安倍晋三の短期的要解決課題の欧州流入難民問題を長期的要解決課題にすり替える彼一流のゴマカシ・詭弁

2015-10-02 09:29:39 | 政治



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

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 安倍晋三はニューヨークでの第70回国連総会に出席、9月29日、「内外記者会見」を行った。記者との質疑で発言した中東からの難民問題に触れた個所を批判の論調でマスコミが取り上げているから、どう発言したのか見てみた。  

 難民問題に関係ないが、安倍晋三の性格を表すものとして冒頭の発言を最初に取り上げてみる。

 安倍晋三「国連総会に出席するため、ここニューヨークを訪れるのも、3年連続となります。一昨年、私は、『女性が輝く社会』を創るべきだと提唱しました。昨年は、エボラ出血熱やテロの脅威に、世界が連携すべきだと訴えました」――

 何人の各国首脳と首脳会談を開いたとか、何カ国を訪問したとか、相変わらず回数を誇っている。『女性が輝く社会』を創るべきだと提唱したことが、この2年で実質的にどれ程に成果・実績を上げることができたのかといった肝心のことには触れない。

 足元の日本でさえ、省庁やその他の役所では女性の採用や管理職登用の数は増えているものの、支配者の位置に君臨する男たちが政府の尻叩き(=何人管理職に用いるべしとする数値目標)で動いただけのことで、男社会であることに変わりはないのだから、支配者の位置から降りて女性と対等な立場から女性の可能性や能力を自然な形で見い出して数が増えていったわけではないはずだ。

 その証拠に厚生労働省が昨年度女性の管理職の割合等の数値目標を設定、達成企業に15万円から30万円の助成金を支給する制度を設けたものの、昨年度以降、企業からの申請が1件の申請もなかったと、「NHK NEWS WEB」記事が伝えていることを挙げることができる。

 要するに15万円から30万円の助成金を貰ってまでして政府お仕着せの数値目標に機械的に応じても企業利益を見込むことはできないということなのだろうが、裏を返すと、民間企業も男社会であって、女性の可能性や能力を自然な形で見い出してはいないことの現れでもあろう。

 と言うことは官民いずれにしても男社会から脱しない以上、いつまで経っても数値目標を追いかけて、「女性が輝く社会だ、女性が輝く社会だ」と言い続けなければならないことになる。

 大体が2012年の「管理職女性比率の国際比較」は先進国ではアメリカの43.7%に対して日本はその4分の1の11.1%と足元にも及ばない。解決すべき日本の「女性が輝く社会」でありながら、解決できないままに一昨年のこのこと国連に出掛けて、いきなり世界に大風呂敷を広げた。

 安倍晋三らしいハッタリ、いいカッコしいに過ぎない。

 では、安倍晋三が難民問題でどう発言したか見てみる。冒頭発言でも触れているから、先ずそこから見てみる。

 安倍晋三「今年の最大のテーマは、中東や北アフリカから、大量の難民が、欧州へと流入している問題です。

 基本的価値を共有するパートナーとして、日本は、欧州に対して連帯を表明します。

 生まれ育った祖国から、大勢の人々が、逃げ出さなければならなかった現実。その原因は、暴力やテロの恐怖、そして、貧困の恐怖であります。

 貧困から脱出できる道を、彼らが見い出すことができるよう、世界は協力しなければなりません。経済を立て直し、国家を再建する。人々の自立を手助けすることが、問題を解決し、平和を取り戻す、一番の近道であると考えます。

 日本は、経済支援、教育・保健医療での協力を、積極的に行い、難民問題の根本的な解決に、大きな責任を果たしていく決意であります。

 人々に寄り添い、貧困と闘う。60年前、インドの農家と共に汗を流し、農機具の使い方を伝え、スリランカの畜産者たちを悩ませる流行病と共に闘うことから、私たちはスタートしました。

 日本が誇る「ものづくり」の現場の知恵や職業倫理を共有する。アジアやアフリカの若者たちのトレーニングも積極的に行ってきました。現地に足を運び、時間をかけて、人と向き合い、人を育てる。これが、日本のやり方です。今年の国連総会では、世界が手を携えて、貧困の問題に立ち向かう。持続可能な開発を実現する。その強い意志が、新しいアジェンダとして採択されました。

 その中には、人間を中心とした『質』の高い成長、教育の重要性が、しっかりと明記されています。日本が、60年の長きにわたって培ってきた経験、ノウハウを、十分に生かしながら、大きな成果を得ることができたと考えています」・・・・・

 大量の難民の欧州への流入問題で欧州との連帯を表明し、難民を作り出している原因の一つである貧困の解決で世界との協力を誓い、そして「人々に寄り添い、貧困と闘う」という言葉で、あるいは「現地に足を運び、時間をかけて、人と向き合い、人を育てる」という表現で、さも役立った貧困解決の経験であるかのように60年前のインドとスリランカでの取り組みを持ち出して、美しい物語に仕立てて披露している。

