安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
2018年7月3日、外相河野太郎が都内で講演した。「朝日デジタル」(2018年7月3日18時29分)
〈頻繁に外国を訪問する中国の王毅外相に「とにかく目標は打倒王毅だ」と伝えていると明かし、自身の訪問国数を王毅氏並みに増やそうとしていることを紹介〉、〈外遊を増やすため、自身の国会出席を軽減することなどを訴えた。〉と言う。
そして、〈王氏の訪問国数が日本の外相の2倍以上であることを引き合いに「この差を縮めて王毅さんの背中がもう少し大きくなるように頑張る、と一方的に宣言した」と言及。その後、王氏が河野氏と会うたびに「何カ国行きましたか」と尋ねると言い、「その差がどんどん開いているのが現状。けんかの相手先を間違えた」とぼやいた。〉・・・・・・
他の記事によると、日本の外相が5年間で訪問したのは約110カ国なのに対して中国の外相は約270カ国に上ることを紹介したという。
河野太郎は2017年12月18日の自民党外交部会で訪問国数を増やすために「来年の話をすると鬼が笑うかもしれないが、来年は是非外相の専用機を1機」をと発言し、その理由として外務省での記者会見で日本の外務大臣と王毅中国外相との訪問国数の比較を持ち出している。
「外務省」2017年12月19日)
河野太郎「2013年1月から5年間で,日本の外務大臣,私(大臣)の前任の岸田さん,それから私(大臣),併せてこの5年間で97か国を訪問をいたしましたが,同じ時期に例えば,中国の王毅(おう・き)外務大臣は延べ262か国を訪問をしております。ほぼ3倍近い訪問国の差がついている。
日本の外務大臣は国会の対応がございますが,中国の外務大臣は特に国会対応がないというスタート時点での大きな差がある中で,この差をどう埋めるかということをやはり真剣に考えていかなければいけない時期に来ているのだろうと思います。
かつてのように日本のODAが抜群に多いというわけではなくて,アフリカを始め様々な所で中国の投資・援助が日本を遥かに上回るという中で,外務大臣の訪問数も延べでこれだけの差がついているという現状を考えると,やはり少しどういうふうにやっていったらいいのか,国会の対応は別として,ロジ(後方支援担当)の効率化というところは真剣に考えていく必要があると思っております。
(中略)
外務大臣あるいはそのスタッフが移動する際,すべて民間の商用機を使わなければいけないというのは,かなり日本の国益を考えるとハンディキャップとして大きいのだろうと思います。専用機を購入するという手もあるでしょうし,あるいはレンタル,リースをする,あるいは日本の企業が持っているビジネスジェットを空いているときにお借りをする,これはもちろん対価を払ってというやり方,様々なやり方があると思いますので,これはやはり真剣に検討しなければいけないと思っております」
質疑に入って――
記者「専用機の件なんですけれども,いつ頃までに導入したいとかですね,今想定している時期はあるのでしょうか」
河野太郎「次の概算要求の中でどういう遣り方がいいのかというのを検討した上で,今外務大臣が移動すると,そのスタッフ,警備その他移動しているわけですから,コストを削減しながら効率的・効果的な移動ができるようにするために,多分いろんなやり方があると思いますし,民間企業の協力を得られれば,そういうやり方もあるのだろうと思いますので,いろんなことを検討していきたいと思っています」(以上)
日本の外相と中国の外相の訪問国数の違いは自身の発言の中で既に答を出しているのだが、単細胞だから気づかない。「かつてのように日本のODAが抜群に多いというわけではなくて,アフリカを始め様々な所で中国の投資・援助が日本を遥かに上回るという中で」と言っている。
「中国の投資・援助が日本を遥かに上回」れば、被援助国に取っては日本より中国の方が遥かに歓迎される国となって、投資・援助の交渉目的のみならず、投資・援助によって完成したインフラ等の竣工式出席目的等で自ずと訪問国が日本より遥かに上回る道理を取る。
当然、訪問国数を増やすには外相専用機を手当することではなく、中国よりも投資・援助を遥かに増やすことが答となる。
この外相専用機問題を取り上げた2017年12月21日の当ブログ、《河野太郎に外相専用機は不要 何様だと思っているのか、日本の外相は首相のメッセンジャボーイに過ぎない - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。
〈外交能力、あるいは外交成果の多くは訪問国数や会談数で決まるわけではない。相手国の国益に対応可能な国の資金力(それが例え借金したカネであっても、借金できる余裕が資金という形に変えていくことができる)を裏づけとして生み出す国の力=国の影響力にかかってくる。
当然、「日本の外務大臣は国会対応があるが、中国の外務大臣は国会対応がない」といった問題ではなく、中国と日本という国の対外影響力を考えた場合、河野太郎が日本の外相と中国の外相を比較すること自体が間違っている。〉――
日本と中国の国の資金力(=国の力=国の影響力)の違いを見てみる。「中国の対外援助、14年間で41兆円「慈善ではなく利益を基準」=米調査機関」(マネーボイス/2017年10月18日)
〈ウィリアム・メアリー大学の対外援助調査機関「エイドデータ調査研究室(AidDataResearchLab、以下エイドデータ)」によると、2000年~2014年の15年間で、中国は対外援助として3960億米ドル(約41兆円、期間中の平均為替レート参照)を支出した。これは、世界最大の援助国・米国の3990億米ドルに届きそうな額だ。〉
中国の1年平均の対外援助額は264億ドル。日本の2016年のODA実績は168億ドル。約100億ドル近くの差が出ている。日本円に直すと1兆円を超す。日本の国家予算(一般会計)の約100分の1以上に相当する巨額な差となっている。
この差が日本と中国の国の資金力の差、国の力=国の影響力の差となって現れていて、結果的に両国外相の訪問国数の差の違いとなっているはずである。
しかも中国は対外援助という点で日本よりも後発国に位置している。中国の大国化志望からすると、後発国のハンディを覆すためには対外援助額の増額のみならず、関係を強めて影響力を浸透させる目的から訪問回数を増やして、結果的に訪問国数の増加に繋がっている側面もあるはずである。
ところが、河野太郎は、バカげた身の程知らずの話だが、国の資金力と、その裏付けが形成することになる国の力=国の影響力を考えもせずに自身の訪問国数を王毅中国外相のそれに近づけることだけを考えている。その目標達成のために外相専用機の購入と国会出席の軽減を訴えている。
いわば国の資金力にモノを言わせた各種援助が伴わない外国訪問は、その回数を増やしたとしても、国の力=国の影響力となって跳ね返ってこない。
河野太郎が外国を訪問したとしても、安倍晋三の外国訪問と同じく、北朝鮮問題に関しては核実験とミサイル実験を行った北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議に基づいた決議履行の確認か、北朝鮮の非核化への連携の確認、あるいはトランプが自国産業への保護主義に走ると、自由貿易体制維持の確認を行うことことぐらいで、形式的範囲を出ない外国訪問が殆どとなっている。
勿論、ときには外国のある政策に対していくらの援助をするといったことを伝えるために訪問することもあるが、中国がそれ以上の援助をするイタチごっこが続いている。
中国の外交に対抗するに日中の国の資金力の違いに依拠しない、外国訪問回数にも関係しない、国の力=国の影響力の構築に向けた
新たな外交の創造に努めたとしても、やはりカネの力には敵わないだろう。
となると、中国以上に経済を発展させて、国の資金力を貯め込むしかないが、先進国最悪の借金大国、少子高齢化の人口減少国家では、それも覚束ない。