海人工島12カイリ領海主張へのオバマの艦艇介入と安倍晋三の中国尖閣海域領海侵入への口先介入

2015-10-28 09:53:13 | 政治


 オバマ・アメリカ大統領が中国が南シナ海の南沙諸島(英語名スプラトリー諸島)海域内に埋め立て造成した人工島から12カイリ(約22キロ)内に米海軍のイージス駆逐艦を派遣、2~3時間航行させた。

 オバマのこの行動に中国は軍艦2隻で追跡・警告を発したという。

 ご存知のように中国は当該海域内の浅瀬を埋め立て人工島を造成、滑走路まで建設して、自国領土だと主張、人工島周囲12カイリ以内を自国領海だと見做し、許可なく外国の艦船、航空機が侵入した場合、中国の主権侵害に当たるとしている。

 対してアメリカを始め多くの国が国連海洋法条約に基づいて中国の主張を認めていない。NHKがニュースで解説していたから、その記事を見てみると、中国が人工島を造成した土台部分のスービ礁やミスチーフ礁は中国が埋め立てる前は満潮時に水没する「低潮高地(暗礁)」であって、国際法上は領海の主張ができないとしている。

 つまり、満潮時に海の下に潜ってしまう岩礁は、その上にどう埋め立てをしようと領土の一部と見做すことはできないし、その埋め立て周辺を起点に12カイリの領海を設けることも国際法上は不可能であるということなのだろう。

 当然、アメリカとしたら、国連海洋法条約に則って自由に航行できることになり、中国の主張が無効であることの証明として人工島12カイリ内にイージス駆逐艦を派遣、航行させた。

 アメリカは今後も繰返し航行させる予定だというから、中国の領海でも領土でもないことを既成事実化させることを意図しているということなのだろう。

 勿論、中国は猛反発している。

 陸慷中国外務省報道官「アメリカの軍艦『ラッセン』は、中国政府の許可を得ずに中国の南沙諸島に近接した海域に不法に進入した。中国の関係部門が法に基づいて監視、追跡、警告した。

 どの国であっても航行や飛行の自由を名目に中国の主権と安全を損なうことには断固反対する。我々は関係する海域と空域の状況を引き続き厳しく監視し、必要に応じてすべての措置を取る。

 繰り返し、この地域で緊張をつくり出し、故意に問題を起こすのなら、中国は1つの結論を出さざるを得ないかもしれない。即ち、我々の建設を強化、加速する必要があるだろう。アメリカには、策を弄してまずいことにならないよう忠告する」(NHK NEWS WEB)  

 米中の緊張関係が一気に高まることになる。

 日本も安倍晋三の歴史認識や尖閣諸島領有権問題で中国と緊張関係にある。米国のこの行動に安倍晋三はどう関心を持つのか、10月27日午後(日本時間同日午後)、現在訪問先のカザフスタンで記者団に答えている。

 安倍晋三「開かれた自由で平和な海を守るため、米国を始め国際社会と連携していく。(今回の米軍の行動について)一つ一つにコメントは控えたい。

 国際法に則った行動であると理解している。(中国の人工島造成について)現状を変更し、緊張を高める一方的な行動は国際社会の共通の懸念だ」(毎日jp) 

 相変わらず抽象的なことしか言わない。

 今回、オバマは中国の領土拡張主義的行動に対してその牽制の一歩となる具体的な行動を取った。その具体性にどう連携していくということなのだろうか。「米国を始め国際社会と連携していく」と、日本を米国と国際社会の後ろに置いた従属性を持たせた共同行動を意思表示しているが、常々女性の人権や科学技術で世界をリードすることを広言している割には不明確で積極性に欠けることを言っている。

 特に日本は中国との間に尖閣諸島の領有権問題で南シナ海の人工島問題と似た状況を抱えている。中国は日本の「尖閣諸島は歴史的に見ても国際法上も日本固有の領土である」とする主張に対抗して中国領土であることを主張、そのデモンストレーションとして海警局の巡視船に領海侵犯を繰返させている。

 この繰返しの領海侵犯に対して日本政府は日本の巡視船に領海外退去の指示と警告を行わせ、同時に首相官邸の危機管理センター設置の「情報連絡室」を「官邸対策室」に格上げして情報収集と警戒に当たる、領海侵犯が繰返されている以上、何ら役に立っていない、既に儀式となっているその場凌ぎの対応に終止することと、安倍晋三が「中国の力による現状変更は認めるわけにはいかない」と機会あるごとに発言する口先介入の繰返しで終わらせている。

 尖閣諸島問題に関わる日本の正当性と領海侵犯を繰返す中国の不当行為との間に横たわる双方の関係と、中国の南シナ海の人工島が国連海洋法条約に違反した領土・領海の主張である不当性とそのことに対する米国の正当行為との間に横たわる双方の関係は逆転した状況にあり、アメリカが行動を起こした以上、後ろにくっついて「米国を始め国際社会と連携していく」のではなく、安倍晋三はこの逆転を正す、何らかの行動を取らなければならないはずだ。

 そうしてこそ、真の連携となる。

 これまでの場凌ぎの対応に決別し、オバマと同様に中国の領土拡張主義的行動に牽制の一歩を踏み出すためにも、領海侵犯した海警局巡視船に対して拿捕なり、銃撃して退去させるなりして、勿論相手も武器を装備しているから、銃撃戦が展開されることになるが、領海侵犯に対して強い態度に出て日本に主権があることを示す必要があるはずだ。

 だが、安倍晋三は口先介入だけで済ませている。

 安倍晋三「16年前の8月15日、宮崎県の新田原基地に、夜明け前の静寂を切り裂く、サイレンが鳴り響きました。

 国籍不明機による領空接近に、近者明宏2等空佐と、森山将英3等空佐は、F4戦闘機でスクランブル発進しました。

 稲妻が轟く悪天候も、上昇性能ぎりぎりの高い空も、二人は、まったく恐れることはありませんでした。

 そして、『目標発見』の声。『領空侵犯は決して許さない』という、二人の強い決意が、国籍不明機を見事に追い詰め、我が国の主権を守りました」――

 2015年10月18日の海上自衛隊観艦式での訓示での発言である。

 「我が国の主権を守りました」とスクランブル発進の航空自衛隊員を褒め称えながら、自身は中国が好きなときに好きなだけ繰返している尖閣諸島海域での領海侵犯に「中国の力による現状変更は認めるわけにはいかない」の口先介入のみで、具体的な行動に関してはなす術もない。

 この矛盾を平気で遣り過ごしている。

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