 美しい物語に仕立ててと言っていることは、インドについて言うと、インド政府の2011年~12年調査で1日32ルピー(約54円)以下で暮らす人々の全人口に対する割合である貧困率は21.9%、人数にして2億6930万人にのぼると、「開発メディアganas」が2013年7月29日の発信で伝えている状況は、確かにインド自身の経済発展によって60年前よりはずっとましな状態になり(当該記事には「18年前より半減」と書いてある)、日本の取組みにしても少しは役立ったかもしれないが、決して美しい物語仕立てにする程の現状とはなっていないはずだからだ。   

 だが、美しい物語に仕立てて誇らしげに宣伝に努める。 

 問題の記者との遣り取りである。
 
 ブラントロム・ロイター記者「シリアの難民については、日本は新しいお金をイラクにも出すとのことだが、日本が難民を受け入れるという可能性についてはどう考えるか」

 安倍晋三「今回の難民に対する対応の問題であります。これはまさに国際社会で連携して取り組まなければいけない課題であろうと思います。人口問題として申し上げれば、我々はいわば移民を受け入れるよりも前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。

 同時にこの難民の問題については、日本は日本としての責任を果たしていきたいと考えておりまして、それはまさに難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていきたいと考えております」――

 大量の難民の欧州への流入問題で欧州との連帯を表明した冒頭発言の舌の根は記者との質疑の持間に来ると、すっかりと乾いてしまったようだ。確かに冒頭発言と同じように「これはまさに国際社会で連携して取り組まなければいけない課題であろうと思います」とは言っているが、日本を除いた「国際社会」を意味していることは、続けた発言が証明する。

 要するに安倍晋三は現在世界的な問題となっている中東から欧州への大量の難民の流入問題を日本としてどうするのかではなく、あくまでも日本の人口問題のレベルで欧州の難民を考えているというわけである。

 だからこそ、冒頭発言の難民が抱えることになっている「生まれ育った祖国から、大勢の人々が、逃げ出さなければならなかった現実。その原因は、暴力やテロの恐怖、そして、貧困の恐怖」等々に寄せた同情は祖国から逃れて欧州に向かう難民に限った彼らへの感情であって、限っているからこその、そのような感情が日本に受入れる形での救済へとは進まないと意味することになる発言へと繋がったと解釈する以外にない。

 いわば少子高齢化で減少していく労働力人口の補充は女性の活躍や高齢者の効率的な起用、そして出生率の向上によって解決していくから、難民の入る人口的余地は必要ないとした。

 と言うことは、2014年の日本の難民申請者数5000人に対して認定数僅か11人という先進国中最低の数字にしても、難民を人口問題として考えているからであって、政治的・経済的事情、あるいは人権上の問題から祖国を逃れ、外国に渡った者の人として生きていく権利があるとする人権を基準とした認定ではないことになる。

 この人権問題を排除した人口上の合理性の凄さにも、安倍晋三の国家主義が現れている。それが他国民であっても、一人ひとりの人間よりも国家に全てを集約させている。

 安倍晋三は難民を日本に受け入れない代わりに、「難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていく」と、冒頭発言で触れた「暴力やテロの恐怖、そして、貧困の恐怖」の解決を約束した。

 だが、ここにはゴマカシ・詭弁が存在する。

 世界の「暴力やテロの恐怖、そして、貧困の恐怖」の問題は一朝一夕には解決できない気の遠くなるような長期的な課題である。しかも中東やアフリカでの軍事的紛争やテロの横行が日々恐怖や貧困を作り出している。60年前のインドやスリランカでの日本の取り組みを持ち出してどうにかなる問題ではない。

 但し欧州流入の大量難民問題は短期的な要解決課題であって、それを暴力やテロ、貧困等の長い持間のかかる長期的な要解決課題にすり替えて、世界が総ぐるみで取り掛かってもいつ達成できるかも分からない後者の解決の約束で以って前者の解決の代償としようとしている

 いわば個別に扱うべき問題を人口問題を口実に同列に扱う狡猾なまでのゴマカシと詭弁がここにはある。

 勿論、受け入れたで終わる問題ではない。欧州各国と同様、日本も難民を受け入れた場合、様々な問題が持ち上がることになって、日本社会への溶け込みには長期の時間がかかるだろう。

 だが、現時点で難民問題で世界と日本が立たされている出発点は長期か短期か、個別に取り扱うべき課題となっていることに変わりはない。

 安倍晋三は狡猾なゴマカシと詭弁を用いて、短期的な要解決課題から逃げた。

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